イコセニ 作:中原 千
土曜日が祝日だと、何か損した気分になります。
へにゃへにゃになった桐崎さんを連れて店を出る。
会計は僕が済ませておいた。
もともと桐崎さんに払わせるつもりなんてなかったし、
変に揉めずに済んで良かった。
とはいえ、別に僕は"逆転なんて関係ない!会計は男が払うものだ!"なんて主義主張を持っている訳ではない。
払わせるつもりがなかったのは、純粋に払わせる必要がなかったからである。
僕は、転生前の経験を活かして株式投資をしているのだ。
資金は組の経営資金から、名義は組員からちょろまかしたのでかなり大規模に出来たため実は総資産の額は親父より僕の方が多かったりする。
因みに投資するならオススメは「フラワーコーポレーション」だ。
彼処は業績を伸ばし続けているため、投資初心者でも失敗しないだろう。
あの会社の社長は人外の類いだろう。
とにかく異常な成長率である。
……まあ、逆転したときに僕の稼いだ分はなくなったケド……
今回は普通に龍のキャッシュカードを使っている。
ゴタゴタしててまだ出来ていないが、儲けが出たらすぐ返すから許すのだ、龍よ。
というわけで、結局女にタカっている僕である。
「あれっ?!さっきまでご飯食べてたはずじゃあ?!」
そんなことを考えていると、桐崎さんがスタンから復帰した。
フムフム、桐崎さんにとって僕のナデナデは記憶が飛ぶほどの代物だったらしい。
ヤバい、面白い、これはハマりそうである。
どれどれもう一撫で……
いや、止めておこう。
僕は、このパターンで殺気を出しまくり、結果として桐崎さんに恐れられたのであった。自重しよう。
伸ばそうとした手を取り繕って僕は桐崎さんに話し掛ける、
「桐崎さんっ!次はドコ行く?」
「……どこでも。」ボソッ
おおっ!桐崎さんが顔を伏せて小さな声でだが、確かに会話をしてくれた。
やはり、僕らの関係は着実に修復されている。
しかし、桐崎さんに希望場所はナシか……
じゃあ、次も僕がよく行く所で良いか、
「桐崎さんはどれが見たい?」
僕らは今、映画館にいる。
やはり、デートコースを考えるより、普段行く場所の中からデートコース寄りの場所を探す方が考えやすい。
「……これ……」
と、桐崎さんが指差したのはトランスフォーマー的な奴である。
中々面白そうではないか。
そして、映画を見ている僕らであるが、
モシャモシャ モシャモシャ
桐崎さん、まだ食うんスね……
ファミレスであんなに食べたばっかりなのに超デカイポップコーンを食べている。
何処に売ってたのソレ?というかよくソレ商品化したよね。店主チャレンジャー過ぎない?
というかアレだよね。桐崎さんって割りと大物だよね。
僕に対して死の恐怖を感じているはずなのに結構遠慮ないよね。
逆転してるから僕にはドンピシャだけど、この映画のチョイスって完全に(あべこべ世界の)女子向けだし、何より食べる量半端じゃないよね。
もしかして、僕ってあんまり怖がられてない?
……死の恐怖によるストレスを食欲に変換してる訳じゃないよね?
……このまま思考を続けると落ち込みそうなので良作っぽいし映画に集中しよう。
後ろの席で、キスだチャンスだ手を握れだの騒いでた客も清光で気絶させたし快適に見ることが出来るだろう。
それにしてもマナーの悪い客だった。
きっとどっかのチンピラだろう。
映画館ってついつい食べ物買いすぎちゃいますよね。
作者はチュロスとココアが定番です。