テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第2話 涙の話

「妖精たちの消失のハナシが聞こえ始めたのはここ1~2年のことだが、原因はわからない。突然ボロボロ崩れ去るともケムリのように宙に溶けていくとも聞いた。俺はまだ見たことないが……」

 

テトラとヴェルディ、レジンは町を離れ野道を歩いていた。目指すは魔術師たちの隠れ集落。ナゾの魔力異変について、魔術師たちなら何か知っているんじゃないか、聞きに行ってみよう、そうテトラが言い出したのだ。

 

「……エストルーズのヤツらが何かやってるせいだってウワサもある。『魔術師狩り』も1年程前からだ。まったく鬱陶しいヤツらだ。」

 

「ヤツら」……『エストルーズ対魔士団』をヴェルディはえらく嫌っているようだ。別名、光の騎士団。国の人々を守る為に凶悪な妖魔を狩る者たち。

きっと彼らとヴェルディの間で何度も闘いがあったのだ。そうに違いない。テトラは闘いのシーンを空想し出した。その空想はしかしすぐに終わった。

一瞬立ち止まり、また歩き始めるヴェルディ。彼の視線の遥か先には、どうやら「ヤツら」がいるようだった。……検問だ。空は晴れ渡っていたがテトラにはなんとなく、雷の匂いがした。

 

「気づくのが遅かったな……向こうはもう俺たちに気づいてる。まあ、槍兵と、鳥みたいなのを連れたヤツ。二人と一羽。イケるか。」

 

「ちょっと待って……! もうちょっと穏やかに、というかフツウに通してくれないかな?」

 

「どうかな。俺は通してくれないと思うな。」

 

私も通してもらえないと思うぞと、レジン。

結局、なにも策を講じることなく対魔士たちのもとへ。

 

「お三方。失礼だが、持ち物を調べさせていただく。よろしいかな?」

 

どうぞどうぞ、とテトラは『ノクティルカ』(テトラ命名、絵筆の形をしたアレ)を、ヴェルディは大剣みたいなやつを手渡した。

 

「……やけに大きいが、これは絵筆、か?」

 

「はい、ワタシ一応まほ………、画家をやっているんです! コノタビはマドレイユ山を絵に描いてみようかと思いまして。」

 

「山を。なるほどねぇ。」

 

「そこの二人は護衛です。あの辺は魔物がワンサカおると聞きまして。はい。」

 

「おっしゃる通り、あの辺はとても危険だ。気をつけたまえよ。」

 

「お心遣いありがとうゴザイマス……!」

 

思いのほか易々と通してもらえて、テトラはホッとひと安心。

 

「そこの男、………………人形、じゃないか?」

 

お三方は石化した。

 

「人形?…………魔導人形とゆうやつか。」

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

「ううむ、……魔術書や魔導器は没収、所持者はもれなく捕縛せよと言われているが……」

 

「待ってっ!!!」

 

対魔士にガガっとすがり付くテトラ。ヴェルディは戦闘行動に移ろうとしていた手を止めた。

 

「……この魔導人形は親の形見のようなもの……いえ、もはや『このひと』は私の家族です。どうかもう少しだけ、……一緒にいさせて下さい……」

 

少女の目からはキラキラと涙が零れていた。一同はその涙に戸惑い、そして見蕩れた。やがて対魔士が口を開く。

 

「顔を上げなさい、画家のお嬢さん。我々は今、平和を脅かす物を禁じようとしているにすぎない。家族を奪ったりはしないよ。」

 

さあ行きたまえ、という風にテトラの肩をポンポンと叩く対魔士。三人は歩き始めた。

ところで、対魔士が連れていた鳥(どうやら飼い慣らされた鳥型の魔物のようだ)はずっと大人しくしていたのだが、テトラが目前を横切ると急にバサバサと羽ばたき始めた。

 

「その筆、魔導器か!?」

 

「鳥さんゴメンッ!!」

 

テトラはノクティルカを、襲い来る魔鳥に向けてかざす! すると漆黒の筆毛があっという間に魔鳥を縛り上げる。

 

「ふたりとも!!私を守れッ!!!」

 

「「まかせろ!!!」」

 

「無影衝」「魔空牙!!!」

 

テトラを取り押さえようとする二人の対魔士を、ヴェルディが薙ぎ払いレジンがつらぬく。

 

「ドラッグ・レーベン……!!!」

 

ノクティルカはゴクゴクと不気味な音を鳴らし、力尽きた魔鳥を野道の上にドサリと放した。

 

…………対魔士たちは敗北した…………

 

 

「……一件落着だな。」

 

「これって、もしかして国家反逆罪とかになるんじゃ……?」

 

「うむ……………」

 

「しかし、……テトラ。あんたは中々怖い人だな……」

 

「血を吸うのは、だってコレそういう物なんでしょ?しょうがないじゃん……」

 

いや、怖いというのは先程の涙の話だ……レジンとヴェルディはそう言いかけて、やめた。……二人は信じたかったのだ。あの涙もあの言葉も全て嘘偽りのないものだったのだと。


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