イコセニ   作:中原 千

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遅くなってしまってすみませんでした。


それでは、第24話をどうぞ。




第24話

小野寺さんと皆がいる部屋に戻る。

勉強会の小休止、雑談タイムのスタートである。

部屋にサクサクという音が鳴り響く。

 

……やっぱり皆、ルマンド食べるんだね……

 

 

 

話題のメインは海外にいた頃の桐崎さんの話。

やはり、異国の地についての話は物珍しく、皆興味津々だ。

 

 

「なあなあ、桐崎さん。オレもちょっち聞いていい?」

 

 

 

ム、集よ、あまり可笑しな事を聞くんじゃないぞ。

 

 

 

「お前らってぶっちゃけどこまで行ってんの?」

 

 

……既に割りとギリギリな気もするが……

 

 

 

「ど……どこまでって……?」

 

 

 

「そりゃあもちろん、キ……「ギルティッ!!!」ブフォウ」

 

 

妙なことを口走りそうだった集は、縮地で近付いて当て身で気絶させた。

この間、僅か2秒。

 

 

キスをしたしないの問題は、この前組員に誤魔化したばかりだ。

万が一この会話を聞かれたら、蒸し返されること必至である。

早々に終わらせるに限る。

 

因みに、周囲の気配は探ってあり組員が聞き耳をたてられる範囲にはいないことは事前に確かめてあるので、この思考はフラグにならない。

 

せっかく、苦労して止めている戦争である。

万難を排して維持する所存である。

 

そのために集は犠牲になったのだ。

 

集よ、お前の犠牲は忘れるまで忘れない。

 

 

 

……おっと、皆の視線が集まっている。

何とか誤魔化さなくては。

 

 

 

 

「……あれ?集、こんな所で寝ると風邪引くよ?」

 

 

 

 

「……いや、一条君……」

 

 

 

 

「どうしたの?小野寺さん?」ニコッ

 

 

 

笑顔で誤魔化してみる。

 

 

 

「……な、なんでもないよっ!」

 

 

 

フッ、勝った。

やはり、可愛いは正義である。

っぶねぇ、あべこべ世界で良かった。

前のままだと打つ手なしだった。

同じことやってもキモいだけだったし……

 

 

 

「じゃあ、集を来客用の部屋に置いてくるよ。」

 

空気が微妙になったので戦略的撤退である。

三十六計逃げるに如かず、先人の教えに従おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、勉強会の様子を双眼鏡で覗く、怪しい陰達があった。

 

 

 

???「やっぱり、坊っちゃんと嬢ちゃんの仲はあんまり進展してないみたいッスね……」

 

 

 

???「ようやく家に連れて来たと思ったら、お友達も一緒ですしね……」

 

 

 

???「ここは一丁、私達が一肌脱ぐしかないッスね……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なんか、悪寒が……

 

これはやっぱりアレだろうか?

アホ共が何かやらかしたか、やらかそうとしているんだろうか?

 

僕は皆のいる部屋に急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

「……あれっ?桐崎さんは?」

 

 

「さっき家の方に連れていかれてたけど……」

 

 

 

……遅かったか。

 

龍め、僕を出し抜くとはなかなかやるじゃないか。

それをもっと別の形で見せてくれたら素直に誉められるのに……

 

これじゃあ、怒りしか溜まらない。

 

……とにかく、桐崎さんの所に急ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉の中に桐崎さんを見つけた。

 

 

 

「桐崎さん!」

 

 

 

バタンッ

 

 

僕が倉に足を踏み入れた瞬間、扉を閉められた。

 

……油断した。

人の気配には気付いていたが、縮地でどうにでもなると思っていた。

 

……龍め、存外動きが素早いじゃないか。

しょうもないことの為に腕を磨きやがって……

 

きっと今頃、"私達に出来るのはここまでッス"とか思っているのだろう。

腹が立つ。

 

 

……桐崎さんは大丈夫だろうか?

最近、慣れてきているとはいえ、命の危険を感じる相手と密室で二人きりな訳だが……

 

 

 

「桐崎さん、大丈夫……」

 

 

 

 

 

ギュッ

 

 

 

 

……ファッ?!

 

 

 

桐崎さんが抱きついて来たでござる。

 

 

 

もしかして来た?ついに来ちゃった?

桐崎さんのデレ期来ちゃったの?

 

うわー!どうしよっかなー!

来ちゃったかー!ついに来ちゃったかー!

 

暗い密室の中に若い男女が二人きり、しかもここはあべこべ世界だ。

女の子は皆、狼である。

沸き上がる想いに理性のタガが外れて、情欲のままに僕へと襲いかかる桐崎さん。

 

くふぅー!

僕もついに卒業かー!

前世も含めて長かったなー!

 

地道に桐崎さんにアタックしてて本当に良かった。

 

前世の母さんと父さん!

僕、ついにやったよ!孫の顔を見せてあげられなくてゴメンね!

僕、今回は頑張るから応援してね!!!

 

脳裏に親指を立てていい笑顔をしている前世の両親の姿が浮かぶ。

 

さあ、覚悟を決めて決戦へ向かおう。

 

一条白、今こそ真の漢になります!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……って、震えてる?

 

 

 

 

 

……これってもしかして、

 

 

 

 

「桐崎さんって、もしかして暗い所に何かあったりします?」

 

 

コクコクと頷く桐崎さん。

 

 

 

 

 

……うっわー、やっちまったよ!

一人で盛り上がって恥っずーーー!

ないわー、マジないわー!

あべこべ世界でこれッスか?

僕、マジ恥ずいじゃないですかッ!!!

 

 

 

 

……って、僕のことよりも桐崎さんだ。

 

 

「理由ってお聞きしても……?」

 

 

「……昔、洗濯機に……」

 

 

 

洗濯機?!

 

 

 

「……ハマって……五時間も……」

 

 

 

五時間?!

 

 

 

「……動けなくなって……それ以来……」

 

 

……えぇー?!

それってどういう状況?!

どういう経緯でそうなったか物凄く気になるんだけど……

 

 

 

「……ま、まあ、大丈夫だよ!僕が一緒にいてあげるから!前も言った用に、僕って結構強いからね!」

 

 

 

心なしか震えが少し治まった様な桐崎さん。

 

 

 

……よしっ、ここは!

 

 

 

 

ナデリナデリ

 

 

 

へにゃあ

 

 

 

 

 

こうしていれば、桐崎さんも落ち着くだろう。

力が抜けすぎて、溶けるんじゃないかって感じだけどネ。

可愛いなあ、まったくもう!

 

 

さあ、打開策を考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だめだ、何も思い付かない。

 

腰の刀を使えば扉を壊せないこともないが、そのためには桐崎さんを離さなくてはならない。

それをするのは、今の桐崎さんを見ると酷だろう。

 

何とかならないか……

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

「桐崎さん!桐崎さん!」

 

 

「ふにゃ……ほえ?」

 

 

「目が慣れて視界が広がったけど……どうかな?」

 

 

「……これなら……平気…かも……?」スック

 

 

「桐崎さんッ!急に立ち上がったらッ!」

 

 

 

「……え?」グラッ

 

 

 

「危な……」

 

 

 

 

 

桐崎さんに押し倒される用に二人で倒れ込む。

 

 

 

……この世界の僕はもやしっこだったようで、逆転後は著しく筋力量が減ったので、純粋な力では桐崎さんを支えることも出来ない。

 

今までは体運びを工夫して力仕事をしていたのだ。

 

 

それにしても不味いなあ、この状況にこの体制って……

 

 

 

 

 

 

バターン「お嬢ーーーーーー!!!」

 

 

 

イケボマーが血相を変えて扉を開けた。

 

 

……どう見てもフラグでしたね。本当にありがとうございました 。

 

 

 

「ご無事ですか、お嬢……!!

お嬢の帰りが遅いので、ヤクザに話を……、聞いて……」

 

 

 

あー、イケボマーさんフリーズしちゃったよ……

しょうがないね、心配して来てみれば当の桐崎さんは恋人を襲っている(ように見える)状況である。

混乱して当然である。

 

 

さあ、イケボマーさんが復帰する前に逃走して無かった事に……

 

 

「あ!一条君、こんな所にいたんだ。

良かったー、心配し……」

 

 

 

……なるほど、このパターンね。

ハイハイ、あるある。

 

 

 

 

「おっ……お邪魔しましたーーーーー!!」

 

 

 

「小野寺さァァァァァァァァァーーーーーーん!!!」

 

 

 

脱兎の如く逃げていく小野寺さん。

 

もう、完全に誤解している。

 

 

 

……誤解?

 

 

あっ!小野寺さんに説明するって言って、僕まだしてないじゃん!

 

 

……何が、子供の頃の約束を忘れて申し訳ないだ。

今も僕はたった数日前の約束を果たせてないじゃないか。

 

 

 

あーあ……本当にどうしよっかなあ……

 

 

 

 

 




やはり、ストックなしの自転車操業だと、不安定になってしまいますね。

明日も時間がずれる可能性がありますが、
週末中には立て直したいと考えているので、暖かい目で見守って頂けると幸いです。

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