この素晴らしいゆんゆんの幼馴染になってイチャイチャしたいだけの人生だった 作:孤高の牛
「よし、作戦はこうだ」
ぶっころりーの部屋でチェス駒を使いながら作戦を立てている。
前世のアニメとかで憧れたよなあと思いつつも、絶対こんな場面で使うのは本望じゃないと思うのは必然だろう。
ちくしょうめ。
「まずぶっころりー含む遊撃隊三人で撹乱を行う」
白いナイトの駒を遊撃隊に見立て三体、黒いクイーンの周りに立てる。
黒いクイーンは言わずもがなゆんゆんである。
「……三人か」
「ああ、ゆんゆんはこの里の中でもかなりの強さ……となれば量よりお前が組んでるトライアングル何とかの三人の連携の方が戦力になる。まあ役割は核になるめぐみんと俺のとこへの誘導係だけどな」
「トライアングルスターズな」
名称はさておき魔王軍の一個中隊を三人だけで壊滅させた伝説のチームだ、ニートとはとても思えないがこんな優秀でもニートだからモテないんだと思う。
因みに他の二人は彼女持ち、ゴリマッチョのゴリーさんと計算高い眼鏡を掛けた七三分けインテリのグラサンさん(通称グラさん)だ。
顔だけなら間違いなくぶっころりーが一番良いのは二人も認めているだけに余りに残念イケメンである。
「まあなんだ、今回はゆんゆんを力でねじ伏せるんじゃなくあくまで正気にさせるのが目的だ。パワーだけなら魔王軍の大隊を殲滅させたりっきーさん率いる『パワーイズジャスティス』のパワー軍団だが小回り、奇襲、足止めが必要な今回それを出来る小隊且つ連携の一番高いぶっころりーの…何だっけ?トライアウトスターズ?」
「トライアングルだっつってんだろ!! ボケたのか!? ボケてるのか!?」
「あーそれそれ、トライアングルスターズが一番向いてるって話な」
原作でも紅魔の里はトンデモ民族で魔王軍幹部なんて何回も退けてきたとか言われてた気がするが、正直こっちの紅魔の里はそれ以上にヤバい、ヤバいったらヤバい。
良く分からん間に魔王軍幹部が何人か遺影になっている、この里のせいで。
但し原作の幹部連中でも無かったからもしかしたら原作より魔王軍は大規模なのかもしれないが何なんだコイツら……王都の正規軍の何倍強いんだよ。
そしてそんなやべー奴らの中でもかなり強い奴らを誘導係にする贅沢さよ。
いや俺もちょくちょく魔王軍と小競り合いやってるけど、周り半端ないって。
嬉々として笑顔で爆発魔法使ってるヤツとかいるけど真面目にホラーというかスプラッターだからな……ほとんどの犠牲者がゾンビ系でよかった。
俺とめぐみんに見立てたポーン(俺)とビショップ(めぐみん)のところに先程の四つの駒を動かしながら改めてヤバい場所に生まれたと実感する。
俺もそのヤバい民族の一人のはずなんだけどなあ、おかしいなあ。
「ごほん。それで、俺達の役割はゆんゆんを誘導した後はどうなる?」
「めぐみんのガード役だな、ゆんゆんは間違いなくめぐみんの詠唱を狙ってくるからその魔法を打ち消す事に集中してもらいたい」
めぐみんを生贄にする作戦とはいえ怪我をさせるなんてあったら絶対にいけない。
そう、まあ、一応、一応ではあるが妹みたいな存在な訳だし、ゆんゆんの親友だからな。
ちょっとビビらせるだけだ、あくまでも。
「しかし良いのか? めぐみんをこの作戦会議に出さなくても」
「アイツは今回の元凶だからな……ちょっとだけビビらせる算段って訳よ。お前らの事信用してるし」
「お、おう……」
何か引かれた気がするが無視しよう。本当ならゆんゆんと合法的にキスして一件落着……って言うちょっと甘酸っぱい思い出が作れたんだからその代償に絶叫アトラクションしてもらうだけなんだから寧ろ寛大と言われて然るべきとまで思っている。
要約するならめぐみんが悪い、俺は悪くねえ。
「よう、何だか大変らしいな」
「いや~ごめんね、準備に手間取っちゃって」
「ゴリーさん、グラさん! 待ってた……っていやいやいやいや!?」
そんなこんなで先に作戦情報をぶっころりーに伝え終えると同時に他のメンバーのゴリーさん、グラさんが到着した。
準備に手間取ってたとは言うがそんな用意してくる必要あったのかと突っ込みたいのを抑えたが更に二人の手に持ってるモノを見て流石に抑えきれなくなった。
「ん?どしたよ」
「何か問題あったかな?」
「大問題だわ!! 二人が手に持ってる!! その明らかにやべー物体が!!」
「やべー物体っても、ただのドス(剣)だが?」
「同じく、見慣れてるチャカ(魔法銃)だけど」
二人がさも当然の様に答える。
しかも爽やかな笑顔付きである、なんて眩しい笑顔だろう。
勿論だが俺は頭を抱えたのは言うまでもない。
「全く二人は……ゆんゆんを殺すつもりかと思ったわ! 紛らわしい!」
「ハハハ、すまんすまん」
「でもやっぱり、コイツを持ってないと気合いが出なくてどうもね」
この二人、実は日本からの転生者のヤクザと知り合いらしく物騒な用語を良く使う。
実際魔力も戦闘力も高い二人だが鬼に金棒とはこの事かと言うくらいにはイキイキと恐ろしい笑顔で使うから日本で遭遇したらまず『本職』を疑うレベルの怖さである。
まずなんでヤクザがこっちに転生してきてるんてすかね……というのは言わない約束、禁則事項。
取り敢えずこの二人も紅魔族の例に漏れず頭のネジがぶっ飛んでるやべー奴ら、という認識で差し支えない。
「下手に振り回したりすんなよ!? いやフリじゃないからね!?」
「わーってるよ、その辺間違える様な奴に見えっか?」
「グラさんならともかくゴリーさんはちょっと……」
「なん……だと……」
「ふっ」
「オイグラ今笑っただろ!? 笑ったよなあ!?」
「あー、それよりお前ら早く行かなくていいのか?」
ぎゃーぎゃーと茶番をして、ぶっころりーに突っ込まれる。
意外とグラさんもボケの立ち位置にいるせいでぶっころりーが原作基準で見違えるくらいにしっかりしてるというか、ツッコミポジションに収まる事も多々あったりする。
それはともかくとして、三人には感謝しかない。
ぶっころりー達がいなかったらめぐみんに無理をさせる事も危険過ぎて出来なかった。
「それもそうだな……三人とも、力貸してくれてほんとにありがとな」
「礼を言うにははえーぞ」
「終わったらパーっとどっかで打ち上げでもしよう、めぐみんとゆんゆんも入れてね」
「ククク、終わったら俺のラブコール大作戦に付き合ってもらうからな」
「……ああ、そうだな!」
……ほんと、コイツらは優し過ぎるくらい優し過ぎだっての。
「さ、とにかく善は急げだ、そうと決まったらさっさと助けに行くぞ!」
かくしてめぐみんを除く俺達四人は更に絆を深め一致団結したのだった。
これでもう怖いものはねえ!
「いやいやいや怖すぎですから!! 無理無理無理無理!!」
道中、遠くにゆんゆんを発見した時のめぐみんの発言である。
当たり前だがめぐみんとは一切打ち合わせをしていない、ゴリーさんグラさんに関してはめぐみんとの合流前に既にぶっころりーが伝達済み、それだけで完全把握しているのだからやはり熟練のエリート軍団だと再確認させられる。
因みにめぐみんやゆんゆん等学園所属の生徒は本来魔王軍との戦闘には参加していない、という訳でめぐみんは里随一の天才エリートではあるが実戦経験は少ない。
というかコイツに関しては一発ドデカい花火ぶっぱなして終了だからまともな実戦もクソも無いと思うが。
まあ本来ならかわいそうだしやめてやってもいいが……今回は話が別だ。
「めぐみんくん……今回の元凶は誰かね」
「……私です」
「いの一番に逃げたのは誰かね」
「……私です」
「よし、ならやろう!」
「……」
「なーにぶっころりー達が守ってくれるし心配無い無い、当たっても死にはしないし」
「当たりたくもないですよ!?」
遠目に血眼になりながら辺りを見渡すゆんゆんがいる中で実に和やかな茶番劇である。
と、ネタばらしをするならばこれは霧隠れの魔法をグラさんが使ってるからであり、相手の視界は遮ってこっちは知覚可能という半分チートみたいなものである。
この為にゆんゆんは立ち止まり辺りを見渡している……というデンジャラスな構図の中無駄話も出来てるという訳だ。
「めぐみんちゃんはただ無心で爆裂魔法の詠唱しててくれたらいいから、俺達の事信じてくれないかな?」
「うぐっ……」
そしてめぐみんはグラさんに弱い、というかグラさんがチビッ子に対して滅法強い。
将来子煩悩な父親間違い無しとはゴリーさんの談、里での評価も高いが許嫁持ちだったりもする。
「フッ、大人しくしていればまず当たる事は無い。魔王軍と戦い勝ちを収め続けた百戦錬磨の俺達に任せておけ」
「だはは、まあそういうこった! ……それに、めぐみんだってゆんゆんの事、助けたいだろ?」
「それは……そうですけど……」
うーん、やっぱりこう見ると三人とも紅魔の里のやべー奴らには見えないんだがなあ……
まだまだ子どもなめぐみんの本音をこうも引き出すのは俺でも難しいし。
「じゃ、パパっと行こうぜ。いざとなったら俺が盾になってやる」
「らんらん……」
「……そろそろ霧が晴れる、めぐみんとらんらんの二人は待機。僕達三人でこっちまで誘導してくる」
と、呑気な事も言ってられなくなったか。
さあ、腹を括らないとな……めぐみんも、そして俺も。
「了解! ……頑張ったら甘いもん奢ってやるから頑張れよめぐみん」
「……あ、甘い物があるというなら? や、やってやろうじゃないですか!!」
良くも悪くもこういう空気の読めなさに救われてきた。
今回も、横目で見守りながら、三人の到着を待つ。
決戦は目の前だ。
年号が変わり、暑い季節になりましたね
世間では苦しい、悲しい事件があり俺の大好きなものやそれに携わってくれた多くの人が亡くなり、今でも気を抜いたら泣いてしまう、そんな精神状態にあります
ですがせめて少しでもこの作品で心が救われる、笑えた、そんな人がいてくれたらそれに越した喜びはありません
漫画、ラノベ、アニメはいつも風当たりの強い趣味や業界ですが、それでも何十年も栄え生き残って来た、少しずつ認められてきた
きっと今回も、時間は掛かっても持ち直してくれると信じています
俺らが愛した業界がそう簡単に終わる訳が無い、そう信じています