イコセニ   作:中原 千

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お知らせ(追記)

すみません。一週間という期間を宣言していましたが上手く設定がまとまらずに書き上げることができませんでした。

なんとか千字程度の試作はできているのですが完結まで続けられるヴィジョンが見えずに公開まで踏み切れずにいます。

楽しみにしてくださってくれていた方々に誠に申し訳ありませんが改稿、再開は無期限の延期とさせていただきます。

度々申し訳ありません。

 

 

 

以下、改稿版のプロローグの試作

 

 

前世、仏教において過去世とも呼ばれるそれは敬虔な宗教家以外にも一般的に広まっている概念だろう。

創作物においても、前世の記憶を持ったまま生まれた人が活躍したり、何かのきっかけで前世の記憶を思い出して急成長したりする。

 

何故、今それを確認したか、その理由を端的に言うと"僕がそれ"だからである。

 

前者か後者かで言うと後者だ。

ある日僕は高熱を出して一週間もの間寝込み、その間に一気に前世の記憶が流れ込んできたのだ。

高熱を出したから思い出したのか思い出す反動で高熱が出たのか定かではないが、そんなことよりも重大な問題がある。

 

一つは前世の記憶に埋もれて今の世界での記憶がぼやけてしまったことだ。

考えてみて欲しい。僕は今高校一年生だ。つまり今世での記憶は十五年と少ししかない。それに対して前世の記憶はなんと言っても人生一つ分だ。軽く今世の数倍のウエイトがある。

それを一週間という期間で高密度に経験したのだ。今世については家族と仲のいい友人くらいしか覚えていない。

僕はこれからどうすればいいのだろうか?

もう既に前世の記憶がマイナスに働いてるんだけどクーリングオフとかできないのだろうか?

 

だが、それよりも大きな問題がある。

 

それは……

 

 

前世と今世で価値観違いすぎるんですけどォォォォォォォ!!!!!!!

 

 

記憶が曖昧なのはなんとかなる。病み上がりで本調子じゃないとか言い訳しとけば多少不審がられても乗りきれる。

だが、価値観から既に違うというのは致命的だ。

自然に出てきた行動が本格的に不味いことを引き起こす可能性がある。

例えば左利きの人がインドの人に左手で握手を求めて激怒されるようなものだ。

日本では手の右左に大きな問題はないが、インドでは左手は不浄の手、それで握手を求めるのは失礼に当たる行為だ。

こんな風に価値観の違う場所で自然としてしまう行為が問題を起こしてしまう事がある。

 

翻って僕の場合はどうだろう。

そもそも何が違うのか、一言で言うと"全部"だ。

 

例えば今、自分なりにコーディネートして街へ出掛けたとしよう。

アウトだ。

 

僕のセンスで服を選ぶと高確率で"無防備"になる。

無防備と言っても世界が荒廃していて特殊なスーツを着ていないとマトモに活動できないとかそういう類いの話ではない。

異性に対しての警戒心が足りないという意味の無防備だ。

誤解のないように確認しておくが僕は僕っ娘ではない。正真正銘の男だ。

では、どういうことか、つまりは、男女の貞操観とかそれに類する物が真逆なのだ。

 

なんなんだよ!

記憶曖昧で価値観真逆の世界ってハードモード過ぎない!?

どっちか片方でも厄介なのにちょっと酷くない!?

 

 

後は、父親が暴力を生業とする集団、いわゆるヤクザの組長っていう問題もあるけど正直二個目のインパクトが強すぎて霞んでる。

なんかこれはもうどうにでもなるような気さえしてくる。

 

 

心はまったく穏やかじゃないがそろそろ起きなければならない。

僕は父さんの一人息子なのだ。

前世風に言い直すと一人娘が一週間も病床に伏しているのだその心労は推して知るべしだろう。

このまま心配をかけ続けるのは良くない。すぐに回復した報告をするべきだろう。

ああ、気が重い……


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