白い司令塔(仮)   作:0ひじり0

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ひじりです。

ここ最近は調子がよくて早い感覚での投稿が出来て嬉しい限りです!

では、どうぞ。


第拾伍話

私達が寮に戻ると皆は寝ていて私の布団が駆逐艦の皆に占領されており、私は長門の布団で眠った。

長門は大きくて包み込んでくれてよく眠れた。

そして、翌日から本格的に工事が始まった。

 

「中々壮観な景色だな。」

 

「そうだな。」

 

今日から一週間は長門が秘書艦になるため視察目的で安全な所から工事現場を見ている。

 

「そう言えば出撃などはどうするんだ?」

 

「ああ、それは本部が指定している毎日の任務を遂行するだけでいいから近海の哨戒のみでいい。」

 

「了解した。」

 

そして、長門は大淀に出撃などを指示しに私の元を離れていく。

私はその足で仮設の執務室に足を向けた。

 

――――――――――

 

執務をしていると扉がノックされる。

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼する。」

 

入ってきたのは長門だった。

 

「私はどこで仕事をすればいい?」

 

「そうだな…少しだけ待ってくれるか?私のが終われば席を変わろう。」

 

長門は頷いてその場に立つ。

 

私が最後の書類に判を押して仕事が終わる。

 

「終わったから変わる。」

 

「すまない。」

 

私が退いた後に長門が座って仕事をし始める。

その姿を隣でそれを見つめる。

 

長門は見つめられている事を嬉しく思いながら執務をつつけており、そんな中で提督を除いた皆で話し合った事を思い出していた。

 

――――――――――

三日前

 

「皆さんに集まってもらったのはずばり司令官さんの事なのです。」

 

そう言って声を上げたのは電だった。

今いる場所は寮の空き部屋だ。

広い部屋だが10人が入ると少し狭くて皆で円を描くように座ってる。

座ってる順番は時計回りに電、鳳翔、赤城、扶桑、私、愛宕、間宮、阿武隈、天龍、夕立の順番だ。

 

「提督の…事ですか?」

 

そう言って首を傾げるのは私の隣に座っている扶桑だ。

 

「ハイなのです。」

 

「提督がどうにかしたっぽい?」

 

夕立も犬のように首を傾げて電に問いかける。かわいい。

 

「皆さんには司令官さんの正体を見てどうおもったのです?」

 

「最初はやはり男性と思ってましたが女の子で過去の話を聞いて…私は守ってあげたくなりました。」

 

赤城は僅かに頬を朱にして答えている。

私には分かる。

赤城は既に提督に落とされているのだろう。

 

「そうねー。提督ちゃんは頑張ってきたみたいだし、幸せになって欲しいわー♪」

 

愛宕が頬に手を当ててのほほんとした声でそんな声をあげる。

 

「それには私も同感だな。」

 

「ん?長門も提督を認めたのか?」

 

私が同意すると天龍が驚いた様で聞いてくる。

 

「あれほど私達の事を思って行動しているのだ。認めない訳にはいかんだろう?」

 

実際、提督を男と思っていた時もやはり嫌悪感はあったが提督としては認めていた。

 

「他の皆さんも同じ気持ちなのです?」

 

電が再度問うと皆が頷く。

 

「提督のお陰で食事の時に皆の笑顔、笑い声で満ちている食事を提供出来るようになりましたし…私でも力になれるなら力になりたいです。」

 

そう答える間宮の目には強い意思と信頼が見てとれる。

 

「そうだな。チビども笑うようになったし感謝はしてるぜ。」

 

天龍も頷く。

 

「私もこの前の出撃したときに中破したら提督は直ぐにバケツを使ってくれて…その後に私に頭を下げて謝ってくれました。」

 

相当驚いたのか阿武隈は苦笑いを浮かべていた。

 

「司令官さんはそういう人ですから。」

 

「皆さんがそう思ってくれて嬉しいのです♪」

 

その様子を簡単に想像出来るのかクスクスと笑う鳳翔と電。

 

「夕立も提督はいい人と思うっぽい♪」

 

「ふふっ、夕立ちゃんありがとうございます♪」

 

夕立は提督が来てから早い段階でなついてはいたからもちろん同意していた。

 

「そこで本題なのです。」

 

電がそう切り出す。

 

「提督さんはちょっと抜けてる所があるのです。だから皆さんには班長になってもらってこの寮の工事が終わる間は提督の側で支えてあげて欲しいのです。」

 

「支えるってどうすればいいっぽい?」

 

「其々の寮で泊まってる時は眠るときや執務のときに側でいて欲しいのです。もちろん秘書艦もして欲しいのです。」

 

電の言葉に電と鳳翔を除いた皆が首を傾げる。

今まで心を許している二人は知っているかも知れないがまだ提督の一面しか知らない私達はわからなかった。

 

「因みに危険なのはお風呂と寝るときなのです。」

 

「それは何故ですか?」

 

電が困った様に笑ってそれに赤城が問う。

 

「司令官さんはカラスの行水なのです。」

 

「はぁ…。」

 

扶桑が生返事を返していた。

私も少し呆れてしまう。

 

「それに司令官さんは寝るときは何かに抱き付かないと中々寝付けないのです。」

 

「そ、そうなんですか?」

 

今度は間宮が困惑している。

 

しかし、私の頭の中は愛らしい寝間着を着た(イメージです)提督が私にしがみついて寝ている姿を想像してその破壊力に思わず鼻血が出そうになってしまい顔を押さえる。

 

「くっ//」

 

「うぐっ//」

 

指の間から皆を見ると私の他に赤城と天龍が私と同じように顔を押さえる。

二人は同士だった。

 

「…ふふっ♪」

 

そして、ほぼ正面に座る鳳翔の目が怪しく光るのが見えてしまった。

 

「そこで私と電ちゃんからのお願いがあります。」

 

「なのです。」

 

鳳翔がニコニコと電は少しむくれながら言葉を紡ぐ。

 

「班長の皆さんは司令官さんと一緒に寝てあげて欲しいんです。」

 

「お風呂も可能なら一緒に入ってあげて欲しいのです。」

 

なん…だと…?

 

「寝てるときに他の人に抱き付いてしまうと大変ですし、お願いできませんか?」

 

ニコニコと微笑む鳳翔はわざとらしく困った表情をしてお願いをしてくる。

 

「私は…大丈夫ですよ?」

 

「夕立も大丈夫っぽい♪」

 

「大丈夫よ~♪」

 

「少し抵抗はありますが…私も頑張ります。」

 

「私でいいなら構いませんよ?」

 

扶桑、夕立、愛宕、阿武隈、間宮がそれに応じる。

 

「三人は…大丈夫なのです?」

 

今だむくれている電は私と赤城、天龍に問いかける。

 

「俺は…大丈夫だぜ。」

 

「私も大丈夫です。」

 

「私も断る理由はないな。」

 

「なら、決まりですね♪」

 

「……なのです。」

 

鳳翔がポンっと手を叩いて喜ぶ。

電はとうとう限界がきたのか鳳翔の腕にしがみついてしまった。

 

「それでは皆さん。よろしくお願い致します。この会議は提督には内密にしてくださいね。」

 

それに私達は頷いた。

 

――――――――――

 

「提督。終わったぞ。」

 

「わかった。では、私の書類とその書類の提出をお願い出来るか?」

 

「ああ、任せろ。」

 

長門は受け取った書類を片手に執務室から出ていく。

私は長門が座っていた椅子に腰掛けて天井を見上げる。

 

「今日は暖かいなぁ。」

 

私の後ろから差し込む夕暮れ光はほのかに暖かくて眠気を誘う。

 

「ふわぁ…。」

 

欠伸をして私の意識は眠りに落ちてしまった。

 

――――――――――

 

困った。

私が書類を提出してから執務室に戻ると提督が椅子に持たれて寝ていた。

提督の寝顔は愛らしくて穢れを知らない幼子の様で私の中に芽生えた母性本能が擽られる。

本来ならばこう言った行動は注意をしなければいけないがこの無垢な天使の寝顔を邪魔するなど私には出来る筈もなく。

私は食い入るように見つめていた。

 

「ん…むにゃ…。」

 

提督が椅子の上で丸まる。

体の小さな提督は執務室にある大きな椅子の上は簡易的なベッドと変わらないらしい。

しかし、私はそこで気付いた。

 

「んん~…むぅ…うにゅ…。」

 

提督の口の端から涎が伝っているではないか。

それを見付けてしまった私はもう止まれなかった。

 

――――――――――

 

「ぅん…ん?」

 

私はゆっくりと瞼を開ける。

そこにはここ部屋に置いてあったパイプ椅子に座っている長門が腕を組んで凄くかっこいい微笑みを浮かべていた。

……鼻血を流しながら。

 

「な…なが…と…?」

 

「ん?ああ、おはよう。提督。」

 

やっぱり凄く爽やかでかっこいい微笑みをしている………鼻血を流しながらだけど。

 

「う、うん。」

 

「きっと、疲れが溜まっていたのだろうな。大丈夫か?」

 

いやいやいや。

長門こそ大丈夫なの!?

 

「な、長門。」

 

「む?どうした?」

 

少し聞くのが怖いけど私は覚悟を決めて問いかける。

 

「は…鼻血…出てるよ?」

 

「ああ、気にするな。止まらないんだ。」

 

いやいやいやいや。

そんな笑顔で答えられても。

私は立ち上がって机の上のティッシュを持って近付く。

 

「止まらないじゃないよ。大丈夫?」

 

「む、すまない。迷惑をかけてるな。」

 

そのまま数枚取り出して長門の鼻を押さえる。

長門は申し訳なさそうだがどこか幸せそうだ。

……なんで?

 

「長門も疲れてるのかな?」

 

「大丈夫だ。問題ない。」

 

長門の鼻を押さえつつ外を見ると消灯時間までは少し時間があるがもう暗くなっている。

 

「今日はもう寝よ?ね?」

 

「だが、風呂がまだだが?」

 

「また、明日の朝に入ったらいいから。」

 

「そうか。ならばそうしよう。」

 

納得してくれた長門の手を引いて寮まで戻って長門を寝かせる。

 

「また、あとで来るから寝ててね?」

 

「わかった。」

 

他の艦娘達も居るため長門にだけ聞こえるように言うと幸せそうな長門(鼻ティッシュ装着済み)が答えて私はお風呂に入りに行った。

 

――――――――――

 

「ふぅ…いい湯だった。」

 

お風呂から上がり、消灯時間も過ぎてるために音を立てないようにゆっくりと寮に入ると長門を含めて皆寝ていた。

長門の布団まで行くと長門は横向きで寝ていた。

そのまま長門の布団に入って長門の顔を見つめる。

 

「今日はどうしたんだろ?」

 

今日の長門は少しおかしかった。

どこか体調が悪いのか…心配だな。

 

「あ、そうだ。」

 

私は小さい時に体調が悪かったり、嫌なことがあった時にママによくしてもらってた事を思い出した。

 

「ん、しょ…っと。」

 

呼吸を止めてしまわないように気を付けながら長門の頭を抱き締めて片手は背中に回してゆっくりとしたリズムで優しく叩く。

そしてママがよく歌ってくれた子守唄を歌う。

 

「Schlafe, schlafe, holder süßer Knabe,

Leise wiegt dich deiner Mutter Hand,

Sanfte Ruhe, milde Labe,

Bringt dir schwebend dieses Wiegenband.

 

Schlafe, schlafe in dem süßen Grabe,

Noch beschützt dich deiner Mutter Arm,

Alle Wünsche, alle Habe

Faßt sie liebend, alle liebewarm.

 

Schlafe, schlafe in der Flaumen Schoße,

Noch umtönt dich lauter Liebeston,

Eine Lilie, eine Rose

Nach dem Schlafe werd' sie dir zum Lohn.

 

Schlafe, schlafe in der Mutter Schoße,

Noch umtönt dich holder Liebeston,

Eine Lilie, eine Rose

Nach dem Schlafe wird sie dir zum Lohn.」

 

【※和訳※】

『眠れ眠れ 母の胸に

眠れ眠れ 母の手に

こころよき 歌声に

結ばずや たのし夢

 

眠れ眠れ 母の胸に

眠れ眠れ 母の手に

暖かき そのそでに

包まれて 眠れよや

 

眠れ眠れ かわい若子

一夜(ひとよ)寝(い)ねて さめてみよ

くれないの ばらの花

開くぞや まくらべに』

 

後になって知ったがこれはシューベルトの子守唄だった。

ママの優しい声で聞くこの歌が大好きでこの歌を聞きたいが為に眠れないとママに言ったのを覚えている。

その度にママは私を抱き締めてくれて優しく背中を叩いてくれた。

 

そして最後まで歌いきってからも私が寝てしまうまで長門の背中を優しく叩き続けた。

 

そんな風に毎日を送っていたら一週間はあっという間にすぎてしまってたいた。

 

―続く。




はい。
今回も読んでくださりありがとうございました。

さてさて、今回でながもんのターンは一旦終了ですね。
次回から誰になるからわかりません!
てか、まだ決めてません!!

感想などお待ちしております!!

では、次回お会いしましょう♪

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