テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第7話 幻魔とテオリア

妖魔ヴェルディと契約を結んだテトラと仲間たち。

町の空に闇夜と星明かりが舞い降り、彼らは宿屋に帰還した。

 

 

…………宿屋『ブラック・アンド・ホワイト』…………

 

彼らは一応二部屋借りているワケだが、テトラが部屋の隅に「メランジュライフ」(たぶんスゴロクのようなボードゲーム)というのの一式を見つけてしまったので、今5人は一部屋に集まり就寝前のナイトゲームを行っていた。

 

 

(しばらくの間テトラ-ヴェルディ-人形レジン-魔女ニーキス-謎の対魔士~の順番で発言↓↓↓↓↓)

 

「……3、4。ハリウサギを踏んづける。一回休み! ガーンッ!!痛そう……」

 

「……5。大きめのハリウサギを踏んづける。二回休み。……ハリウサギってなんだ。」

 

「……6。ハリウサギの王に踏まれる。」

 

「…………。……そういえばアナタ、対魔士らしいけど……ひとりで一体何しにこんな寒いトコまで?」

 

「えっとソレは……実は密命を受けて今、任務の最中なんだ。……」

 

「密命!?かっこいい!!」

 

「(……密命って、喋っていいのか?)」

 

「ハリウサギの女王に恋する。?」

 

「……その任務って……もしかして魔力異変に関するコト……?」

 

「ウ~ン……詳しくは聞かされてないけど、ただのフツウの魔物討伐任務、だと思う。『金色の髪の少女とマダラ模様の魔物』を探せ! っていう。」

 

「『少女と魔物』……? それってわたしたちのコトじゃん!!?」

 

「いや違うだろ……? 俺はマダラ模様じゃないし。」

 

「ハリウサギに食べられる。フリダシに戻る。むぅ……。」

 

「魔物はともかく、少女は…………誘拐?」

 

「それならもっと大勢での捜索になりそうだが……少人数でチョコチョコと探しているんだ……今回は『ディアナの塔』周辺を見回りに行けと。」

 

「すごい! わたしたちもディアナの塔に行く途中だよ?!……せっかくだから一緒に行こう!! えっと……」

 

 

なんて御名前でしたっけと対魔士の男のカオをうかがうテトラ。男は笑顔で名を名乗った。

 

「僕はナラシノ。今日は助けてくれて本当にありがとう……キミは命の恩人、運命の女神だ!! この恩は必ず返そう。」

 

メランジュライフのボードの上空で、テトラとナラシノは握手した。なかなか男前のスマイル。何故かほんの少しだけヴェルディは面白くない気分。……フン、馴れ馴れしそうな対魔士だ。

 

ナイトゲームを楽しんだ5人はそのあと、……テトラはニーキスさまと一緒に温泉タイム、レジンはオリーブオイル・タイム、ヴェルディはナイフお手入れタイムを過ごしてから……それぞれ眠りの中へ向かった。風のない、穏やかな夜…………

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

この世界『メランジュ』の半分を、闇夜の黒が優しく包む。……曇りのない黒色…………

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

黒色はやがて、白い紙の上に不思議なシルエットを現した。……それは、空想の生き物の「魔法画」……

少女テオリアは森の中、コモレビの集まる所に寝転んで絵を描いていた。

 

無心で絵を描くテオリア。彼女を突然の『雨』が襲う。

雨に降られて慌てる少女……絵も雨に濡れてしまった。これは困った…………雨の当たらない場所へと、彼女は急ぐ。

 

「……ふぅ。イキナリこんな雨……」

 

テオリアはひとまず大きな木の下に避難した。雨は勢い激しく、森中にその轟音を響かせ続ける。

 

「ぜんぜん降り止まなそう……」

 

雨は瞬く間に海のような水溜まりを作った。轟音の中、さざなみをじっと見つめる。

 

「…………?」

 

さざなみにパシャリと魔物の前足が刺さる音。……気付くとテオリアは魔物の群れに囲まれていた……!

 

「?!なにこれ……魔物がいっぱい……!! なんで……やだ……コッチに来る……………………だれかッ!!!……………………」

 

 

……「助けて」。そう叫ぼうとした、その時。

 

テオリアが手に握っていた絵……雨に濡れた魔法画から、何か黒い煙のようなものが立ち上がり、その中から得体の知れない生き物が姿を現す。

…………魔法画から魔物が生まれ出たのである…………

 

それは黒いカラダで、四本足。イヌやネコに少し似ている気もするが、やはり違う。それらよりもう少し大きめの……テオリアが紙に描いた空想の生き物……

 

「……ポルカ…………」

 

生まれたての『ポルカ』はトリのような声でキョウキョウと短く数回泣き叫ぶと、軽やかに駆け出す。

ポルカは嵐のように浅い海の上を走り、テオリアの周りにいた魔物たちを全て跡形も無く、「喰らい尽くした」。…………

…………ポルカは、テオリアを守った…………

 

「すごい、ポルカ。……コワそうな魔物みんな食べちゃった……」

 

 

テオリアは自分を助けてくれたポルカを、愛した。

毎日のように森へ行き、パンやお魚やミルクを、時には遊び心でビールなんかをポルカに与えた。

ポルカはテオリアの出すものはなんでも、すぐさまペロリと平らげた。ポルカは好き嫌いしない、イイコだ!

 

 

…………ポルカとテオリアの楽しい日々…………

それはしかし、いつまでも……とはいかないのだ……

 

数年の間にそれはテオリアの倍程までカラダを大きく成長させ、空腹が満たされなくなったポルカは周囲のもの……木々や岩塊、動植物、そして妖魔……なにもかもを喰らい始めた。

 

「……だめッ……このままじゃ、ポルカが、…………町のひとたちまで、食べちゃう………………………!!!」

 

無謀にもテオリアは力ずくでそれを止めようとしたが、とても敵わない。

……ついに「食べ物を探す」真っ赤な目が、テオリアを見つけた。

 

「……ポルカ…………?」

 

 

…………黒い魔物が、テオリアを襲った…………

 

 

魔物はガブリと噛み付き、引き千切ろうと首を横にグイと反らした。だがどうも、上手くいっていない感触。「食べ物」が見当たらないぞと、赤い目が燃える。

テオリアは自分の身体が男に抱きかかえられているコトに気付く。

 

「……大丈夫か!?…………アイツは、あの黒い妖魔はなんだ……」

 

テオリアは男のカオが恐怖や憎しみ、やがて殺意に歪むのを間近で見てしまった。

 

「……待って!!……………………ポルカを殺さないで…………!!!」

 

男はその言葉と、胸元に流れ落ちた涙に、揺れた。

 

 

…………男が、……魔術師ヘルレイオスが、テオリアと出会った…………

それは1年程前のことだった。…………


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