イコセニ   作:中原 千

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ようやく原作でタイトルのニセコイが回収される場面までたどり着きました。

まだまだこれからですね。


第12話

「あーっ!桐崎さんだ!

君がボスの娘さんだったんだね!ニセモノでも恋人になれてスッゴく嬉しいよ!!!」

 

 

僕はキャピッとでも効果音が着きそうな様子で喋る。

可愛い白さん再登場である。

 

小野寺さん相手に通用しなくなってから控えていたが今回は特別だ。

 

ノリノリ感を出すのに最適なのである。

 

……だから、提案に乗ったのだから親父よ、笑うんじゃない。

これは、親の前でやるの結構恥ずかしいのだ。

しかし、こんなことではへこたれない。

僕は面白い事の為には全力なのである。

 

 

ほら、ボスさんを見たまえ、とても優しい顔でニコニコしている。

ボッスンと呼んだら怒られるだろうか。

いや、この場合はお父様が最適解か。

 

 

 

「おうなんだ、もう面識あるみてェだな。」

「同じ学校に転入したからね。」

 

 

 

ほほう、お父様の差し金でしたか……

 

グッジョブです。

 

そして親父よ、いい加減笑い終われよ。

お父様あんな落ち着いてんじゃん。

僕が普段と違い過ぎるってのは分かるけどさあ……

 

 

「プフフ、クフゥ改めて、クハァ、紹介だ、白。

こいつがギャング組織"ビーハイブ"のボス、

アーデルト・桐崎・ウォグナーと桐崎千棘お嬢ちゃんだ。」

 

 

よかった。漸く親父も落ち着いたようだ。

 

 

「不束者ですが宜しくお願い致します。ウォグナーさん。

……お父様とお呼びしても?」

 

 

 

前の世界で見ていたアニメや漫画のお嬢様の姿を思い浮かべる。

不自然な所はないだろうか。

付け焼き刃だから多かれ少なかれきっと不自然さはあるだろう。

 

 

「君の事はお父上から聞いてよく知っているよ。

聞いていた印象よりずっと良い子に見えるけどね。

よろしくね白君。」

 

 

どうやら僕は英国紳士のお眼鏡に適ったようである。

恐悦至極だ。

……それにしても親父は僕の事をなんて紹介したんだろう。

絶対余計なこと言ってそうである。

 

 

僕がはち切れんばかりの笑顔でお父様と話している時、

桐崎さんはと言うと、

 

 

「ムリムリムリムリ、

こいつと恋人同士なんて絶対ムリ!!

私、殺されちゃう!!!」

 

 

 

 

……おっふぅ、

なるほど、桐崎さんは僕に殺気を向けられて以来命の危機を感じながら過ごしていたんですね。

だとしたらスゴいっすわ桐崎さん。

よく飼育係サボんなかったな。

変なところ律儀ですね。

 

 

……サボったら殺されると思ってた訳じゃないよね。

 

 

 

 

それはそうと、これからは桐崎さんとの接し方を見直すべきである。

恒常的に命の危機を感じる環境はヤバい。

下手すると禿げる。桐崎さんが。

あべこべ世界だから前程のダメージはないだろうが、

女の子にスキンヘッドは申し訳なさすぎる。

 

差し当たって、殺気キャンセルは封印だ。

言語道断過ぎる。

 

 

 

 

 

 

ムム……

もう桐崎さんを弄るとかそういう段階じゃなくなってきた。

僕はどうすれば良いんだろう?

か弱いアピールでもしてみようか。

 

 

……出会い頭に地面に叩きつけたんだった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に割りと迷走した考えをしていると、

 

 

「千棘、白君にそんなこといっちゃいけないよ。

そう言われる辛さは君もよく知っているだろう。」

 

 

……お父様の言葉で心が痛い。

ちゃうんすよ。その娘は偏見で言ってる訳じゃないんですよ。

実際に死を感じてるんですよ。

お宅の千棘さんは真っ直ぐな良い娘さんなんですよ。

 

 

「そうだけど……」

 

 

「それに、このままじゃあちょっとマズイ事になっちゃってね……」

 

 

 

「お嬢ーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

お父様の言葉が終わらないうちに爆音と怒声と共にゾロゾロとスーツの集団が入ってきた。

 

僕は飛んできた瓦礫を刀で受け流す。

 

 

「……見つけましたよお嬢……

集英組のクソ共がお嬢をさらったというのは本当だったようですね……」

 

 

 

 

 

……いや、そのお嬢はアンタが爆弾で飛ばした瓦礫で怪我しそうだったんだけど……

 

 

 

 

「ク……クロード!!!」

 

「ご安心下さいお嬢……」

 

 

イケボの爆弾魔は何か桐崎さんと話始めた。

 

完全に誤解してるけどこれ、部下に連絡回ってないのかよ。

 

 

つうか、僕の家は派手に壊されたものである。

修理にいくら掛かんのかなこれ?

そして、果たして誰持ちだろうか?

 

 

 

 

 

「大丈夫ッスか?!組長!!!坊っちゃん!!!」

 

 

 

 

 

あっ、龍達も来た。

 

 

 

「今回のはちょっとお痛が過ぎるッスよ。

今までは手加減してやってたッスけど、今度という今度は許さないッスよ!!!」

 

 

「ふん……猿共が……

お嬢に手を出したらどうなるか教えてやる……」

 

 

ああ……

なんかこのまま全面衝突しそうだ。

 

 

 

僕はスタスタと桐崎さんの前に行き、

 

 

 

「下がれ、龍……」

 

 

殺気を全開にして言う。

これでうちの組員とギャング達の意識を此方に持ってこれるはずだ。

場所取りは桐崎さんを範囲外にするための配慮である。

 

 

 

 

 

「ですけど、坊っちゃん……」

 

 

 

 

 

ギロッ「龍、これはお願いじゃない、命令だ。」

 

 

 

 

 

「はっ!はいッス!!!」

 

 

 

 

 

龍達が下がった。

これで誤解を解きやすくなっただろう。

 

「あーーー君君、

ちょっと誤解してるんじゃないかね、若ェの。」

 

 

親父が暢気に話し掛ける。

流石親父、空気の読まなさはピカ一だ。

 

 

 

 

 

「嬢ちゃんをさらったなんざとんでもねェ誤解だぜ?

なんせ……」

 

 

 

 

 

「こいつらァラブラブの、」

 

 

 

「恋人同士だからね。」

 

 

 

 

 

 

前半は親父、後半はお父様。

息ピッタリっすね、練習したんすか?




作者は原作のこの回での怒濤の顔芸に衝撃を受けた記憶があります。

登場人物の表情が浮かんで来るような文章を書けるようになりたいです。

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