イコセニ 作:中原 千
映画を見終えて僕らは街をぶらついていた。
あまりスケジュールを詰めすぎると疲れて楽しめない人もいるだろう。
桐崎さんは詰めても楽しめるタイプな気もするが、僕と一緒という気苦労も溜まっているだろう。
……自分で言ってて悲しくなって来る。
まあ、それも自業自得というたった四文字のもとに切り捨てられてしまう。
僕の心より桐崎さんのメンタルだ。
ここら辺で小休止が必要だろう。
「桐崎さん、僕ちょっとお花摘に行ってくる。」
と、一時退散だ。
……建前だったけど本当に行きたくなってきた。
……ふぅ、
近くにあったホテルのトイレを借りた。
ホテルのトイレは石鹸の設置率が高いし、掃除が行き届いているからオススメである。
何か飲み物でも買っていこう。
イギリス人だし紅茶がいいだろうか。
普段良いものを飲んでいて味が合わないかもしれない。
無難にジュースも買っていこう。
そして、桐崎さんを待たせていた所に行ってみると、
「てめえ、さっき肩ぶつかっただろうが!」
「慰謝料払えよ、オイ!」
何か不良に絡まれてた。
まだいるんだねあんなステレオタイプの不良って。
桐崎さんも困ってる。
うん、そうだよね。いくら相手がチンピラでも男だとやりにくいよね。
それにしても僕がいないときにこうなるってなんというか不幸である。
そんな思考をしながらも僕は縮地で距離を詰め、刹那のうちに路地裏に連れ込んだ。
まさかヤクザの跡取りの彼氏をもつギャングの娘に目をつけるなんて本当に不幸な連中である。
僕は、ニコニコ笑顔で言う、
「僕さあ、近くにある集英組って言うところの跡取りなんだけどさあ、今彼女とデートしてたのよ。
それでさあ、君たちは彼女に何の用だったの?」
急にブルブル震えてどうしたのだろうか、トイレに行きたいなら早く答えて行けば良いのに。
「あれっ?答えてくれないの?困ったなあ?
そういえば、困ったなといえばさあ、僕ねー今日いっぱいお金使っちゃってさあ……」
「それじゃあ……」
と、財布を取り出そうとする不良達を制止して満面の笑みで言う。
「腎臓ってさァ、二つもあんのなんか邪魔じゃない?」
ヒィっと顔面蒼白になる不良達にそろそろ許してやるかという気持ちが湧いてくる。
「まあいいや、そろそろ僕もデートに戻りたいし……
「後は僕の部下の優しいお姉さん達が引き継ぐから、僕はここら辺でお暇するね、バイバイ!!!」
僕と入れ替わりで龍達が入って来る。
不良達は安堵から一転して絶望の表情だ。
人生ってままならないね。
龍達には適当に脅かして後は解放するように言ってあるから最悪の事態にはならないだろう。
保証はしない。
まあ、ヤクザ者に絡んでこの程度なら彼らはある意味幸運だろう。
さあ、変なケチがついてしまったがデートを再開しよう。
ヤクザこわい(小並感)