イコセニ   作:中原 千

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バスの中での話は省略しました。







第40話

「今から近くのキャンプ場で飯盒炊爨とカレー作りだ。楽しんで作れよ~!」

 

 

林間学校の会場に着いて、先生が宣言する。

 

自然の中での調理だ。

形から入ろうと僕はタオルをバンダナ風に巻いてみる。

 

イメージしているのは前世で見た農業系アイドルだ。

 

 

「桐崎さん、下ごしらえ終わったけど火の調子はどう?」

 

 

「うん、いい感じだよ……」

 

 

およ?桐崎さんが僕の顔をじっと見つめている。

 

 

「えーと、そんなに見つめてどうしたの?何かついてる?」

 

 

「……そのおでこの傷どうしたの?」

 

 

おでこの傷?

覚えがないので手で探ってみる。

 

 

「……お、あったあった。これのことかな?古い傷みたいだけど覚えてないや。形から考えて犬かなんかかな?」

 

 

こっちの僕の子供時代はあべこべ世界の男子にしてはなかなかアグレッシブだったみたいだ。

 

 

「……犬。」

 

 

桐崎さんがなにか考え込んでいる。

 

 

「アハハ、もしかして心配してくれてるの?大丈夫だよ。普段は髪でかくれるから全然気になんないよ。」

 

 

「顔の傷だよ?」

 

 

「うん、僕は大丈夫。それより火の調子は?」

 

 

「あっ!うん、大丈夫そう。」

 

 

 

 

完成したカレーはなかなかの完成度だった。

やはり勝因は、調理は僕、集、鶫さん、エウリュアレ様(宮本さん)の四人を中心にして、桐崎さんを火の担当に、小野寺さんを盛り付けの担当にしたことだろう。

僕は調理実習の時に学んだのである。

林間学校に来てまでラヴアンドピースするわけにはいかない。

ただ、小野寺さんの盛り付け技術はやっぱり謎である。

なぜ、キャンプ用品で作ったカレーを高級レストラン風にできるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事も終えて宿に向かう。

泊まる宿は少々高そうだが、とてもいい宿である。

この学校ってイベントに当てる予算の割合大きすぎじゃないだろうか?

 

 

「まだ自由時間あるしせっかくだからトランプでもやらない?普通にやってもつまんねぇし負けた奴は罰ゲームってのはどうよ?」

 

 

集が提案する。

 

 

「罰ゲーム?そんなの急に言われたって、僕は今センブリ茶に百味ビーンズ、後はパッチンガムとビリビリペンぐらいしかないよ!」

 

 

「……そうか、お前が今日の林間学校を相当楽しみにしてたってことは伝わったよ。でも、そういうのじゃなくて初恋のエピソードを語るとかにしね?」

 

 

「それでいいんじゃない。」

 

 

エウリュアレ様(宮本さん)が同意する。

 

 

「うん、じゃあ僕もそれでいいよ。」

 

 

女神様の意見は絶対だ。

 

 

 

「ではゲームスタート~!」

 

 

集の開始宣言でババ抜きが始まる。

 

 

カードを引く順番は僕、桐崎さん、鶫さん、集、宮本さん、小野寺さんだが……

 

 

 

オノデラ(゚д゚;)

 

 

 

すごく……ババもってそうです……

 

 

その上、僕がガードを引こうとする度に、

 

 

(゚д゚lll)と(´∇`)に変わるので、どのガードがババか一目瞭然だ。

 

 

しばらく、小野寺さんの顔芸を愉しんだが、僕はガチ勢だから慈悲なくババ以外のガードを選ぶ。

 

絶望した小野寺さんの表情を見ていると加虐心がくすぐられる。

まさに愉悦

 

 

ゲームは進み結局、小野寺さんと桐崎さんが残った。

二人とも、表情に完全に出るが引くときは目を瞑るので完全に運だよりになるという稀に見る低レベルなたたかいだ。

因みに、僕があがってからはババも移動しだしたが、ポーカーフェイスのできる宮本さんと集は一度もババを引かなかった。

鶫さんも意外とポーカーフェイスができてなかったけど、引くときに目を開けていたのでやはりババを引くことはなかった。

鶫さんは桐崎さん相手に割りと無慈悲だった。

 

 

桐崎さんと小野寺さんはお互いにいっぱいいっぱいで顔色も大変なことになっている。

そのまま、二人はガードを減らしていき、いよいよババ含めて三枚しか残っていない最終局面になったときに小野寺さんが動いた。

 

 

「お願い一条君、助けて!」

 

 

「え?これにでいいの?勿体なくない?」

 

 

あの何でも僕が言うこときく約束をこれに使うらしい。

まあ、小野寺さんらしいといえば小野寺さんらしいかもしれない。

 

 

「まあいいや、分かった。

えーっと……集合時間っていつだっけ?」

 

 

「18:30だろ。」

 

 

答える集。

 

 

「じゃあ今は?」

 

 

「18:28って、やべぇ!行こーぜ、皆。」

 

 

「「「「「うん!」」」」」

 

 

トランプを片付けて部屋を出る。

その間際に小野寺さんに聞いてみる。

 

 

「本当にこれで良かったの?もっといろいろあるとおもってたけど。」

 

 

「うん!すごく助かったよ!一条君ありがとう!」

 

 

おっふう、眩しい笑顔でお礼を言われてしまったぜ。

やっぱり補填する何かを考えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林間学校を楽しむ白達の裏で、暗躍する影があった。

 

それは男湯と女湯の暖簾を入れ換えた。

 

 

???「フハハハ!ヤツの策略で学校では手を出せなくなってしまったが学校外で活動している今がチャンスだ。一条白!女湯に侵入したビッチの烙印を押されて社会的に死ぬがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロントに電話があったと言われてきてみれば、電話は既に切れていた。

 

……おかしい。

そもそも、僕に用事が有るなら直接携帯電話の方にかけてくるはずだ。

これは、なにかあるなと思ってから温泉の前で察する。

 

ああ、なるほど。男湯と女湯の暖簾を入れ換えたのか。

おそらく、イケボマーの仕業だろう。

という訳で正解は女湯の暖簾がかかってる方だ。

 

僕は男湯の暖簾がある方に入った振りをしつつ、女湯の暖簾がある方に縮地で入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、

 

 

???「フハハハ、これを戻せば後は……」

 

 

女将「何やってるんですか?!」

 

 

???「チッ!命拾いしたな一条白。」

 

 

影は去っていった。

 

 

女将「まったく……暖簾を入れ換えようとするなんて、厄介なイタズラをする客がいるわね。」




執筆時間の都合上、アンケートは深夜までとさせていただきます。

明日の朝にアンケートに終了宣言を追記し、それ以降の投票は無効になります。

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