イコセニ 作:中原 千
「昨日、女湯にいなかった?」
「……え?」
え?!え?!え?!
なんで宮本さんにバレてるんだ?!
……とりあえず誤魔化そう。
「アハハ……やだなあ宮本さん。何の冗談?」
「昨日、佐藤が覗きをしようとした時、私は体を洗ってたから別の方向いてたのよ。そしたら、扉を開ける一条君が見えたのよ。」
……ゴメン、佐藤さん。僕が迂闊だったばっかりに君の助力を無にしてしまうかもしれない。
「……見間違いじゃない?」
「お風呂での桐崎さんの様子は明らかにおかしかった。入る前は普通だったのにね。」
ギクギクッ!
「それに……」
まだあるの?!
「私が着替えたとき、使用されていたカゴは二つだった。だけど、中にいたのは千棘ちゃんだけだった。もう一人いた事は確実よ。」
「すいません!私がやりました!」
とうとう僕は自白した。無念だけど、宮本さんに淡々と尋問されるのになんかちょっとゾクゾクきた。
新たな扉が開きそう。
「説明してくれるわよね?」
「えーと、つまりね……」
「……と言うわけでして簡潔に言うと僕の早とちりというか深読みでして、全面的に僕の責任でした。スミマセンでした。」
僕は説明し終えた。
宮本さんは固まっていて、表情を確認しようにも俯いているので叶わない。
……終わった。絶対ドン引きされた。
だってあれじゃん。逆転させて考えてみても、深読みして男湯に入るヒロインってワケわかんないよ。そんなヤツいたら絶対戸惑うよ。
「……一条君。」
「はい、なんでしょうか宮本さん!」
「……フフッ、一条君って面白いわね。」
……へ?
「プフフ……だって……クフッ……深読みして女湯に入るって…………フフッ……しかも、そのまま数分……クハッ……気付かずにのんびりしてたって……ヒヒッ……天然すぎて…………プフフフフ」
なんかめちゃくちゃツボっていらっしゃるゥゥゥゥ!
「笑い過ぎてお腹痛い……それに、焦り過ぎじゃないかしら?逆なら大問題になるけど、一条君の場合は注意くらいで終わるはずよ。」
笑っていた笑顔のままそう言う宮本さん。
普段クールな宮本さんが笑うと、なんかグッとくるものがある。ドキドキしてきた。
「もう!宮本さん、笑い過ぎだよ!もしかして、重い感じで聞いてきたのもからかうためだったの?!」
赤くなった顔を誤魔化すために怒ったように言う。
「それに、焦ってたのは処分が怖かったからじゃないよ。」
「じゃあ、なんでなの?」
「宮本さんにドン引きされたくなかったんだ!」
「……私?」
……あっ、ついポロッといってしまった。
宮本さんはポカンとしている。
もうどうにでもなれ!この際だから、全部言ってしまおう。
「うん。桐崎さんと初めに会ったときがあるじゃん。その時に、焦ってた僕に宮本さんが優しい言葉をかけてくれたり抱きしめてくれたりして、それから宮本さんをいいなあ、素敵だなあって思ってたからさっきはあんなに焦っちゃったんだ。エヘヘ……」
「そっ、そっ、そうだったのね、知らなかったわ……」
声を上ずらせて顔を赤くする宮本さん。
……もしかして、脈アリですか?
「だけどよかったぁ、笑ってたってことは引いてないってことでしょ?」
「そっ、そうね!そうなるわね!」
なんかいい感じの感触来た!
少し攻めてみよう!
「じゃあ、肝試しの続きしよっか。大部話し込んじゃったから、もう半分以上進んじゃったけどね。
……手繋いでもいい?」
「手?!」
「うん!せっかくの肝試しだし、繋ぎたいなって……ダメ?」
「ダメな分けないわ。繋ぎましょう。」
繋いだ手は、暖かくて、柔らかくて、お互いに震えてて、緊張しあっているのを感じて二人で笑いあった。
暫く歩いていると、茂みがガサゴソと動いて、白装束の人が出てきた。
「うらめしや~」
「キャー!」
僕は驚いたフリをして宮本さんに抱きつく。
hshs、宮本さんいい匂いだよぉ!
ふと、宮本さんの顔を見ると、さらに赤くなって目もバタフライしていた。
「ヴだべじやー!」
なんかお化け役の人の声がさっきより実感こもってて怖い。
そんな感じで肝試しは終わった。
一時は焦ったけど、予想外に宮本さんとの距離が近くなれた嬉しい結末になった。
その後の宮本さんと小野寺さん。
「ゴメン小咲、もしかしたら私、敵になるかもしれないわ。」ボソッ
「あれ?るりちゃん、なにか言った?」
「なんでもないわ。」
書き終わった後に本当にこれでいいか迷ったときに思い出したキャラ崩壊タグの存在。
……ということは、もしかしてもっと攻めてもいいのでしょうか。