イコセニ   作:中原 千

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今日は、バレンタインデーですね。

イベントクエストが捗ります。


第20話

木の上にいたイケボマーが慌てて何処かへ行った。

白さん大勝利である。

 

まあ、また来るだろうからクラスの皆には恋人アピールをしておこう。

その方がイケボマーの目も欺きやすいだろう。

 

 

「学校でも監視されそうだから、イヤかもしれないけど恋人で通すよ。」ボソッ

 

 

僕は 桐崎さんに耳打ちした。

そして、桐崎さんが小さく頷くのを確認したので、

 

「バレちゃったらしょうがないね!

エヘヘ~、実は僕と桐崎さんは付き合うことになったんだ~。」

 

 

「一条くーん!!

誰かのものになっちゃうなんて~!!」

 

「悔しい~!!」

 

「それでも好きだァァァァァーーー!!!」

 

 

再沸騰するクラス。

ウムウム、良い感じだ。

て言うか佐藤さん、復活早いね……

 

 

しかし、桐崎さんは固まって動けないでいる。

転校したばっかりだもんね、仕方ないね。

 

こういうときは、

 

 

「なになに?照れちゃってんの、桐崎さん?

このシャイガールめ!可愛いなあ、もうっ!」

 

 

 

 

ナデリナデリ

 

 

へにゃあ

 

 

 

 

 

フッフッフ、見よこの桐崎さんの蕩けた表情を。

 

さらに熱狂するクラス。

掴みはコレくらいで十分だろう。

……少し桐崎さんに申し訳ない気もする。

学校ですら偽の恋人関係を続けなければならなくなってしまったのだ、その心労は計り知れない。

せめて、桐崎さんに負担が掛からないよう立ち回ろう。

 

……桐崎さんばかりを気に掛けてしまっていが、小野寺さんも心配だ。

 

彼女は彼女で僕達のデートを目撃した日からずっとモヤモヤした蟠りを抱えていそうである。

メールでいくらか弁解したが、詳しいことは書けなかったので早く話がしたくて仕方ないだろう。

 

……すまない、小野寺さん。

もう少し待ってくれ。

 

今は意味深なウインクでもして誤魔化そう。パチッ

 

 

 

……小野寺さんは顔を赤くしてキョドり出した。

ええのう。やはり、あたふた小野寺さんは可愛ええのう。

 

 

教室は未だ、喧騒に包まれているが、暫くしてキョーコちゃんが入ってきて、ホームルームの開始を宣言したら幾分か落ち着いた。

 

 

その後、何度も小野寺さんに説明しようと試みたが、休み時間も食事時もクラスメイト達に質問攻めにされ、こっそりと説明するチャンスはないまま下校時刻となってしまった。

 

まずいなあ、このままズルズルと先伸ばしになりそうである。

いっそ、この角の先に小野寺さんがいてくれればすぐにでも説明出来るのに……

 

 

 

 

 

「あれ?一条君?」

 

 

 

 

キタ―――(゚∀゚) ―――― !!

 

ジーザス!なんと言うグッドタイミングだ。

主は我を救い給うた!

これで勝つる!

 

 

「小野寺さん、今って時間ある?」

 

 

「うっ、うん!大丈夫だよ!」

 

 

「良かった。それじゃあ何処か空いてる教室にって、

危ないッ!」

 

 

「すっ、すいません!」

 

 

小野寺さんの後ろから大きな荷物を持って走って来た人がいた。

 

……まったく、速く運び終えたいのは分かるが、荷物で視界が塞がれているのだから、もっと慎重に移動してほしい。

 

 

「気を付けてね。今回は誰も怪我しなかったから良かったけど……」

 

 

「本当にすいませんでした!」

 

 

ああ、引き寄せた拍子に小野寺さんの鞄の中身がたくさん落ちてしまっている。

 

 

「大丈夫だった、小野寺さん?

ごめんね、急に引き寄せて。」

 

 

 

 

 

「……ひゃいっ!

う、うん!大丈夫だよ。一条君、助けてくれてありがとう。

なんだか逆な気もするけどね……」

 

 

 

良かった、小野寺さんは大丈夫そうである。

 

 

だけど、そんなに顔を赤くして、息を荒げて……

僕の腕の中でナニかしていたのかい?

紳士的な僕は聞かないけど……

 

 

「フフ、緊急時に男か女かは関係ないよ。

それに、僕は結構強いしねっ!

それより、バッグの中身たくさん出ちゃったね……」

 

 

 

二人で散乱した物達を広い集める。

ノート、教科書、筆入れ、……ん?

 

 

 

「ずいぶん古い鍵だね。何の鍵?」

 

 

 

「あっ、コレ?

コレは小さい頃に貰った、約束の物なんだぁ……」

 

 

 

……小さい頃、……約束……

 

 

 

「今はその人に会えてないんだけど、大切にしてるんだぁ……

って、一条君?!」

 

 

「どうしたの、小野寺さん?

そんなに慌てて……」

 

 

「大丈夫っ、一条君?!

顔、真っ青だよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 

 

 

あれ?なんだこれ?

頭が痛い。体が震える。吐き気がする。上手く立っていられない。

 

 

 

「一条君!!!」

 

 

小野寺さんに体を支えられる。

ありがとう、小野寺さん。

体に力が入らないから、助かったよ。

 

……お礼を言いたいけど、舌が回らない。

だんだん小野寺さんの声が遠くなって来た。

 

まずいなあ。まだ、小野寺さんに桐崎さんとの事を説明してないのに……

 

 

「一条君!ねぇっ!

大丈夫?!一条君!!!」

 

 

 

そんなに泣きそうな顔をしないで、小野寺さん。

僕は大丈夫だから。

 

 

 

「一条君!一条君!!!」

 

 

 

小野寺さん……■■■ちゃん……

 

 

 

「……ごめん、なさい……」

 

「そんなっ!一条君!起きてよ、一条君!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見馴れた、天井だ……」

 

おかしいな、どうして僕は家で寝ているんだろう?

 

ドサッ

 

何かが落ちる音が聞こえる。

そちらを向くと、

 

 

「坊っちゃん!良かったッス!!!」

 

 

と、龍が突進してきた。

そして、強く抱き締めて来るが、僕はここで絞められるほど柔じゃない。

こちらも負けじと応戦する。

 

暫く龍とじゃれあっていると、徐々に寝ていた理由を思いだしてくる。

 

 

「龍、僕はどうやって此処に来たんだ?」

 

 

「それなら、小野寺って子が坊っちゃんを背負って来たッスよ!

偉く血相を変えて走って来てて、坊っちゃんの事を物凄く心配してたッス!

いや~、流石ッスね、坊っちゃん!

愛されてるッスね~、あの娘も狙ってるんで?」

 

 

……そうか、小野寺さんが運んでくれたのか。

 

 

「当ったり前ェよ!

それにしても、小野寺さんに迷惑かけちゃったな……」

 

 

「そんなことないと思うッスよ!

女にとってこういうことは迷惑よりも誇らしい事なハズッス!」

 

 

「……そうか、そうかもな。

じゃあ、必要なのは謝罪じゃなくてお礼だな!

それに託つけて 、アタックしちまうのも言いかもな!!!」

 

 

「坊っちゃん!その意気ッスよ!!!」




バレンタインデーにこの話ってどうだったんでしょうか。

チョコが欠片も出ませんでした。

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