テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第5話 海のバトル

テトラたちは港町ベルシーのとあるレストランにて、ちょうど料理を頼もうかというところだ。何故ならば、それはモチロンおなかが減りまくっているからだ……! (主にテトラの)

 

…………『シーフードレストラン・レカイエ』…………

 

レストランといっても、テーブルもイスも木製。壁も床も長い木の板を並べた感じの、なんとも居心地の良さげな料理店だ。

 

「俺はこのナントカ・グリエで。」

 

「シーフードつってるのにィ。」

 

ヴェルディ少年はステーキを注文。肉が食えりゃいい系男子。

 

「わたしブウサギのテリーヌと、ポテトサラダ、アントルコート・グリエ、あとモフモフスープに、……レカイエ流マーボーカレーってやつ!…………と、焼き鳥丼!! デザートはベルティーユ・アイス。」

 

「お前も肉、てか量…………!!?」

 

テトラは食べ盛りらしい。大人二人が後に続く。

 

「すまないがオリーブオイルを一本、頂けるだろうか。」

 

「私はサーモン・グリルとヴェックス(ビール)。よろしく。」

 

この女、昼間なのにフツーにビール頼んだな…… あと、なんか、……潤滑油…………

テーブル上はテトラの注文料理でテンヤワンヤになるかと思われたが、彼女が猛スピードで食べ終えていくので別にそんなことにはならなかった。まあ、ウェイターとキッチンはテンヤワンヤだろう。

 

。。。。

 

さて、ランチを済ませたテトラたち。

 

「そおいえば、コレ誰が払うんだっけね?」

 

テトラの目はヴェルディ・レジンの目線に導かれ、三人の視線が魔術師ニーキスに集中した。

 

「ニーキスさま??」

「ニーキスだろ?」

「ワタシはニーキスさんかと……」

「…………イヤイヤ、各々自分で払うんじゃないの!?」

 

ホロ酔いニーキス、慌て気味なスマイル。

 

「ニーキスさまって、なんと言いますかその……」

「あんた歌姫かなんかなんだろ?金持ちだろうよ?」

「ちなみに我々の旅資金は先日、尽きた……」

「私、妖精関連の本とかしか持ってきてないぞ?……お金はすっかり忘れちゃって。そもそもお金持ちでもないし。」

 

いつの間にか横で会話を聞くシェフ、快晴のスマイル。なかなか男前なシェフの手にある包丁が、意味深に見えてくる。

 

「どうやらお困りのようですねえ……」

 

「はいっ……あ、イエ、そんな困ってる訳じゃ……」

 

「誤魔化さないで下さい……実は、私たちにも困っていることがありまして……」

 

「????」

 

 

最近、海に現れた狂暴な魔物。ソイツが漁船を襲いまくっているのだとシェフは言う。漁師はモチロン、シーフードレストランにとってもそれは深刻な問題である……

 

「過去にも魔物が船を襲うことはありましたが、『今度のヤツ』はソレハソレハ手強くて。……魔術師様にお力添え頂きたいと思っていたところなんです……!」

 

「…………どんなヤツなんだ?」

 

「サメっぽいヤツだと聞きました……」

 

「?……数は?」

 

「数はタブン一匹だけだと……」

 

「ニーキスさま!」

「一匹なら、イケるんじゃないか?」

「引き受けようじゃないか。」

「そうだな。……腹ごなしに一匹、やっつけてやろうか。」

 

直後にニーキスは四人の食べた分量について考えたが、それを言い出すとまたテトラの思い描く「ニーキスさま」を壊してしまう気がし、すぐ考えを改めた。……これは港町ベルシーを救うための戦いだ……!

 

 

▼▼▼▼!!『ベルシー近海』!!▼▼▼▼

 

全速前進ッ!!

光る水しぶきが青の世界の真ん中をまっすぐに走る。しばらくして目標海域に入ると、船は勢いを緩めた。

小型の帆船、その上で四人は戦いの準備を進めた。

テトラは『魔筆ノクティルカ』の筆毛を数本ニョキニョキと伸ばすと、先の方でヴェルディをぐるぐると縛った。

 

「コレ、勝手に吸血したりしないだろうな……?」

 

「それは大丈夫! ……だと思う。わたしにもう、だいぶ『馴染んできてる』から。この筆。」

 

「カメレオン!!幻惑のドレスを貸してっ!!」

 

ニーキスがそう叫ぶと、陽炎のような揺らめきから妖魔カメレオンがにじみ出る! カメレオンがその瞳から火花を飛ばすと、ヴェルディは『魚のようなシルエットのオーラ』をギラギラと纏った。

要するに彼らは、ヴェルディを魚に見せかけて海獣を釣ろうとしているのだ……!!

魔導人形レジンが海面の向こうへ手を突っ込むと、やがて海獣の存在を探知(どういう仕組みじゃ)! ヴェルディは不服そうな面持ちで海に飛び込む!

 

……どうやらオーラの中で少しは息ができるようだな……

 

無数の泡が天の彼方へ飛んでゆくのを見送る…………すると予想外に巨大な海獣のキバが視界の両端から迫る!

 

……ガキンッ!!!……

 

「釣れたぞッ!!」

 

「よっしゃ!!!」

 

急いで筆を持ち上げるテトラ! 最後はニーキス・レジンも一緒になって引っ張り、遂に青空の下に姿を現す青緑色の海獣!

その巨体は帆船よりも大きそうだ。身体中の傷痕が彼の狂暴さを物語る。

噛みくわえていた『ナイフ』(とヴェルディ)を宙に放ると、猛スピードで船を襲う…………!!

 

「ニーキスさまッ…………」

 

「ッ……プリズンセイヴァー!!!」

 

「霧沙雨!!!」

 

ニーキスは虹色の幻槍を空から落とし、レジンは刺突の豪雨を巨体に浴びせる!

……その間に無事、船上に戻ったヴェルディ。だが休むヒマなくヴェルディの身体はテトラの『釣竿』に引かれ、飛翔! 空に弧を描くヴェルディ……!

 

「マーメイドグリフッ……!!!」

 

テトラとヴェルディのトドメの一撃!!

ヴェルディは、そっと呟く。

 

「ワルいな海獣。……恨むなら……俺以外にしてくれよ?……」

 

…………テトラたちは勝利した……!!…………

 

。。。。

 

 

海獣「ムニエル」(テトラ命名)は、港町のみんなで心して食そうということになった。……夜。町はちょっとしたお祭りムードだ。

その中にテトラたち四人も混ざっていたハズなのだが、テトラはすぐにヴェルディの姿がないことに気づいた。

 

…………『ベルシー港』…………

 

ヴェルディは港で、ボケっとしていた。

 

「いた!……ヴェルディ。」

 

「…………」

 

「……ごめん、『魔物退治』なんて、面白くないよね。」

 

「! イヤ、そういうワケじゃない。……肉や魚や、パンやら酒やらを飲み食いするのはアタリマエの事だ。」

 

「でもッ………………」

 

「…………」

 

「……でも、……ムニエル……めちゃくちゃウマイよ…………?」

 

「……えっ」

 

テトラは真面目な顔つきでヴェルディを見つめていた。

 

「食べよう。……最高なので。」

 

串に刺さったのを手渡され、ひとくち、ふたくち。

星月夜を眺め、波の音を聴きながら、妖魔ヴェルディは色々なものを味わっていた。 モグモグモグ…… モグモグ…… ウマイなコレ。…………

楽しい無言がしばらく続いた。

テトラ、安心のスマイル。


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