イコセニ   作:中原 千

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明日はバレンタインデーですね。

たくさんの女性サーヴァントからチョコを貰えることが確定している作者は勝ったも同然です。

まさに、約束された勝利の日(エクスカリヴァレンタインデー)

fgoやってて良かった(歓喜)


第19話

……夢を見る。

 

幼い男女が星空の下で何かを話している。

 

その様子は神秘的であり、何よりも童話的であった。

 

二人の相貌は靄がかかっている訳でも、光が不足している訳でもないのに認識することが敵わない。

 

話の内容を聞こうと集中するが、その声に込められた感情は理解できても、その言葉に込められた意味は全く理解できない。

 

どうすることも出来ずに二人を見守っていると、不意に少女が落涙した。

 

それを見た少年は少女へと駆け寄る。

 

絵本の結末に垂泣していた少女を結末を書き換えることで少年は笑顔にしたらしい。

 

会話の内容は分からなかった、経緯だけが理解するための過程を飛ばして解された。

 

俄に、二人の言葉が意味を持つ。

 

 

「オレは■■■!お前は?」

 

 

「わたしは……」

 

 

 

 

 

 

意識が浮上する。

世界は神秘的な童話から即物的な記文となる。

 

名も知れぬ童話を読んでいて、湧き上がったものは懐古、罪悪感、後悔、

そして、一片の違和感だ。

 

意識は水面へと到達し、完全に覚醒する。

 

 

 

……今の夢は何だったんだろう?

僕はいつの間にか英霊と契約していて、記憶共有でもしていたのだろうか。

 

 

……いや、やめよう。

僕はもう気付いている。

 

あの夢に出ていた少年は僕である。

異常への憧憬の果てに捨ててしまった、幼い頃の珠である。

 

失ったことを後悔して、罪悪感を抱いて奥底に封じて全て消し去ってしまおうとしていた我が罪である。

 

少年の名も聞こえなかったのではない。受け入れられなかったのだ。

 

……しかし、感じた違和感は何だろう?

ほぼほぼそうであるのに少しだけ違う物を見たような、

最終的にコナンの夢オチだった回の歩美、光彦、元太を見たような違和感だ。

 

 

……もしかしたら、この体の記憶だったのかもしれない。

 

そうならば傑作だ。世界は変わっても、人はそう変わらないらしい。

この世界の僕は約束を覚えていたのだろうか。

だとしたら非常に申し訳ない。

だって、僕はその約束を覚えていないのではなく、そもそも知らないのだから。

 

 

 

 

尽きぬものも数多あるが、そろそろ切り上げなくてはなるまい。

皆の朝食を作らなくてはならない、そして、何よりも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、今日は決戦の日だ。

見事、小野寺さんを説得してみせよう。

 

こんなことなら朝の護衛を続けておけば良かった。

 

ギャングとの抗争が落ち着いて自然消滅してしまっていたのである。

 

会うまでの時間で小野寺さんに説明をするイメージトレーニングでもしようか。

 

 

……やめよう。

「流れで」以外思いつかない。

よく考えたら、僕の乏しい経験ではそもそも良い案が生まれる訳なんてなかった。

普通にやろう。

 

「おはよう。」

 

 

「!

桐崎さんっ、おはよう!」

 

ヤッバイ、考え込んでて気付かなかった。

気を付けよう。

 

……それにしても、桐崎さんの方から挨拶してくれた!

キテる、キテるよ、コレ!

僕らの仲はどんどん良い方向に向かっている!

いやあ、感慨深いね、あの桐崎さんがだよ!

コレは朝から凄く良い感じだ。

小野寺さんへの弁解も上手くいきそうな予感である。

 

僕と桐崎さんは会話をしながら登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室にて、

 

 

 

「あっ、小野寺さんっ!」

 

 

小野寺さんを見つけて声をかける。

その時、小野寺さんは体をビクッとさせた。

 

……なんか覚醒前の小野寺さんに戻ったみたいである。

非常に可愛らしいのでグッジョブである。

 

 

 

「説明したいからちょっと来てく……」

 

 

 

「おおっ!!

一条君と桐崎さんだーーーーー!!」

 

 

「おーいみんな!

二人が来たぞーーーーー!」

 

 

「よっ!待ってましたーーーーー!!」

 

 

 

沸き立つクラス、小野寺さんがバラす訳ないと、小野寺さんの顔をみると、凄い勢いで顔を振っていた。

脳揺さぶられてない?大丈夫?

 

……まあ、やはり違ったかと理由を考えていると、

 

 

 

「もーネタはあがってんだ!」

 

 

と、集。

何故バレたッ?!

 

 

 

「一昨日の土曜日……!

街で二人がデートしてるのを目撃してしまったのだよーーー!!」

 

 

 

誰がッ?!

 

 

 

「佐藤さんが!!!」

 

 

 

佐藤さんッ、君かッ!!!

オシオキ決定!!!

 

 

僕はツカツカと佐藤さんの方へと歩いていき、両手を握りこぶしにして佐藤さんの頭をグリグリする。

 

グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ

 

「痛っ!地味に痛い!でも、嬉しい!!!

むしろご褒美です。ありがとうございました!!!」バタッ

 

佐藤さんはいろいろ極まって気絶してしまった。

このニヤケ顔を見るに良い夢を見ているのだろう。

流石の佐藤さんクオリティである。

 

 

まだまだ騒がしい。

 

クラスの皆に説明しようとしたら、窓の外で何かに光が反射するのが見えた。

 

 

 

 

イケボマー!

きさま!見ているなッ!

 

 

 

 

窓の外から教室の中を双眼鏡で覗く姿は不審者以外の何者でもない。

 

こうなったら、僕にも考えがある。

 

 

「ちょっとお花摘みに……」

 

 

と、教室を出てこめかみをヒクつかせて電話帳アプリを開く。

そして、ア行の場所から目的の番号に電話をかける。

 

 

 

……繋がった。

 

 

「あっ、もしもし、こんな時間にすみません。

少しお話がありまして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日こそヤツの尻尾を掴んでやるとお嬢の通うクラスを監視する。

しばらく様子を伺っていると、お嬢とあのガキが入ってきた。

 

その後、ガキ共の騒いでいるのを見ていると、一条白が女生徒に近付いてイチャつき始めた。

 

あの野郎、お嬢という人がありながら……許せん!

 

そして、一条白が教室を出たのでポイントを変えようと移動していると携帯に着信がきた。

 

……この大事な時に一体誰だ……

 

 

「もしもし、今忙し……」

 

 

「もしもし、クロードかい?」

 

 

「なっ……!ボ……ボス……?!」

 

 

どうしてボスから着信がッ?!

 

 

「ちょっと来てくれないかい。」

 

 

「……いえ、今は……」

 

 

「さっき一条君から連絡が来てね……

確認したいから急いで来てね。」

 

 

「……ッ!はい、分かりました。すぐに向かいます。」

 

 

 

通話を終える。

 

 

……おのれ、まさかボスを動かすとは……

 

やはり油断ならん、一条白ッ!!!




千棘ちゃんの視点を書く前に、何故か登場したクロード視点です。

千棘ちゃん視点は、二巻か三巻に該当する部分で書くことを予定しています。

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