イコセニ   作:中原 千

2 / 49
続けて一話目の投稿です。


第1話

今日はいつもより十分ほど遅く目が覚めた。

 

こんなことにも何かの非日常を期待してしまう自分に呆れつつ、朝食の準備をする。

組の皆の分も作っているためそれなりに時間がかかってしまうが、そこは長年の慣れで手際良くこなす。

普段は仕込みをして寝るのだが昨晩の自分は忘れてしまったらしい。

いつもより時間がかかってしまった上にできも少し悪い。

これからは気をつけようと反省しながら、ふと組の皆が来ない事を不信に思う。

料理をしている間に組の皆が起きてきて何だかんだと話始めるはずだ。

騒がしいが自分を慕ってくれる皆は嫌い出はない、嫌い出はないのだが次期組長として扱うのは止めてほしい。組長になる気はないのだ。

 

ともあれ、組の皆が来ないのは僥倖でもある。

今日は超デカイ黒リムジンで大規模に送迎されずに済みそうだ。

最初こそ黒リムジンにテンションを上げていたが学校前での物々しい送り出しは止めてほしい。

それだけでも尋常でなく浮くのに見ている生徒に因縁つけるのはまじでヤバい。

孤立する。冗談でなくボッチ化する。

ボッチの辛さは前で身に染みているのだから今回は全力でボッチ回避だ。

 

という訳で、気配を殺して家を出る。

メモを残していったのであいつらも起きて来たら食うことだろう。

まあ組員がぐーたらなのはいいことだろう。街が平和になる。

 

それにしても久しぶりの徒歩通だ。

なんか新鮮だ。

 

ところで、何か視線を感じる。

見渡すと結構な人がジロジロと僕を見ている。

これはあれだろうか。

ヤクザ者が珍しいのだろうか。

僕は見世物ではないのだ。

こっちみんな(゚д゚)

 

このまま見られ続けるのも癪なのでガンを飛ばす…

のは苦手なので一人とじっくり目を合わせることにする。

 

しばらくジーっと目を合わせ続けると相手は目を反らした。

フッ、勝った。

その上相手は少し震えている。

そうだろう。そうだろう。

ヤクザ者に目を付けられるのは怖かろう。

フフフ、怖いか?

 

それにしても我が組は有名である。

とうとう私まで組の者として街の人に覚えられてしまった。

また生き難くなってくる。

 

そんな風に取り留めなく考えていたら見知った顔を見つけた。

 

僕の中学からの同級生、もう幼馴染みといっても過言ではない小野寺さんである。

 

小野寺さんは可愛く清楚で優しいちょっとおっちょこちょいなところがある男の妄想を具現化させたようなお方である。

 

朝から小野寺さんに会えるとは今日は幸せだ。

何か今日は良いことがたくさんありそうである。

早起きは三文の得と言うが、寝坊助にも幸せは訪れるようである。

ともあれ、小野寺さんに話しかけよう。

 

 

 

「おはよう、小野寺さん」

 

 

「はひっ!いっいっ一条君?!」

 

 

………何か一気にテンション下がった。

小野寺さんはなんか変な声出すし、声震えてるし、体もビクッてなってたし。

 

あれか、僕はクラスメイトにもガチ恐怖されるようになったのか。

しかも、大天使小野寺さんにまで。

言っとくけどあれだかんな。

恐れ過ぎてハブるのはイジメと変わんないんだかんな。

泣くぞ。高校生にもなっていい年した男子が恥も外聞もなく泣いてやるぞ。

 

そう思ったが止めておく。

それをしてしまったら最後、僕の失うものが多いだけでなく、最悪なケースとして小野寺さんが家の者に殺されてしまう場合まである。

そんなことになったら悔やんでも悔やみきれないだろう。

小野寺さんに罪は無いのだ。

あるとしたら家のほうだろう。

それも、一つや二つではなく、実刑が。

 

 

 

「酷いな。小野寺さんは

いくら家がヤクザだからってそんなに露骨に怖がらなくてもいいじゃないか。」シュン

 

と目に見えて落ち込んで見せて罪悪感を煽るのである。

優しい小野寺さんには耐えられまい。

 

 

 

「かっ可愛い…

って、そうじゃなくて、急に挨拶されたからびっくりしちゃったんだよ。」

 

 

 

と焦りながら言う小野寺さんを見ると、効きすぎてしまったのだろう。

そのアワアワする可愛い姿を見るとほっこりするが、同時に罪悪感も湧いてくる。

 

それにしても僕が可愛いとな。

学校一可愛い方に言われるとなんだか自信が湧いてくる。

因みに、二番目は宮本さんである。

ちっちゃくて非常に可愛らしい。

本人に言ったらボコボコにされそうであるが。

ボコボコにされるのは集だけで充分である。

 

可愛さについて考えると確かに僕はそうかもしれない。

そういうとナルシストに聞こえるが、

僕は背が(宮本さんほどではないが)低めだし、顔も中性的だ。

少し格好を変えれば男の娘のようにもなるかもしれない。

そうと決まれば、可愛い路線も良いかもしれない。

可愛くあざとく女子のハートを狙い撃ちだ。

ハーレム王に僕はなる。

 

と、長いこと考えていたけど小野寺さんは何をしているのだろうか。

 

 

 

「…っていう訳だから別に怖がった訳じゃなくってね。えーっと。えーっと。」

 

 

 

…まだやってた。

流石にかわいそうになってきたのでそろそろ止めてあげることにした。

 

 

 

「クスッ、分かったよ小野寺さん。

もう大丈夫だから急がないと遅刻しちゃうよ。」

 

 

と言って

 

 

「その代わり。手ー繋ごっ!」

 

 

 

とさっき思ったことを有言実行し、手を握っ

てみると

 

 

 

「はわわわっ!あうえあ」バタッ

 

 

 

「ちょっ!小野寺さーーーん!」

 

 

 

小野寺さんが気絶したでござる。

慌てて抱えて学校に行くと、何とか遅刻せずに済んだ 。

それにしても、結局小野寺さんは僕が可愛かったから気絶したのか、あまりにもキショかったから気絶したのか、ヤクザ者に手を握られた恐怖で気絶したのかどうなんだろうか。

後の二つだったら嫌だ。登校拒否になる。

あれっ、何か後の二つの気がしてきた。

ヤバいなぁ。黒歴史追加だ。

 

 

 

しかし、小野寺さんの手は柔らかかった。

それを考えると収支はプラスかもしれない。

 

 

 




このオリ主はまだ貞操逆転に気付いていません。
なかなかイカれたオリ主です。


オリ主の容姿は一条楽とは変わっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。