テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

12 / 17
第9話 隠し剣

…………ディアナの迷宮塔・マルスの間…………

 

 

テトラたちは揃って、広間の中央にドンと置かれた「巨大なワイングラス」に目をやった。それは透明というワケではなく、鋼色。侵入者に気付いたか、それは魔力の火をつけた……

 

「テトラ、ヘタに近づくなよ…………落とされる。」

 

「オ、オウヨ……!」

 

ゆらゆらと燃える火炎の光にあたり、テトラたちの背後に影が生まれた。一人一影。

…………五つの影・シャドウが妖煙を掻き分ける…………

 

「……ッちょっと、何……わたしたちのニセモノだ……!?」

 

「ニセモノじゃ本物には勝てんだろ?……」

 

狼少年ヴェルディは勢いよく飛び上がり、自分のシャドウにケリを浴びせる! 続けざまに三度繰り出された蹴撃は見事、すべて相殺……

 

「コイツはまた、メンドクサそうな……!」

 

「我々の動きを完全にマネることができるようだ。……奥義:タイガーランページ!!」

 

レジンキッドが両拳でシャドウを滅多打ちにするが、やはり鏡のように同じ動きで跳ね返す!

シャドウから離れようにも影は途切れず。対魔士ナラシノの前髪を数本、シャドウの剣が斬り落とす……ナラシノは焦り笑顔。

 

「僕たちが何をしたっていうんだ……!!」

 

「……!炎を消せばイイんじゃ……碑零幻、穿て!!……」

 

魔氷が炸裂! 魔女ニーキスの攻撃で燭台は凍てつく!!

……が、炎は、平然と燃え続けている……

魔女のシャドウが反撃……炎を纏った剣閃、紅蓮剣!! ニーキスはギリギリで回避。

 

「ッな、…………こいつカタチだけじゃない、ワタシがまだ見せてない技までマネてきた……そんなのって…………!!」

 

もしカメレオンを召喚されたら、幻術空間に閉じ込められでもしたら、……………………絶対オワル…………!!!

……ニーキスが悲しい結末を想像すると間もなく、ニュルリと黒いカメレオンが出現。

 

「ゲッ!!!……ワタシのニセモノ、早まるなよ…………??!」

 

青ざめて唾を飲む……

一方、一味の首領(ドン)・テトラ……のシャドウは魔筆ノクティルカの毛をゾワゾワと広間中に伸ばし、黒毛がいよいよテトラたちを襲おうとしていた……

 

「ス、スワレル……!! 血ィ、吸われちゃう…………!!!」

 

…………漆黒と火炎が揺らめき、走馬灯が浮かび始めた…………

 

そんな時に、妙なことを言ったのはナラシノ……

 

 

「……オサケ……なんて、皆サン持ってたりしないですよね……」

 

 

…………オサケ…………

…………お酒……………………??

唖然とするテトラたち。しかしニーキスだけは違った。

 

「酒…………それなら持ってるぞ。ナルホド今が最期の時。存分に味わえ…………!」

 

「イヤイヤ!! そういうんじゃないって……」

 

一体何処に忍ばせていたのか。投げられた小さな酒瓶を手に受け取るとナラシノは一口、酒を飲む。

……飲んだのは、ほんの少量に見えたが……

今更に抜刀。再度酒を口にすると、今度はそれを刀身に吹きかけた!

 

「…………久し振りの人斬り……まァ影の猿真似だが、やはり心躍る。…………死の叫び、流血はマネ出来るかな?…………」

 

 

ふらりと転びそうな足取り……

先ずテトラの影を一太刀。

次に少年の首根っこを一太刀。

振り返り、人形レジンを一太刀。

 

「……おお、人形は血を飛ばさない……良く出来てる。

っははは!! 面白くないなあ?」

 

テトラとヴェルディ、レジンは目の前で自分を斬り殺され、絶句……!

魔女の術攻撃を容易く受け流すと、男の刀はしなやかに魔女の体を斬り落とした。

 

「ヒエッ…………ワタシのカラダ真っ二ツ…………!!」

 

殺人剣の耽美な閃きをシャドウの刀が止める。二本の刀は何回か火花を散らして広間に戦慄を奏でた。

 

「…爪竜連牙斬!!」

 

強力な斬撃が四度激突! しかしどちらの刃も相手の命には届かず……

 

「うゥむ、畜生!! 水月の如し……これは敵わん。悔しいが………………終わらせよう。火をおこす!!

…………奥義ッ、…破邪烈焔刃!!!…………」

 

紅の爆炎が沸き上がり、灼熱の剣が影を焼く!!

影は烈火に包まれると、目映い光の狭間に消えた……

 

「うぎゃ~…ッ…………」(テトラのうめき声)

 

多少離れた所にいたテトラたちも爆風に飛ばされかけた。

刀は最後、燭台にキレイな斬れ目を作り鞘に納まった。バラバラと燭台は散らばり、上階へと進む為のトビラが開放……

 

「………………オヤ? これは……」

 

ナラシノは塔攻略のキー、小さなツボ(?)を発見。

……『火焔の器』を手に入れた……

→ナラシノすごい…!!

→ナラシノおっかないな……

 

どうやら男は「酔い」が覚めてきたようだ。優しい笑顔で酒瓶を持ち主に返した。

 

「……秘技・泥酔剣……少しは役に立てたかな、ヨカッ…タ……」

 

「あっ!? 一気にまた弱々しく…………!?!」

 

千鳥足が治まって姿勢良くなったと思えば、すぐさま崩れる剣士……ニーキスは渋々剣士を膝の上に休ませた。ラッキー野郎。

 

「……酒、全然減ってないんだが、なんなんだコイツ……」

 

「悪酔いが無ければ割と最強なんじゃ……」

 

ヴェルディは対魔剣士の脅威に畏怖の念を抱いた……

しばらくの休息の後、テトラたちは塔の最上階を目指して再び歩き始めた。

きっと待っているはず……古代悠久あまねし月光……闇に柔く照る精霊ルナ!…………


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。