大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜 作:疾風迅雷の如く
雄山達は鴨川を利用して今回の本当の黒幕、妖魔連合会の本部へと案内させて車を走らせていた。
「鴨川、妖魔連合会ってのはどんな組織なんだ?」
沈黙の空気の中、雄山は気を紛れさせる為に質問をした。
「妖怪や魔物、そういった類の奴らを集めて人間様にとって天下取ろうって考えをしている連中の集まりだ。人間如きにぺこぺこ頭下げているのが気に食わねえ、人間そのものに恨みがある…まあ実際構成員はそんな奴しかいねえ。俺もそうだ。陰陽師…特に大和一族に一族滅亡寸前まで追い詰められたからなぁ」
「じゃあマフィア達を怪人化させたのは何故だ? 奴らも人間だろ?」
「さーな。俺は幹部でも末端だ。執行部じゃねえし、詳しい理由はわかんねーよ」
お手上げだと言わんばかりに鴨川は首を傾けた。その様子を見た東堂は内心毒吐いて堪えた。
「質問を変える。お前と手を組んでいた滝河についてだが…何故10億なんて大金を注ぎ込んだ?あいつを動かすなら人質なり何なり捕らえて動かせば良いだろうが」
「わかっちゃいねーな。確かにその手もあるがそんなことをすりゃぁ足がついてしまう。なるべくその時が来るまで悟られないようにする為だったんだよ」
「しかし悟られないようにする余り神経質になってマフィアを使ってあのチンピラ達を殺したのが逆に仇となったってことか?」
「そぅだ。互いに会ってもいない滝河とマフィアの連携が上手くいくはずもなかった。だからお前に気づかれて計画がパァ。さらにあいつも状況が悪くなった途端掌返したから殺しただけだ。まあどのみち金の回収の為に殺す予定はあったけどな」
「そんなことの為に殺すなんて酷い…!」
東堂にはそれが理解できなかった。綺麗な物を見てきただけに鴨川のように命をまるでゴミのように粗末に扱うのが許せなかった。
「酷いのは失敗した奴らだ。おかげで後始末しなきゃいけなくなったんだしな」
まるでではなく、もはや滝河をゴミそのもののように粗末に扱ったことに対して東堂がキレ殴りかかろうとした…
「よせ東堂」
だが雄山が東堂の腕を掴み、それを止めた。
「何でですか!?」
当然東堂は反論する。だが雄山は聞き分けの悪い子供に言いかけさせるように口を開く
「裏の世界は皆こんな感じだ。殺すなんてことは奴らにとって何の躊躇いもない。そんな奴らに言ったところで暖簾に腕押し…無駄だ」
東堂は唸り、それから黙ってしまった。
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「…着いたぞ。ここが妖魔連合会本部の入り口だ」
そしてその場所に車を止め、降りると雄山達には意外すぎる場所だった。
「ここって鴨川弁当の本社?!」
東堂はあまりにも意外すぎて大声を出してしまった。戦隊モノの特撮の展開で例えるならばヒーローの主人公に良くしてもらっている目の前のご近所さんが悪の秘密結社の本部長の自宅だったと言った展開だろうか。
「ああ。組織の目的は人間に変わって天下を取ること…だが手っ取り早く天下を取るには実績と兵隊が必要だ。その為により近くでバレねーところに本部を設置する必要があった」
「失敗した時のリスクなんて考えていないのか…?」
「遠くでやったところで失敗するリスクはどの道変わんねーさ。バレたらすぐに警察(サツ)にパクられて計画どころじゃねー。それだけやべーことをやってんだよ」
「もっとも絵に描いた餅で終わるがな…」
雄山がそう呟くと東堂もそれに頷いた。
「妖魔連合会本部は地下二階の資料室から行ける。そこから先は自分の足で行ってこい」
鴨川は話を強引に逸らし雄山達にそう伝えると雄山は鴨川の頭を掴み地面に叩きつけた。
「そこまで案内しろ」
雄山は殺気を出し、もう一度叩きつけた。
「ぐっ…お前は俺に言われなきゃ何も出来ない駄々っ子ちゃんか?」
鴨川をさらに叩きつけて脅し始める。その様は
「お前は敵だ。罠の可能性がある。てめえを人質に取れば交渉事も楽に済む。最悪盾にして戻れば問題ねえ」
雄山のいうことに東堂は引いていた。
「確かに俺は敵だ。だが俺は失敗した上に組織を売った以上俺はすでに妖魔連合会の敵なんだよ。妖魔連合会に顔を出しても人質の価値にもならねーし、むしろ真っ先に殺される。盾にしようにも竜の形態の状態ならともかくこの状態じゃ相手が強過ぎて盾にもならねーよ。人質にも盾にもならねえ足手まといの俺を連れて行くよりここで置いていった方が良いと思うぜ」
だが言われた本人である鴨川は東堂よりも冷静だった。鴨川は東堂のように裏社会の表面を生きてきた者ではない。むしろ陰謀などの人の感情の黒い部分を見て生きてきた者である。その経験が鴨川のような冷静さを生み出した。
「まあお前が下手に殺されるよりかここに残った方が良いか。お前一人じゃ何も出来ないしな…東堂行くぞ」
「あ、待ってくださいよー!」
東堂が雄山の後をついていき、建物の扉を閉めると鴨川はポツリと呟いた。
「…地獄で先に待っているぜ。キラーマウンテン…いや大和雄山」
その一言を呟き、口についた血を吹くと後ろから肩に手を置かれた。
「あの
その後鴨川は帰らぬ者となったがそこに無念を感じさせずむしろ遠足前の小学生のような楽しみな笑みを浮かべていた。
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雄山達はエレベーターを使い、地下2階へと向かっていた。
「ユーザン先生、大和一族に滅ぼされた妖怪は歴史の闇に葬り去られたって言っていましたけど…大和一族ってそんなに有名なんですか?」
「…裏の世界の中でも知っているのは一部の連中だ。大和一族は暗殺や汚れ仕事をやるから当然といえば当然だがな。二つ名が付いている俺は一族の恥晒しみたいなもんだ」
「複雑ですね…」
東堂の言葉と共にエレベーターの動きが止まり、女声のアナウンスが流れた。
【地下一階です】
雄山達が向かっているのは地下二階であり地下一階ではない。通常であればそのままエレベーターの中に人を入れさせるが今回は違う。敵のアジトとも言える場所にいるのだ。
「扉を閉めろ!」
雄山はすぐに判断し、ボタンに最も近い位置にいた東堂に指示する。経験が豊富な為に判断が出来たが裏社会に関わり始めた東堂は混乱していた。故に東堂の反応が遅れてしまい、侵入を許す。
「いっぺん死んでこいや!」
「邪魔してんじゃねえよ! ファンタジーにしか出てこねえ奴らに用はねえ!」
雄山はそのうち一体を殴り、吹き飛ばすと他の
【緊急事態発生! 緊急事態発生! 警備員は直ちに地下一階まで召集せよ!!】
この放送が流れると警備員の足音が地響きとなって停止しているエレベーターを揺らし完全にエレベーターは使い物にならなくなった。
「東堂! 一旦広い場所に出るぞ!」
雄山は東堂の手を掴むと膝を左腕に、背中を右腕で支える…所謂お姫様抱っこをして
「待てやオラァッ!!」
「クソガァッ! …まあいい
「間中だ。春澤、てめえに用件だけ言う。そっちに二人ほど行った。そいつらを足止めしろ。生死は問わねえ…わかったな!」