イコセニ   作:中原 千

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次回、遂に肝試しイベントです。







第41話

体を洗って温泉に浸かる。

やっぱり温泉はいい!

体にジンワリと染み渡って日頃の疲れが癒される。

なんといっても風情がある。

 

満天の星空、見渡す限りの山々、何よりもこれが僕一人の貸し切りってのが……貸し切り?!

 

他の男子が先に入っていたはずだ。いくらなんでも僕が電話に出ている内に全員があがったなんてことはないだろう。ここはあべこべ世界だ。前の前世の男子より入浴時間が短い訳がないだろう。

 

ということは、こっちは本当に女湯?!

あの電話は本当に手違いで、僕は深読みして女湯に入ってしまったのか?!

 

やっべえぜ……見つかったらどうなるよ……前世で言うと、今の僕は男湯に入ってる女子じやないか!どんなエロゲだ!

どうなるかわかんないよ!そんなシチュエーションなんて想定したこともないよ!しかも、これから先生も入ってくるんだよ!未知数過ぎて震えるわ!

 

さっさと出よう。

僕はザブンと勢いよくお湯から出て……

 

 

「やあ、桐崎さん。奇遇だね。こんなところで会うなんて思いもしなかったよ。」

 

 

目の前に桐崎さんを見つけた。

縮地で距離を詰め、桐崎さんを拘束して手で口を塞ぐ。

 

 

「色々言いたいこともあると思うけど僕の質問に答えて……もしかしなくてもここって女湯?」

 

 

コクコクと頷く桐崎さん。

ですよねー

 

 

かてて加えて、桐崎さんが入ってきたということは、他の女子も既に脱衣室にいるということだ。

マズイ、逃げ場がない。

 

 

「詳しい事情は後で話すから、今はとりあえず協力してちょうだい。とりあえず離すけど、絶対騒がないでね!」

 

 

また、コクコクと頷くので桐崎さんを解放して僕は温泉に入り岩影に隠れる。

 

 

「すご~い、露天風呂だ~!」

 

 

「わ……私、こういうの初めてで……」

 

 

「タオルは湯船につけちゃダメよ。」

 

 

他の女子達も入ってきた。

ギリギリセーフだった。さて、何か案を考えないと。

 

 

「桐崎さん。ボーっとしてどうしたの?」

 

 

「な……なんでもないよ!早く体洗わなくちゃー」

 

 

体を洗い始める皆。

さて、僕はどうするべきか?

 

想定される脱出口は全部で2つ。

 

1つは、脱衣室。

これは、まだ来ていない女子がいるため、使うことは出来ない。

 

 

もう1つは、関係者用通用口。

これは、一見良さそうに思えるが、捻るタイプのドアノブで開けるのに時間がかかるためリスクが高い。

 

うん、八方塞がりとはこの事だな。

まったく逃げられるヴィジョンが浮かばない。

最悪、「間違えちゃった、てへぺろ☆」とか言って誤魔化して出ていくことにしようか?

 

 

一方、女子達は、

 

 

「お嬢!お背中お流ししますって、冷たッ!お嬢!それ冷水ですよ!」

 

 

「ちょっと体が火照っちゃって……」

 

 

「小咲、背中を洗ってあげるわ、」

 

 

「まってるりちゃん!それくすぐった……キャア~~~!!アハハハハハハハハ!!」

 

 

 

エウリュアレ様(宮本さん)、グッチョブです!

 

女子同士の絡みってええですな~!

あべこべフィルターに通してから見ると、ヤヴァイ感じになるからフラットな心で楽しむ。

……だんだん、無理して脱出しなくてもいいかなって気がしてきた。

 

 

「お~~~~!広いじゃないか~~~~!」

 

 

「わー!先生の体凄い!」

 

 

あ……そうだ、先生もいたんだった……

 

 

「隣の風呂で一条君が入浴中!見たい!」

 

 

「ハハハ、佐藤、覗きをしたら退学だからな~」

 

 

佐藤さんって先生の前でも安定の佐藤さんなんですね……

覗きといえば、現在進行形で僕も覗きをしてるんですが僕もばれたら退学の可能性が微粒子レベルどころじゃなく存在している?

ヤバい、早く何とかしないと……

 

突破口を探るには、協力者が必要だ。

桐崎さんは……

 

 

「お嬢!そろそろ止めないと命に関わりますよ!」

 

 

「まだ火照ってる気がして……」

 

 

まだやってた……

桐崎さんの協力を得られないなら、選択肢の幅は大きく狭まる。

 

……他に手伝ってくれそうな人は……?

 

小野寺さんは……駄目だ、よしんば協力を得られても桐崎さんと同じ状態になりそうだ。

 

宮本さんは……駄目だ、女神様にドン引きされて距離をおかれたら僕は立ち直れない。

 

鶫さんは……もっての外だ。

 

 

……他に協力を仰げそうな人は…………いた!

 

 

(助けて!)と念を送ってみる。

 

 

 

 

 

???「ハッ!ビビっと来た!行かなくちゃ!」

 

 

 

念じた数秒後に彼女は動きだし、僕のところへやって来た。僕は口に指を当ててシーっという。

 

 

「わっ!一条君?!なんでここにいるの?!(小声)」

 

 

「これには深い事情があってね。なにも聞かずに助けてくれない?」

 

 

僕は上目遣いで頼んでみる。

 

 

「ズッキューン!任せて!この佐藤が一条君をお守りします!」

 

 

そう、僕が当てにしたのは佐藤さんだ。

冗談半分で心の中で助けを求めたら、本当に通じた。

やっぱこの人ヤバいわ。

 

 

「5秒、5秒だけ皆の視線を一方向に集めてちょうだい。そしたら、僕はなんとか脱出できるハズだから。」

 

 

「5秒だね。分かった。何とかするよ。」

 

 

佐藤さんが決意に満ちた表情をしている。

不覚にも少し格好いいと思ってしまった。

 

 

「じゃあ、行ってくるよ。」

 

 

「佐藤さん!無茶しないでね。」

 

 

そのまま、佐藤さんは親指を立てて歩いて行く。そして、

 

 

「うおぉぉ!リビドーが押さえられない!待ってろ私の桃源郷!!!」

 

 

「おい佐藤!それはシャレになんないって!皆!佐藤を押さえろ!」

 

 

柵へと走り出した佐藤さんに先生が慌てて声をあげる。

 

 

佐藤さん!まさか、そこまでしてくれるなんて……!

 

暴れる佐藤さんの顔が、早く行けと言っているように見えた。

 

佐藤さん、君の事は忘れない。君の犠牲は絶対に無駄にしない!

 

僕は振り返らずに縮地でドアの所まで行き、脱出した。

 

ドアを開けるときにとある一人から向けられた視線に気付かずに…………

 

 

 

 

 




今回、迷走した自覚はあります。
勢いだけで書きました。

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