大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第7指導 元マフィアの扱き方

「出ろ。東堂」

雄山が車を適当な場所に止まらせ、東堂と共に外に出るとトラックはそれに対峙するように駐車した。

「やとアエタな。ユウザン」

そう言ってトラックから出てきたのは見た目普通かややヒョロめの日本人…に擬態している海外マフィアだった。片言であることと日本人に近い見た目をしていることから中国か韓国系のマフィアであることがうかがえる。

「挨拶はいい。それで何故俺たちを狙った?」

「私達は金竜の残党。ボスの復讐しにキタ」

「復讐ねぇ…鴨川慶次と手を組んだのもそのためか?」

雄山はカマをかけ、マフィア達に尋ねると全員が首を傾げた。

「カモカワケイジ?誰だソイツは?」

本当にマフィア達は鴨川を知らないようで逆に尋ねた。

「今世間で話題になっている鴨川弁当の取締役だ。そして俺はそいつを追いかけている」

「そうか。では追いかけるのもここまでダ。死ねユウザン!」

雄山にマフィア達は銃を向け、なんの躊躇いもなくその引き金を引いた。

 

「ユーザン先生!」

東堂は隠していた翼を広げ、避けたが咄嗟のことだった為に雄山を持ち上げるという行動が出来ずにいた。

「おいおい、痛ってーな。この野郎。これで死んだらどうしてくれる?」

だがそこは雄山。まさしく名前の通り雄々しい山のように傷一つ付いていなかった。そして雄山が人間が持つ独特の魔力である霊力を込めた破魔札を投げ、マフィアの一人に当てるとマフィアが変貌し、化け物のような外見になり天へと帰って行った。

「やっぱり妖怪だったか…全く、現役から離れると力の調節が難しくなるもんだ」

「よくも金を!」

「復讐するんなら一人二人くらいは殺される覚悟くらいしておけ」

「死ね!」

「元からそのつもりだろうが…東堂! 俺についてきた以上その力を振るうか、それとも学園都市に帰るか…どっちか好きな方を選べ!」

 

陰陽師としては吸血鬼の力が欲しい…しかしその一方で雄山自身が東堂にそんな真似をさせる訳にはいかない…その両方の思いと教師としての役割が東堂に強制させず選択肢を与え、選ばせた。

 

「そんなことはもう決まっています!」

東堂は返事を返すとマフィア達に向かって急降下し、マフィアのうち一人をミンチにした。それが東堂の答えだった。

「東堂…それがお前の答えか。なら腹ぁくくって行け!」

「はいっ!」

雄山の言葉と共に、東堂はマフィア達に一歩も引けを取らず戦い始めた。

 

「ナマスにしてやル…」

マフィア達が本性を露わにして元の姿である妖怪そのものの姿になると爪を研ぎ、その爪でコンクリートで出来た地面をひっ掻くと地面が爪を追いかけるように切れた。

「妖力が増した…?」

妖力とは妖怪が持つ魔力の種類のことであり、霊力とは真逆の存在で妖怪達の力の源であるが源が源なだけに霊力に弱い。しかし肉体に与える力や魔法の力などの強化系に優れた魔力である。マフィア達はそれを使って爪を刃物以上の切れ味にした。

しかし当然ながら姿形を変えた程度で変わるのは妖力の量ではなく妖力の循環…言ってみれば効率だ。効率が良くなればそれだけ力が増すということだが雄山の目の前にいる妖怪は不自然なまでに妖力が増した。

「どうダ。見たか!これが私達の力ダ!」

「で? それがどうした? 当たらなければ意味をなさねえぞ?」

「パワーだけだと思うナ!」

マフィアは雄山に一瞬で迫り、腕を振るうと、下手な日本刀よりも切れ味のある爪が雄山を襲った。

「…っ!」

雄山はそれを後ろに避けることで避けたが反応が遅れ、雄山の服の一部が破れ体に傷がついた。

「やるじゃねえか…俺の体に傷をつけるなんてよ。だけどな…それだけで勝てるのか? お前如きが…」

「ユウザン、その如きに殺られルンダ」

そしてまた一瞬で雄山に詰め寄り…吹っ飛んだ。

「ガハッ!?」

「バカが…二度も同じ手を食うかってんだ」

トラックに叩きつけられた妖怪(マフィア)を破魔札で止めを刺し、浄化させながらそう告げるとマフィア達は激怒した。

 

「池までよくやてくれたナ!」

「むしろ同じ手を何度も仕掛けようとしたそいつに非があるんじゃないか?」

「ふざけるナ! 私達の思いが貴様にはわかるまい! 私達は行くあてがないところをボスに救われ、同僚…いや仲間は皆ボスを慕ていた。ただマフィアである…それだけの理由で私達のボスを、故郷を、お前に滅ぼされた! それがどんな気持ちかわかるカ!?」

そのマフィア達はボスを慕っており、そのボスと共に歩んだ証である組織を雄山にマフィア狩り名目の元、めちゃくちゃにされ、恨んでいた。

「わからねえな。でもよマフィアってだけで恐怖に震える奴だっている。マフィアの存在自体が本来あっちゃいけねえ」

雄山のいうこともあながち間違いではない。マフィアと聞くだけで恐怖に震える人間は大勢いる。それらの恐怖をなくすのが当時の雄山にとって使命だったといえるだろう。

「ならばお前達を切り刻んで東京湾の魚の餌にしてやる!」

「言葉じゃなくて行動で示せよ。さっきから同じ言葉聞いて飽きたぜ」

そしてマフィア達はその雄山の言葉にキレた。

 

「グガァァァァッ!」

妖怪(マフィア)達は妖力…いや力そのものと引き換えに理性を失い、復讐の相手である雄山を放ったらかしにして東堂を標的にした。

「東堂!」

雄山が声をかけるが時すでに遅く、東堂に凶悪な爪が襲いかかった。

「ひっ!?」

妖怪達は理性を失ったことによって大振りに攻撃してきたのが幸いし、避けることが出来たがその威力は凄まじく東堂が避けた場所は全て爪で切られており、その被害は東堂が暴走した時よりも大きい。いかに妖怪達がパワーアップしたかわかるだろう。

「らあっ!」

雄山は背中に破魔札を投げ当てて妖怪達を殲滅しようとするも、二匹はジャンプや横に飛んで避けた。

「くそが…!」

現役の頃であれば失敗することなく破魔札を当てていたが一度引退した身である以上、衰えてしまい外した。それだけならば問題はなかったが現役の頃の癖か余分な破魔札は持たずにいた。つまり雄山の手元には破魔札がない。破魔札があるのは車の中でそこまで取りに行くのは不可能ではないが非戦闘民だった東堂に妖怪二匹を相手にさせるということだ。そんなことをすれば東堂は間違いなく死ぬだろう…そのことに雄山は舌打ちをしざるを得なかった。

「東堂伏せろ!」

東堂は反射的に頭を抱え伏せると、何がトラックにぶつかる轟音が鳴り…しばらくすると妖怪(マフィア)達がボロボロではあるものの人間の姿に戻ってトラックの前で気絶していた。

 

「ユーザン先生、一体何が…?」

雄山の破魔札が切れたのは知っていた。だが雄山が東堂が伏せている間に車に戻って破魔札を持ってきてマフィア達に投げた…と思うには無理があった。そんなことをしている間に東堂は間違いなく死んでいただろうし、何故伏せさせるように指示したのか理由がわからない。そして何よりもマフィア達が人間の姿に戻っている。破魔札を使っていない何よりの証拠だ。

「おう、東堂無事か?」

東堂の質問には答えず雄山は安否を確認し、気絶したマフィアの二人の頭を殴り揺らした。

「は、はい」

「それじゃ少し待ってろ…色々と用事があるからな」

雄山はマフィアの一人をビンタで起こし、マフィアが目を開けると同時にマフィアが持っていた銃をマフィアに向けた。

「さてお前に幾つか質問をする。答えろ。拒否権はねえ」

「わ、ワカッタ!」

即座に首を縦に振り、マフィアは屈した。流石に妖怪といえども頭を撃たれたら死ぬ…それは東堂もマフィアも同じだ。

 

そして雄山の口から予想もつかない質問が出てきた。

「お前達はいつからその体になった?」


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