テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第4話 魔術師たちの世界

テトラ達は、黒髪の魔術師ニーキスに導かれながら天然岩のアーチをくぐった。……アーチの向こう側には深々と茂る緑の世界が見えていたはずなのだが、くぐった瞬間、彼らは目的地の入り口にいた。

 

…………『マドレイユの隠れ集落』…………

 

「ようこそ、名も無き村へ。」

 

ニーキスはそう言うと、また静かに歩き出した。彼女の背中を追う三人組。

男二人は一応、警戒心を保ったままチラチラと村を見回したが、テトラはやはり好奇心の塊となってキョロキョロと村を、魔術師たちの世界を、全身で堪能していた。

 

「草も木々の葉っぱも全部チョコレート色だ。空は金色!」

 

「外から村を見えにくくする結界とか、なるべくクロリム(魔力の源)が外に出ていかないようにする結界、……色んな結界術のせいで色が違って見えちゃうんだよ。」

 

「へぇ~~……なんだかロマンチックです!」

 

「……ここの空は、昼間は金色・夕方はオレンジ・夜はネズミ色に染まるんだ。」

 

そよ風が吹くと、風がキラキラと光って見えた。これも魔力のせいなのだろうか。

 

立ち並ぶ建て物たちの多くは、クリーム色の石を積み、赤い屋根を乗っけたような感じだった。その内のひとつに入っていくニーキスと三人。

外の清々しい印象とは裏腹に、建て物の中はゴチャゴチャと散らかっていた。

……床には、生命力が爆発したような複雑な模様のじゅうたん。その上にはカボチャやドクロ、土器やら陶器やらがゴロゴロ。植木鉢からは、おそらく草花ではない別のナニカが生え出ている。

……壁には、大量の魔方陣と額縁に入れられた絵画が数点。壁際には本棚や魔導具棚や鏡。鏡は何故か水面のようにユラユラと揺れ、向こう側で魚が泳いでいる。

そして……建て物の中央には、いかにもな魔術師のお婆様が一人。水晶を前に置いて座っていた。

 

「……ケイオス様だ。一応、この村の長になるのかな。私の師匠……魔法の先生だ。」

 

 

【挿絵表示】

 

↑クソ雑ケイオス様

 

「はじめまして、お嬢さん方。ワシの名はケイオス。ただの魔法好きの年寄りじゃ。……まあ、お座りなさい。」

 

ポポポンとケイオスが出したイスに座る三人。

 

「私はテトラと申します。コッチの奴らは、その、友人です。」

 

「ヒヒヒ……獣人妖魔に人形。なかなか楽しそうじゃのう。……わざわざこんな山奥の村を訪ねてくる理由も察しがつく。ワシらがそうであるように、お主らも『魔と共に生きる者たち』なんじゃろう。」

 

「……はい。……ズバリ、魔力が失われていってるのは一体、何が原因なんでしょう??」

 

「ウム。その事じゃが、……………………実はワシら魔術師もまだよく分かっておらんくてのう…………『何かがクロリムの循環を壊してしまった』ということなんじゃろうけども…………」

 

「……そう、ですか…………」

 

「ワシの弟子ヘルレイオスなら、あるいは何か知っておるかもしれんのじゃが…………」

 

ニーキスが補足説明した。

 

ヘルレイオスは、ニーキスと共に大魔術師ケイオスの下で魔術を学んだ魔術師。……と言っても、ニーキスは早々に修行から逃げて劇場に入り浸り、いつしか劇団入りし、その後十数年もの間を歌劇の人として生きてきた……ので、その力の差は歴然。月とスッポンだ、と彼女は言う。 ……月とスッポン??

 

「ヘルレイオスの力量はとうの昔にワシのそれを上回った。現時点で恐らくは最強の魔術師じゃ。コレがどういうわけか、1年程行方知れずでのう…………」

 

「始めは『魔術師狩り』で捕まった者たちを逃がすために、一人でエストルーズに乗り込んで行ったんだと思っていたんだが、……まったく音沙汰がない。」

 

もしかして……処刑、されてしまったんでは……と、気まずそうに呟くテトラ。

 

「いや、それは無い。どうも魔術師狩りは、そもそも処刑だとか牢屋にぶちこんだりだとか、そういう事はしないらしい。勿論、魔術でよっぽどワルイ事したなら話はベツだろうけど。」

 

「……ただ、のう……………………」

 

少し、言いよどむケイオス様。

 

「推命術(占い)で、近い内にニーキスとヘルレイオスとが、……相対することになるであろう、と出ておるのじゃ…………」

 

「だから……生きてはいるだろうが、『クロリムの循環を壊したモノ』か、少なくとも良くないコトには関わっているかも…………」

 

「相対するって、戦うってこと……ですか?」

 

「もしそうなれば私に勝ち目は無い。……道を誤った出来損ないの私が、最強の魔術師に勝てるワケがない……………………」

 

『ニーキスさま』が出来損ない………………????

 

 

「いえ。ニーキスさまは負けません。」

 

テトラは言った。……めずらしく、わずかに憎しみが込められたような、低い声色。

 

「だって、信じているから。…………フィエール劇場でニーキスさまの声に焼き焦がされた人、洗い流された人、吹っ飛ばされた人、飲み込まれちゃった人みんなが、美しいカッコいい力強いニーキスさまを信じているから。たとえニーキスさまが信じられなくても関係無いんです。……………………道を誤ったなんて、勝てるワケがないだなんて…………そんなのは!! ウソなんだ!!!」

 

勢いよく建て物の外に出ていってしまうテトラ。

だが……何処へ行こうにも、初めての土地。なんだかややこしい事になるなコレと我に返り、すぐにニーキスたちの所に戻る。

 

「ヘルレイオスさんを探しに行きましょう……! そして、万が一ワルさでもしてたら……華麗な技で叩きのめすっ! ……それが、みんなの信じているニーキスさまです!!」


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