イコセニ   作:中原 千

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ギリギリが常態化してしまっている。

なんとかしないといけませんね。






第30話

突然、幸せな感覚がなくなったことに不満を感じて周りを見渡す。

 

 

……あれ?私、何してたっけ?

 

 

徐々に意識がはっきりしてきて、それと共に直前の自分の行動を思い出し絶句する。

 

 

……私、最低だ……

 

 

目を開けた時に彼がいたのはきっと私を心配して、そばにいてくれてたからだろう。

 

それなのに、私は……私は……

 

寝ぼけて、彼にキ……キスをしてしまった……

 

急いで彼を探すが見あたらない。

人に聞いても、"急にいなくなった"や"忽然と消えた"などと要領を得ない。

 

 

 

 

 

……彼を傷つけてしまった。

その事を改めて認識すると頭が真っ白になる。

 

誰かが来て、私に話しかけた気がしたが答える余裕がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……気が付くと、私は家に帰っていた。

 

聞いてみると、クロードが迎えにきてくれたらしい。

 

 

……結局、何も進展しないままこんな時間になってしまった。

このままでは、明日どんな顔をして彼に会えば良いのか分からない。

 

うぅ、どうしよう……

 

 

 

……そうだ、パパに相談してみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパの部屋を訪ねる。

 

 

「ねぇ、パパ、相談があるんだけど……」

 

 

「どうしたんだい千棘、そんな顔して?」

 

 

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っていう訳で、彼を傷つけちゃって……

私、どうすればいいの……」

 

 

「フフ、そうだね……」

 

 

パパは小さく笑って考える仕草をすると、

 

 

「白君なら、大丈夫だよ。

明日会った時に普通に話せばいいんじゃないかな?」

 

 

「どうして、大丈夫だって分かるの?」

 

 

「白君は強くて優しい子だからね。真っ直ぐ向き合うと良いとおもうよ。」

 

 

パパはにこやかに笑っている。

 

 

「……分かった。そうしてみる。」

 

 

パパを信じて、やれるだけやってみることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、

 

通学中に彼を見つけた。

 

 

「お、おはよう!」

 

 

「おはよう、桐崎さん。」

 

 

……あれっ?!なんか普通?!

 

 

「どうしたの?」

 

 

「き……昨日のことなんだけど……」

 

 

「昨日?……ああ、大丈夫だった?もうふらついたりしてない?これからはちゃんと準備運動しなきゃだめだよ。」

 

 

「……う、うん。気を付ける……」

 

 

「じゃあ行こっ!遅れちゃうよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイク2

 

 

「あれっ?桐崎さん。どうしたの?」

 

 

「こ……これ……」

 

「くれるの?……輸入品のクッキーだね。いま食べてもいい?」

 

 

「……うん。」

 

 

「美味しい!」

 

 

か、可愛い……

 

 

「あっ!桐崎さん、次の授業が始っちゃいそうだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だめだ、言い出せない……

 

 

昨日は言おうと決意したけど、いざとなるとしり込みする自分に嫌気がさす。

 

 

……うぅ、どうしようか……

 

 

項垂れていると、

 

 

「桐崎さん、元気ないけど大丈夫?」

 

 

小野寺さんが話しかけてきてくれた。

宮本さんもいる。

 

 

……そうだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?!付き合ってないの?!」

 

 

「……うん。私達の両親の特別な事情で、私達は恋人のフリをしてるの……」

 

 

((一条君の演技力凄すぎない?!かなり自然だったよよ?!))

 

 

「あ!でも、この話、絶対秘密にしてね!

……じゃないと、街が一つ滅んでしまうから。」

 

 

「……何やってる家なの?」

 

 

「……普通の家庭だよ。」

 

 

ギャングの事は秘密にしたい。

 

 

「……あっ!このことだったんだ!」

 

 

小野寺さんが声をあげる。

 

 

「? 小咲、何の事?」

 

 

「一条君に何かを説明するって言われてて、機会がなくて今日まで来てたんだけど……このことだったんだね!」

 

 

「……小咲ィ!こんな大事なことをなぜ言わない!」

 

 

 

 

小野寺さんと宮本さんがじゃれている。

 

私は意を決して二人に相談する。

 

 

「……それで、昨日の事を彼に謝りたいんだけど、協力してくれないかな?」

 

 

「……昨日の事……ああ、たしかに恋人のフリの相手だと、ちょっとマズイわね……」

 

 

「えっ?!昨日、何が会ったの?!」

 

 

「頼まれてくれる?」

 

 

「仕方ないわね、手伝うわ。」

 

 

「えっ?スルー?!るりちゃんもしかして、黙ってたこと怒ってる?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイク3

 

 

「狙い目は飼育係の時間よ。そこなら、まとまった長い時間が確保できるから、状況に流されたりしないはずよ。」

 

 

「なるほど。」

 

 

「私と小咲で舞子君を留めておくから、その間に済ませなさい。」

 

 

「分かった。頑張る!」

 

 

 

 

 

 

というやり取りがあって、今、私は彼と二人きりで作業している。

 

 

「じゃあ桐崎さん、そっちの花壇よろしくね。」

 

 

……今、言わなくちゃ!

 

 

 

「は、話があるんだけどっ!!!」

 

 

「……すごい熱量だね。どうしたの?」

 

 

「きっ、昨日のことなんだけど、助けてくれてありがとう!

それと、急にキ……キスしてごめんなさい!」

 

 

なんとか言いきった!

 

……彼の様子は……

 

 

「ッ、プハハハ、今日一日様子がおかしいっておもったら、それを言おうとしてたの?

そうだね、僕の方こそ、いなくなったりしてごめんね。」

 

 

……良かった。パパのいった通りだった。

パパに相談してよかった。

 

 

「それにしてもなんというか……

大丈夫って伝えておいたのに、そんなになるなんて、桐崎さんって「ちょっと待って!」」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「私、それ聞いてない……」

 

 

「えっ?!……おかしいな?アーデルトさんにめーるで伝言をたのんで、その後に伝えたって返信が来たんだけど……」

 

 

えっ?!パパに?!

 

 

「ほら、これ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名:伝言お願いします

 

本文:本日、詳細は省きますが、ちょっとした問題が起こりまして、千棘さんが気にされているとおもいますので、

今日の事は事故みたいなものだと思ってるので、僕は大丈夫だとだけ伝えておいていただけますか?

夜分遅くに申し訳ありませんでした。

 

 

 

 

 

 

件名:伝えたよ

 

本文:千棘には、ちゃんと伝えておいたよ。こんな娘だけど、これからもよろしくね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら。」

 

 

……えっ?!そんなの、一言もって、あっ!

 

 

 

『白君なら、大丈夫だよ。』

 

 

……あれか!

 

パパのバカ!紛らわしい言い方しないでよ!

 

 

 

「どうしたの、桐崎さん?変な顔して……?」

 

 

「……なんでもない。」

 

 

 

うぅ、こんなに悩んでバカみたい……

 

 

相談なんてしなきゃよかった!!!

 

 

 

 

 




桐崎父「白君、ばっちり大丈夫と"だけ"伝えたよ。」

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