イコセニ 作:中原 千
小野寺さんの覚醒に呆気にとられ、午後の授業は普通に受けた。
それにしても、何が小野寺さんを変えたのか非常に謎である。
考えられる可能性としては集が何かしたことが真っ先に思い付く。
集は中々に出来る奴だ。
逆転前もよく一杯食わされたものである。
何かあったら大体コイツのせいだ。
うん、何かコイツな気がしてきた。
大体コイツが悪い。
僕は悪くない。
……我が親友よ、本当に焼いてやろうか。
やっぱやめよう、むしろ焼かされそうだ。主に、手を。
こうなってしまってはしょうがない。
集は無視して小野寺さんに直接攻撃だ。
徹底抗戦の構えである。
僕は小野寺さんに挑戦し続けることを此処に誓おう。
僕は諦めない。
泣き喚く駄々っ子のように粘り強く戦い続けてやる。
……これだと敗北コース確定な気がする。
集が暗躍し始めて勝った試しがない。
何なんだ 彼奴は、チート野郎か。転生者なのか!
……転生者は僕だった。
仕方ないからこの問題は少しの間置いておこう。
そのうち何か進展するかもしれない。
まだあわてるような時間じゃない。
何はともあれホームルームも終わったし下校しよう。
集、小野寺さん、宮本さんの三人と駄弁りながらの下校時間、この世界についての情報収集も捗るだろう。
「集、小野寺さん、宮本さん、一緒に帰ろ~。」
「おう。」
「うんっ。」
「そうね。」
下校中、
「……それでね、佐藤さんったら拝み出しちゃって、
本当に面白い人だよね。」
「いやいや、一条君。あれを面白いで済ませられるって、かなり寛容ね。」
「そうかなぁ。」
情報収集しようとしたけど、何故か佐藤さんトークになったよ。
濃いよね、あの人。
前の世界では印象なかったけどあんな人いただろうか?
素晴らしい人材である。
「……それにしても最近この街、外国人多いわね。」
「そだね。俺、今朝も何組みか外人の団体見たよ。
何かイベントでもあったっけ?」
「……抗争、とか。」
僕は、重々しく呟く。
「えぇっ?!」
「何てね、言ってみただけだよ。」
「いやいや白よ、お前が言うとシャレにならんからやめなされ。」
「ひでぇ、差別か差別か訴えてやる!
ヤクザはいい顧問弁護士雇ってんだからな!」
「そういうところだよ、白よ。」
冗談めかして言ってみたが結構本気だ。
あの外国人からは堅気じゃない雰囲気を感じる。
堅気じゃない僕が言うから間違いない。
「まあ、もし抗争が起きても小野寺さんと宮本さんは僕が護るよ。僕って結構強いんだよ!」
ムフンと鼻息荒く宣言する。
やはり、あべこべ世界でも女子に格好いい所を見せたいのが男子の性である。
「白さんや、白さんや。
俺のことは護ってくれないのかね。」
「何か集って、自力で解決出来そうなんだよね。
ゾンビがうようよいる所でも余裕で生きていきそう。
むしろ、噛んだゾンビが集になりそうなまである。」
「いやお前俺のこと何だと思ってんの、さっきの仕返しかよ……」
「クヒヒヒ。」
「でも、分かる気がするわ。」
「そんなっ、るりちゃんまでっ。
そんなことないよね小野寺さん?」
「あははは……」
「えっ、小野寺さんまで……
俺も一応男子なんだよ、傷つく時は傷つくよ……」
フハハハ正義は勝つ。あっ、僕の家ヤクザだった。
そんな風に話していると家の近くに来た。
「それじゃあ、バイバイ!」
「バイバイ。」
「またね。」
「ほいじゃーねっと白さんや、」
集が近くにくる。
「どうしたんだ、集?」
「もう吹っ切れたんだな。良かった。良かった。」
「ハア?何言ってんだよお前?」
「いいって、いいって、そう照れなさんな。俺は嬉しいんだぜ、お前が前に進めて。
じゃーな。」
……あれっ?!何気に今、重要っぽい情報出たくね?!
集め、やはり侮れない奴である。
しかしよく考えると集は勘違いしている。
察しが良すぎる集にしては、これはとても珍しいことである。
流石の集にも分からないことはあるのか。
少し安心した。
ふう、今日は色々ありすぎてかなり疲れた。
宿題も無いし後はゆっくりしていよう。
ガラガラと扉を開いて我が家へ入ると、
「あっ!!お帰りなさいませ!!坊っちゃん!!!」
着物を着崩した野性的な美女がいた。
えぇーっと……
「……御宅さん、誰?」
なかなか千棘を出せない……
何とか今週末には出したいです。