大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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かなり展開早めです


第38指導 第五世代の能力

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「マフィア達は俺に恨みを果たそうにも果たせない。それは何故か。単純に実力差があり過ぎて手を出せなかったからだ。俺を殺せないという現実と無念を晴らそうという理想が矛盾し苦しみ続けていたところに日本セル研究所が勧誘した。力を貸す代わりに雄山を自分たちの手で殺せとな」

「……」

「その力ってのは第一世代の失敗作を人間の身体に組み込ませることだった。しかし人間の身体と妖怪の身体は血液型云々以前にそもそも遺伝子が全く異なる。つまり拒絶反応を引き起こす条件に満たされている。それを満たさないようにするには身体に組み込ませるのではなくそのパーツを寄生生物にさせマフィア達の身体に馴染ませる。マフィア達が寄生されたことによって別の生き物として生まれ変わり魔力が増大した。違うか?」

「大まかに言えばそんなところだろう」

「さて、そこまで説明した上である男が俺達を導いてくれたことを話す。そいつは日本セル研究所の裏切り者だ」

「裏切り者?」

「東堂、お前がよく知っている奴だ」

「えっ、誰なんですか!?」

「それを今から話すから黙って聞け」

「はい」

 

「日本セル研究所は本来、文字どおり日本でセル、つまり細胞を研究する組織だった。だが研究を進めるには金、つまり自分達を支えてくれるスポンサーが必要だ。しかし大和財閥は日本セル研究所から頼まれても専務達の妨害によりスポンサーになることはなかった。金が尽きた日本セル研究所は同時に研究していた薬物を作りそれを足がつかないように売りさばいた。それが鴨川弁当の前型、鴨川宅配業だ」

「ふむ、確かにその通りだな。そこまでは私の指示した通りだ」

「しかし鴨川宅配業は金に余裕が出来たことと滝河の調略を確信して、鴨川弁当へと変更した。妖魔連合会が学園都市を乗っ取り、勇吾が妖魔連合会を消して勇姿として大和一族を乗っ取る……その予定だった。だが一つ誤算があった。鴨川だ」

「え? どういうことですか?」

「鴨川は俺に存在感を示すだけでなく日本セル研究所が関わっていることを調べればわかるように仕掛けていた。鴨川ほど頭の切れる男がオーバーを利用して自滅させる為とはいえリスクが大きく、とてもではないが扱い切れるもんじゃねえ。まるで自分が犯人だと言わんばかりにな。そして俺は鴨川の安らかに眠る顔を見て違和感を感じ、確信した。鴨川は俺すらも利用して日本セル研究所を潰したかったんじゃないのかってな」

「その理由は?」

「記憶があったんだろう。生まれた当初からな」

「……成る程、確かに各世代の一部は記憶があったな。だがそれだけでは理由にならんな」

「自分がそんなところで生まれ、理解していたからだ。こんな研究をしている施設は潰すべきだと」

それを聞いた角田は鼻で笑い、口を開いた。

 

「こんな研究とは随分な言い様だ……とでも言えばいいのか? 生憎だが私はこの研究が非倫理的なことは自覚している。それに使う目的も私怨によるものでろくなものではないことも自覚している」

「だったらなんで……!?」

「何故だと? 人間の未知なる進化を広めるためだ。日本セル研究所は元々そういう目的で作られた。だが大和財閥は寿命が伸びたり、身体能力が上がったりなどのメリットをどれだけ説明してもちっとも理解してくれず、スポンサーとなるのを拒んだ。いや第一世代のような化け物じみた体になることを恐れたのだろう。……愚かなことだ。いずれ人間は進化していきSF映画に出てくる宇宙人のような体になる。吸血鬼、お前もそんな体になったら嫌だろう?」

「えっ!? まぁ……はい。そうですね」

「私が大和財閥に拘るのはその研究成果を広める為だ。例え失敗に終わっても私の研究は無駄にはならん。私の研究成果が聖なる者、悪し者、どちらの手に渡ってもこの技術が広まり地球の未来を救う薬となるのだ」

「果たして広められるのか? 大和一族はそういう情報を封じるのは得意な方だぞ?」

「情報を封じるにはその情報を深く知ってからでなければ出来ないことくらい私にも理解している。そしてその過程で研究成果は本当に正確であるかを調べなければならない。否応なしに私の研究成果は広まっていくという訳だ」

「何故、俺達を殺そうとした? どのみち広まるんだったら俺達を殺すメリットはないはすだ」

「大和一族を殺すのは単純な話、後継者候補のお前達が居ては不都合であり、消せばよりスムーズに研究成果を広めさせることが出来る。ただそれだけのことだ」

角田がそう冷たく言い放つと雄山は納得し、頷いた。

「なるほど、それじゃ再開といこうか」

雄山が左腕を振るうと、真空の刃が第五世代達や元マフィア達を切り刻んだ。

「血祭りの再開をよ」

雄山はかつてないほど狂気に満ちた笑みを浮かべ、東堂がそれを見てドン引きし、雄山から距離を置いた。

 

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「流石だな大和雄山。だが無駄だ。第五世代は超能力者故に第四世代ほどの頑丈さは得ることはなかった。しかしその欠点を補う為に回復力を高め、多量出血で死ぬことはない。生半可な切り方では命取りだぞ?」

角田の言葉とともに第五世代達がゾンビのように起き上がると傷口がすぐに塞がり出血が止まる。

「厄介な奴らだが空掌斬で傷つくあたり勇姿どころか、勇吾の下位互換じゃねえかよっ!」

雄山が勇吾体型の第五世代を殴る。ダメージこそないが雄山の攻撃に押され後退してしまう。

 

「な、めるな!」

第五世代達は焦り、勇吾体型以外の二人が東堂を襲う。

「それはこっちのセリフ!」

東堂は二人の頭を殴ることによって揺らし脳震盪を起こす。二人が否応なしに倒れ、地面に接吻した。

「だから無駄だ。第五世代達はお前達を倒すまで何度でも立ち上がり、復活する」

すぐに勇吾体型の第五世代は雄山を弾き、他の二人も地面から立ち上がり雄山達を襲う。

 

「角田、成功するはずの実験で失敗しても何度も実験すれば成功になる。それは科学者たるお前が一番理解していることだろ?」

「果たしてそうかな? 第三世代以降はの学習能力の高さと戦闘センスが良いように組み合わさり、戦えば戦うほど強くなる」

勇吾体型が雄山に突っ込むと雄山がカウンターを浴びせる。

「チッ、面倒な奴らだな」

しかし先ほどとは違いまるで効いておらず角田の「戦えば戦うほど強くなる」という発言が真実であることが判明し、雄山は舌打ちした。

 

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「そして、20-0425の能力が発動する」

「誰だよそれは?」

「そこにいる女性型の第五世代のことだ。そいつはその中でも超能力に特化している」

「超能力? 今まで使わなかったのは何故だ?」

「20-0425に限らず第五世代の能力はそれぞれ違うが大和勇姿の能力『術・能力無効化』の能力よりも優れている場合がある。20-0425はその優れた例だ」

「そんなものがあるのか?」

「私とてそんな能力があるものかと何度も繰り返し、実験した。だがその能力『確定事項』は『術・能力無効化』の上位互換だということに変わりはない」

「『確定事項』?」

「ある条件を満たすと定めた事柄が確定する能力だ」

「……具体的によくわかりません」

「例えば、吸血鬼。お前が20-0425に向けて魔法を使ったとしよう。20-0425が『吸血鬼が魔法を使う時』という条件と『吸血鬼の魔法は失敗する』という結果を定める。すると吸血鬼の魔法は失敗する。つまり条件さえ満たせば何でもできるという能力だ」

「う、ウソォっ!?」

「理論上は『息をする』と言う条件だけで『この地球を滅ぼす』という結果を出すことが出来る。だが『確定事項』を使用した後は必ず反動が来る。特に自分の力量の割に条件が緩い、あるいは結果が難しいほど反動が大きくなる。これは『確定事項』に限らず超能力者にも言えることだ」

「なるほど、それで反動が大き過ぎて今まで使えなかったのか」

「その通りだ。だが吸血鬼にダウンを貰ったおかげで20-0425はパワーアップし、その能力が使えるようになった訳だ」

「なるほどな」

「そして説明が終わった。……これによって20-0425の定めた『確定事項』の条件『この部屋にいる自分を含めた第五世代達がダウンさせられた』『自分がパワーアップした』『自分以外の者がこの能力を説明する』の三つの条件が満たされたことにより、結果『100体の第四世代がこの部屋の空いているスペースに瞬間移動する』が発動する」

雄山はわらわらと出てくる勇姿のクローン達を見て目を丸くし、絶望してしまう。

 

その瞬間、東堂の目の前にいた20-0425が倒れてしまい更に東堂が狼狽えた。

 

「おっと、どうやらまだこれでも条件が緩すぎたようだ。能力レベル4に昇格してもこれは無理か」

それを見ても角田は動じず、冷静に屍となった20-0425を見つめた。

「レベルだと?」

「能力者によって能力の威力や能力の使った反動の大小は異なる。そこで私は能力にレベルと言う目安をつけた。能力の威力が大きく、反動が小さいほどレベルの数値が高くなる……つまり、能力が優れているほどレベルも高くなるということだ。参考までに大和勇姿の能力『術・能力無効化』はレベル3だから相当優秀なレベルと言えるだろうな」

角田が第四世代達に合図を送ると第四世代達が雄山達を襲撃し、雄山達を追い詰めた。

「ここまでか……」

雄山の呟く声に無念の気持ちが込められ、東堂は絶望に屈して目を瞑った。


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