イコセニ 作:中原 千
一条君のところへいった桐崎さんを見送りながらるりちゃんと話す。
「……ということだけど、あんた、どうするの?
……いっそ告っちゃう?」
るりちゃん、何いってるの?!
「こっ……告るって、いきなり、そんな……」
「……そんなこといってたら、すぐに取られちゃうよ?
今回だって、実際、一条君はキスされてるんだし……」
るりちゃんの言葉にハッとする。
「……うん……そうだね、その通りだと思う……」
……私はもう一条君に思いを告げられないんだって半分諦めてた……
だけど、
「……がんばるよ、るりちゃん。
私……この気持ち伝えてみる……!」
いやー、うまいことキスの件を解決出来て良かった。
お父様に頼んだ伝言がうまく伝わってなかったのは予想外だっだが……
やっぱり、英語でメールした方が良かったか?
僕の拙い英語力でかくよりも良いかと思ったが、日本語は難しいって言うし、今後は英語でのメールも検討した方してみよう。
そういえば、結果的に今日の僕は桐崎さんに対してわざとはぐらかして弄ぶ、小悪魔系のような感じでいけてた気がする。
今日の事は今後の参考にしてみよう。
……さあ、桐崎さんの問題が片付いたら次は小野寺さんだ。
さっき思い出したが、小野寺さんに説明するっていってまだしてない。
このままじゃマズイので、今から言いに行くとする。
小野寺さんと言えば、なんでも一個お願いを聞くっていうやつもまだである。
まあ、こっちはむしろ小野寺さん待ちだから焦らずにいこう。
小野寺さんはどんなお願いをするだろうか?
キスの経験を積んでレベルアップした、ニューバージョンの白さんには不可能などない。
どんな願いも聖なる杯や雨降りの悪魔の如く叶えてしんぜよう。
……いや、雨降りの悪魔はだめか。
教室に行くと小野寺さんとエウリュアレ様(宮本さん)がいた。
「小野寺さん、宮本さん、用事終わったの?」
……まあ、その用事っていうのも大方、桐崎さんに気を回してのでっち上げだとおもわれるが。
「一条君……!」
「じゃーね、小咲、一条君。
私急用があるからすぐ帰らなきゃ。ばいびーーーーー」
……速ッ!
今、縮地使わなかった時の僕ぐらいの速度で走り去ったんだけど?!
「……宮本さん、凄いね……」
……まあ、ちょうどいいか。
「あのね、小野寺さん。ちょっと話したい事があるんだけど……」
「えっ?!一条君も?!」
「もって事は小野寺さんも?
……先に話す?」
「いやっ!いいよいいよ!一条君、先に言って。」
それでは遠慮なく、
「実は、小野寺さんに伝えたい事があってね。
……本当はもっと早く言わなきゃいけなかったんだけど……
僕と桐崎さんって恋人のフリだったんだ。まあ、ちょっとした事実があってね。」
小野寺さんの様子を伺う。
「……あれっ?あんま驚いてない?」
そう聞くと、小野寺さんは小さく笑って答える。
「あはは……実は、それもう桐崎さんから聞いてて、それも、ついさっき……」
それを聞いて脱力してしまう。
「……あー、なるほど。そっか、じゃあ、もっと早くいうべきだったね、僕……
まあ、あれだね。長い間待たせちゃってごめんね。」
「いいよ。気にしてないから。」
小野寺さんの優しさが刺さる。
……これからはもっと早く言うように気を付けよう。
「……じゃあ、小野寺さんもどうぞ……?」
「……うん。」
覚悟を決めた表情になる小野寺さん。
「……一条君。私、実はね……
私、ずっと一条君の事……」
……ム、この感じは!
「小野寺さん、ちょっとごめんね。」
「……?」
僕は窓を開ける。
そして、刀を抜き、高速で飛来してくる物体を切り払う。
「うわっ、やばっ!!」
「何してるのよバカッ!」
「すいませーーーん!!
誰か当たってないですかーーー?!!」
騒ぐ声が聞こえる。
僕はスマートフォンを取り出してシャッターをきった。
……僕だけならいいが、小野寺さんまで危険に晒した事は許せない。
後で先生にチクってやる。
黒い感情を引っ込めて、小野寺さんの方に向き直る。
「……びっくりしたね。
えっと……続きを聞かせて?」
「…………」
「小野寺さん?」
応答がない。
近づいて様子を確認すると……
立ったまま気絶してる?!
「小野寺さん?!大丈夫?!」
……背負って帰ろう……
帰り道、
小野寺さんを背負っていると、良い匂いがするし、色々当たって幸せだ。
女の子って何でこんなに良い匂いがするんだろう?
それに、それはあべこべ世界でも変わらないんだね。
まあ、ムサイ女子は…………それはそれでアリな気もする…………
……僕って、中々業が深いなぁ……
「……一条君……」
小野寺さんに呼ばれて振り返ると、どうやら寝言だったようだ。
……小野寺さんは僕の夢を見てるのか……なんか、嬉しい。
こそばゆい気持ちになっていると、
「……一条君……大好きだよ……」
……ふぇつ?!今、何て言った?!
ダイスケ?(難聴)
そうか、僕はダイスケだったのか!(錯乱)
……いや、やめよう。ちゃんと聞こえてた。
……その……小野寺さんが僕の事を好きだって……
顔が熱くなる。
考えると、まっすぐにこんなことを言われたのは、全部を通してこれが初めてである。
……ヤバイ、胸が苦しい。
なんだ、僕のこの初心な反応は?!
ぜんぜんニューバージョンになってないじゃないですか?!
詐欺だ!訴訟も辞さない。
アホなことを考えてみるが、まったく自分を誤魔化せない。
このままでは色々ヤバイので、縮地を使って急いで小野寺さんを家に届けてから自宅に戻る。
……あー、明日小野寺さんに会ったとき、不自然にならないだろうか?心配である。
真夜中、
寂れた空き家に二つの影があった。
「……お呼びですか、クロード様……」
「……来たか、待ちわびたぞ。」
男は写真を取り出す。
「こいつが次の任務の相手……名は、一条白……
現在、お嬢と交際関係にある。
しかし、ヤツは狡猾なガキだ。お嬢は騙され、利用されている可能性が高い……」
「お嬢を……許せませんね、その男……」
「私はヤツの策略(第19話参照)により、直接手をだせない……
だが、我が肝いりの優秀な部下であるお前ならば、あのクソガキ……(以下略)……の魔の手から、お嬢を救い出す事が出きるだろう。」
「……了解しました。お嬢は私が必ず救います……」
遂にあのキャラが登場です!
乞うご期待!!!