大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第31指導 扱きとその効果

深夜まで雄山の祖母である春は二人を扱いていた。

「よし、今日はそこまで!」

「ありがとうございました!」

二人はこれ以上ないまでに疲れ果てており、お辞儀をするとすぐに座り込んでしまった。

「いくら初日とはいえ少し体力がなさ過ぎじゃ。もう少し鍛えぬとついて行けぬぞ」

「無茶、言わんで下さい。私はまだ吸血鬼ですからマシな方ですが長門さんを見てくださいよ。もう爆睡しているんですよ?」

東堂の言う通り、長門は器用にも座ったまま爆睡するということをしていた。

「何を甘ったれたことを言っとるか!」

春の拳が床を貫き、屋敷を振動させるが長門はそれすら気づかないほど疲れ果ててているのかまだ眠ったままだ。

「儂が指導していた時の雄山や勇姿は寝ながら戦っていたんじゃ! 少しはそれを見習わんかドアホ!」

「はい…」

東堂は眠気のあまり生返事で返すがそれも限界に近づいてきた。

「もう限界です…お休みなさい」

そして東堂も眠りについた。

 

▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲

 

「はっ!?」

東堂が目を覚ますと隣には爆睡している長門。上には見た事のある天井。下には敷布団。あることを除けば見た事ある光景だった。

「ここってさっきの場所?」

そう、ここは雄山が長門が超能力者であること告げた部屋である。しかしそこには矢田が寝ていたが彼はどこにもいなかった。

「ユーザン先生が移動したのかな?」

東堂が起き上がろうとして身体を動かそうとすると激しい痛みが襲いかかった。

「〜っ!!」

それは筋肉痛。筋肉痛は使った筋肉を修復する為に起こる。故に時間をおいてその病状が現れるパターンが多く、東堂も例外ではない。しかし東堂は吸血鬼故に身体が丈夫であり悲鳴をあげるほどの筋肉痛になったことなくそれほどまでに春の扱きはキツイものであった。

「(首から下が動けない…)」

もし動こうものなら激痛に襲われてしまう。下手に動いたところで何も得られるものはない。東堂はそう結論付けると再び目を閉じ、静かに眠りにつこうとする。しかしやたらと騒めく音が聞こえ眠りにつけなかった。

「(もう眠れないじゃない!)」

そして目を開け天井を見ると蛙のような妖怪と目が合った。

「(へっ!?)」

東堂がまず感じたのは恐怖。それから驚愕だった。この二つの感情により間抜けじみた声しか出ず唖然としてしまう。

「あ〜あ。見つかっちゃった」

その妖怪は泥のように液体状になり天井から東堂の真横に落ちる。その姿は普通の人間であればトラウマものになり得るだろう。

「むふふ…こんな可愛い子ちゃんを攫ってこいなんて御主人様も良い趣味しているな〜」

元の蛙の形に戻った妖怪は東堂の布団に手をかけ…銃声とともに倒れた。

 

「やあ、無事かい? 美帆ちゃん」

その声は中性的な声であり、東堂が一度聞いたことのある声でもあった。

「ゆ、裕二さん…」

「どうしたの?」

「この妖怪が乗っかっていると筋肉痛のせいでめちゃくちゃ痛いです。どかして貰えませんか?」

「はいはい。仕方ないね」

裕二がその妖怪をどかすと東堂は自由の身となるが筋肉痛のせいで動けない。

「ありがとうございます」

「礼には及ばないよ。それよりも一刻も早く避難するよ」

「避難する理由は避難した、後で聞きますが、まず筋肉痛を治して貰えませんか? 身体全体の筋肉痛が酷くて動けませんから…」

「はいな」

裕二がすぐに治療すると東堂の筋肉痛が治り、布団から起き上がった。

「それでどこに避難するんですか?」

「ついて来ればわかる」

裕二の言葉に東堂は雄山を重ねてしまった。

「わかりました。でも長門さんの背負って行きますので遅くなりますよ?」

東堂が長門を背負い、裕二が頷いた。

「不本意だけどそういう理由なら仕方ないね」

そして裕二が扉を開けるとそこで待ち伏せていたのは数十にも及ぶ数の妖怪達であった。

 

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「ヒャッハー!」

などと奇妙な掛け声とともに襲いかかる妖怪達。それを目の前にしても裕二は全くと言って良いほど動じてなかった。

「美帆ちゃん。そっちに投げるから後始末お願い出来る?」

「え? あ、はい!」

裕二の言うことに最初こそ意味がわからなかったが東堂はすぐに理解し、長門をそっと床に置く。すると投げられて姿勢を崩した妖怪が東堂の真上までやって来る。

「はっ!」

東堂はそれを右手の手刀で貫き、確実に仕留める。

「よし、今度は二匹行っちゃうよ!」

今度は二匹の妖怪が宙を舞い、東堂は左手にも手刀を作り上げ、妖怪達を始末する。その始末が終わると裕二が妖怪達を投げ、東堂が始末する。それらを何回か繰り返すとみるみると数が減り、ついには一匹だけとなった。

「これで残るは君だけだよ?」

「ば、馬鹿な…裕二如きにあの精鋭達がわずか数十秒でやられただと!?」

「あのねぇ、僕だってお祖母ちゃんの指導を受けたことあるし、大や雄山、勇姿達と血の繋がった兄弟でもあるんだよ? いくら僕が貧弱でも君達如きに負けるほど弱くないっての」

裕二はその妖怪の頭を拳で揺らし脳震盪を起こして気絶させる。

「(僕が貧弱って、どこがですか?)」

「それじゃその娘を背負ったら行くよ」

その後裕二達はいきなり襲われた妖怪と遭遇したものの、撃退し避難場所まで避難した。

 

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その頃、雄山は矢田を陰陽師にするべく鍛えていたが、東堂達の状況と同じく妖怪達が襲いかかってきた。

「ユーザン先生、どういうことっすか!?」

「俺が知るか!」

口論しながらも雄山は矢田を守り、陰陽術を見せる。

「矢田、しっかり見ておけ!これがいずれお前が習得する武器、陰陽術だ!」

目の前にいた妖怪が消え去り、消えていく。

「今度はお前がやってみろ!」

「無理です!」

「諦めんなよ!どうしてそこで諦めんだよ!あとちょっとじゃねえか!」

「いややっていないのにあとちょっともへったくれもねーっすよ!」

「さっきの特訓でやっただろうが! 時間が足りないなんて言い訳は出来ねえからな!」

「くっ…どうにでもなれ!」

矢田は全身全霊を込め、霊力を妖怪に向け放つ。だが効果はなかった。その原因は全くと言って良いほど矢田の出す霊力に威力が込められていないからだ。

「何故だぁぁぁぁっ!」

矢田が絶叫するが妖怪達は御構い無しに矢田を襲う。しかし雄山がその妖怪達を倒し殲滅していく。

「ま、初めての実戦だから仕方ねえが後で出来るようになるまでたっぷりと扱いてやるから覚悟しておけ!」

それを聞いた矢田は目の前が暗くなった。雄山の扱きは間違いなく祖母の扱きを受け継いでいた。


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