イコセニ   作:中原 千

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今回はオリ主と小咲ちゃんの視点が何度か切り替わります。


第23話

「お茶、出来たよ~。」

 

お茶を持って皆がいる部屋へ入る。

 

好みが分からないので全員に両方を出す。

因みにお茶菓子は、和菓子から最中、煎餅、羊羮。

洋菓子から、クッキー、チョコレート、バターケーキが出ている。

あとは、ルマンドである。

 

……ルマンドって何に分類されるんだろう?

名前からして洋菓子だろうか?

 

まあ、ルマンドはルマンドでいいか。

 

 

そして、一斉にルマンドに手を伸ばす皆。

 

……そうだよね。

いかにも高そうな雰囲気を醸し出している見た目の最中とか、ケーキとかあるなかにルマンドが混ざってたらとりあえずそっちいくよね。

なんか、安心できるし……

 

 

皆からサクサクというBGMが流れる中、なんとも締まらない空気で勉強が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……特に何も起きない。

そもそも、勉強会って皆で集まって勉強する催しだし、そうそう何かあるわけがない。

 

誰だよ、波乱に満ちたとか言った奴。

 

……僕だったよ……

 

 

あー、何か起きないかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……黙々と宿題を進める

 

るりちゃんがいきなり勉強会を提案したと思ったら一条君もすぐに許可するし、展開が速すぎて実感が湧かなかったけど、私、今、一条君の家にいるんだよね!

 

……うぅ、改めて意識するとドキドキが止まらないよぉ。

 

クンクン 何かいい匂いがする気がするよぉ。 クンクン

 

 

……だめだ、焦りすぎて自分でも何がなんだか分からなくなってきた……

 

と……とにかく落ち着こう……!!

 

一度、勉強に集中しよう……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれっ?

 

 

「……ねぇ、るりちゃん、ここ解ける?」

 

 

「んー?」チラッ

 

 

……えっ?今の間は何?!

 

 

「ねぇ、一条君。

ここ小咲に教えてあげて欲しいんだけど。」

 

 

?!

 

 

「るっ……!!るりちゃ……」

 

 

「あーゴメン。私これ全然ワカンナイから……」

 

 

 

ええ?!絶対嘘だよ!!

 

 

 

「……この前、もっと難しそうなの……」

 

 

「いいから行け。」

 

 

……るりちゃん……

 

うぅ、覚悟を決めないと……

 

 

 

「よ……よろしくお願いします……」

 

 

「うん。任されたよ。それで、どれかな?」ニコニコ

 

 

うわあああ?!何、この状況?!

一条君がこんなに近くに……!

 

「?」

 

 

「あうっ、えーっと、ここなんだけど……」

 

 

「あっ!ここね!

これは、ヘロンの公式を使う問題だから他とちょっとちがってね……」

 

 

くうぅ……一条君が近いよぉ……

一条君が一生懸命教えてくれてるのにドキドキして全然集中できないよぉ……

ゴメンね、一条君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って事なんだけど、大丈夫かな?」

 

 

「……うっ、うん。ありがとう、一条君……」

 

 

「はいっ!どういたしまして!」

 

 

 

……小野寺さん、顔を赤くして俯いているけど本当に大丈夫だろうか?

 

まあ、ヘロンの公式って滅多に使わないし大丈夫と言えば大丈夫か。

 

 

……その分、出たとき絶望するんだけどね……

 

前世でやったことがある。

 

 

 

スッ

 

 

 

およ?

桐崎さんも、質問だろうか?

 

差し出された教科は……古典。

 

なるほど。

日本に来たばかりで現代文も苦労している桐崎さんは、確かに苦手になりやすいかもしれない。

古典の文法って本当に厄介である。

 

 

……まあ、他の教科は大体出来る桐崎さんである。

地頭も良いだろうし努力も出来る人だから、慣れればすぐに出来るようになるだろう。

 

 

そんな事を考えながら教えていく。

 

ウムウム、これぞ思い描いていた勉強会である。

 

 

 

暫くして

 

 

「……結構、勉強したね。お茶、淹れなおすから休憩にしない?」

 

 

「賛成~。にしてもお前ってよく働くな~。疲れねえの?」

 

 

と、集。

 

 

「アハハハ、ほとんど趣味だから疲れないよ。

紳士の嗜みってヤツだね。」

 

「すげーな……」

 

 

「じゃあ、淹れて来るよ。」

 

 

「あ……!私も手伝うよ……!」

 

 

「ありがとう、小野寺さん。助かるよ。」

 

 

 

 

小野寺さんと厨房に向かう。

 

 

お茶を 淹れていると、小野寺さんが何かをじっと見つめている。

 

あれは……

 

 

 

「それが気になるの?」

 

 

 

「ふえっ?!」

 

 

小野寺さんから可愛い声が漏れた。

 

 

「鍵穴型なんて珍しいネックレスだよね。

それはね、思い出の品なんだ。

小さい頃にね、女の子と約束をしてね、それに関わる物なんだ。」

 

 

 

僕は昔の思い出を話す。

 

 

 

「……それって?!」

 

 

 

 

「……凄く大切な約束だったんだ。

……でもね、僕はそれを蔑ろにしちゃって、今はそれが大切な約束だったって事しか覚えてないんだ。」

 

 

 

 

「……一条君……」

 

 

 

小野寺さんが悲しそうな顔をする。

 

 

 

「薄情だよね。

何にも覚えてないんだよ。

約束の内容も、その鍵穴がどう関係するのかも、

それに、約束した相手の事すら覚えてないんだよ。」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

けれども、僕の口は止まらない。

 

 

「……フフっ、きっとその相手も今の僕を見たら怒るよね。大切だって分かってた、分かってた上で忘れたんだよ。最低だよね……」

 

 

 

 

「一条君!!!

そっ、そんな事ないよ……!」

 

 

 

小野寺さんの声に驚いて、思わず顔を見つめる。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「一条君……

その約束、大切にしてたんでしょ?

もしその人が約束を覚えてたら……

きっとその人は喜ぶよ?」

 

 

 

小野寺さんは悲しそうだけれど優しく何よりも、美しい表情をしている。

 

 

 

「なんで……」

 

 

 

「たとえ一条君が細かい内容を忘れたとしても……

大切にしてた事の方が大きいと思うよ……?」

 

 

 

小野寺さんが思い出の姿と重なる。

 

 

 

「小野寺さん……」

 

 

 

「あっ……!ゴメン!!

変な事言って……!」

 

 

 

「……うん。ありがとうね。なんか元気出たよ。

そうだね。もし今後あの子に会えたら正直に言ってみる。」

 

 

思えば、随分と時間が経った。

 

 

「結構、話し込んじゃったね。

お茶も出来たし、皆の所に戻ろうか。」

 

 

「うんっ!そうだね、一条君!」

 

 

 

 

 

 




これにて、勉強会編前半終了です。

明日で勉強会編は完結する予定です。

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