ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

いよいよ四月。新しい生活の始まりですね。


【第54話】金色の戦士VS金色の魔法使い

 

 

「さぁ、さっさとやろうぜ」

 

 

 自分に向かって『マスタースパーク』を撃ち込んだ魔理沙。普通ならただの自爆行為に過ぎないが、目の前の魔理沙にはそんな様子は見られない。

 ところどころ癖っ毛のように跳ね上がった髪、光り輝いているが決して眩しくはない〝気〟、そして〝気〟以上に輝いて見える眼光。その全てが、今の魔理沙は先程の魔理沙とは違うという事を表していた。

 

 

 

「なるほど…それがきさまの出した答えか」

 

 

 魔法と気。その2つを混ぜ込み、魔理沙は新しい境地である『気魔法(きまほう)』というものを作り上げた。なんとも単純なネーミングだが、それ故にわかりやすい。

 

 ベジータは光り輝く魔理沙が、自身たちの『スーパーサイヤ人』と若干重なって見えた。あくまで見た目だけの話だが。魔理沙は『自分を強化する』と言っていたが、その内容についてまだ理解はできない。

 確かに〝気〟は先程の数倍大きくなったが、それだけではまだ今の自分には届かない。それがベジータには気がかりだった。

 

 

「構えろベジータ。そろそろ行くぜ?」

 

「チッ…大口を叩きやがって!」

 

 

 トントントンっと小ジャンプをしながら、魔理沙は構えている。金色の〝気〟は揺れる魔理沙と共にユラユラと不気味に動いていた。

 

 ベジータは魔理沙に言われた通りに構える───はずもなく、予備動作をほとんど無しにして、一瞬で魔理沙の後ろに回り込んだ。それも最初とは比べ物にならないほどのスピードで。

 だが、今の魔理沙には()えていた。ベジータのパンチを左手で上手く捌き、さらに腹部へ蹴りを入れた。

 

 ベジータはその蹴りを食らい後方へ吹っ飛んだ。しかし魔理沙には、ベジータに殆どダメージがないことをわかっていた。蹴りの威力で吹っ飛んだのではなく、ダメージが減らすために自ら後方へ下がっていたからだ。これはベジータの戦闘経験があって成せる技だろう。

 

 

「フン…少しはマシになったようだな」

 

「驚くのは…これからだぜッ!」

 

 

 今度は魔理沙から仕掛ける。

 右へ左へとステップを踏みながらベジータに近づいていく。魔理沙が地面を踏むたびに、地面がブゥゥン!と反応していた。

 

 迎え撃つベジータは、両手を前に出し『気弾』を連発する。だが魔理沙は目にも留まらぬ『気弾』の嵐にも全く引かず、小さな隙間をくぐり抜けベジータの前に出た。

 

 そして両手を前に出し右手首と左手首とピタッとくっつけ、手をパカっと開けた構えをとる。まるでベジータの『ファイナルフラッシュ』のように。

 

 

 

 

「食らいやがれ!『マスターフラッシュ』!!!」

 

 

 

 

 凄まじい轟音と共に、激しい光がその場を包み込む。同様に光輝いていた魔理沙自身ですら眩しくて目を瞑ったくらいだ。

 

 

「(これならッ───!)」

 

 

 手応えあった、と魔理沙は右手の拳を握り締めてガッツポーズをした。

 

 これで倒し切れたとは思っていないが、ある程度のダメージは与えられたと確信していた。それ故のガッツポーズだ。

 

 しかし相手は百戦錬磨のベジータ。一瞬の油断が命取りになるとわかっていた魔理沙は、すぐさまガッツポーズした手を前に出し、構えた。光と爆風の中からくる奇襲に気を張っているのだ。

 

 

「……」

 

 

 爆風が晴れた。魔理沙は集中力を最大限にまで高める。

 

 

「……(妙だな)」

 

 

 魔理沙はある異変に気付いた。

 

 それは中々光が消えないからだ。それは自分の撃った『マスターフラッシュ』の威力を物語っているのもあるが、それにしても未だに眩しいのはおかしいと考えたのだ。

 この状態での『マスターフラッシュ』は練習として何度か放ったことがあるが、ここまで眩しさが持続したことは一度もなかった。

 

 

「……まさか!」

 

 

「その…まさかだ」

 

 

 

 シュインシュインシュインと聞き慣れない音が響く。

 するとその光の中から自分と同じように光り輝く男が現れた。金色の髪、そして金色のオーラを纏ったベジータがそこに立っていた。

 

 明らかに先程までとは違う。胸を突くような嫌な予感を、魔理沙は肌で感じ取っていた。

 

 

「…すごいな。これが(スーパー)サイヤ人ってやつか」

 

 

 魔理沙は霊夢に『(スーパー)サイヤ人』のことを聞いていた。

 しかしそれはあくまでそういう存在があるというだけで、具体的な事は聞いていなかった。いや、聞いていないというより聞いても霊夢が答えてくれなかったのだ。その時は、どうせいつもみたいに説明するのを面倒くさがったんだなと思っていたが、そうではないと今確信した。

 

 

 独特な雰囲気。

 圧倒的な威圧感。

 研ぎ澄まされた闘志。

 

 

 この全てが言葉で表せる代物ではない。実際に目で見ないとその本質が理解できないものだった。

 

 

「独学だけど…私も〝気〟を使ってるからわかる。ベジータ、お前はとんでもなく強い」

 

「当たり前だ」

 

 

「まあ当たり前なんだけどさ…それでも強いんだよお前は」

 

 

 魔理沙は本当に当たり前のことを繰り返す。内心興奮しているのかもしれない。

 

 

「フンッ…なんだ何が言いたい?」

 

 

 魔理沙は手で顔を覆い、そしてそのまま顔を下に向けた。敵を前にして、それも自分相手にとっているその余裕をベジータは気に入らず、一撃で終わらせようと動こうとしたその刹那、魔理沙の様子がおかしいことに気づいた。

 

 

「何を笑っていやがる…」

 

「いやぁ…そんなに強いお前を倒せるのが嬉しくてな」

 

 

 魔理沙は笑っていた。ククク…とまるで可笑しいものでも見るように。

 理由はわからないが、魔理沙はベジータに勝てると確信していたのだ。

 

 

「くだらん過信だ。本当に勝てると思っているならお笑いだぜ…オレが一瞬で終わらせてやる!」

 

 

 ボゥッ!と〝気〟を高めたベジータが、魔理沙に向かって飛んでいった。本当に一撃で決める気のようだ。魔理沙はカッと目を見開いて横へ大きく動いて回避した。

 ベジータは動いた魔理沙を見逃さず、すかさず距離を詰めて攻撃しにかかる。

 凄まじい威力の打撃だが、魔理沙は打撃を受ける場所に『気魔法』を込めてなんとか防ぐ。しかしそれでもベジータが押していることには変わりない。

 

 

「痛ぅ〜…!」

 

「(こいつ…なんだ?)」

 

 

 確かに魔理沙は先程自分を強化し、攻撃力、防御力、スピード共に段違いになった。カラダに負担がある強化法だろう。

 しかし、それすらも(スーパー)サイヤ人になったベジータには及ばない。それを魔理沙自身わかっているだろうからこそ、ベジータは魔理沙の余裕の理由がわからない。

 

 

「チッ…食らいやがれーっ!」

 

「なッ!?」

 

 

 攻撃を繰り返してる内に、魔理沙に大きな隙ができた。その隙をベジータは突いた。

『気功波』を放ち、魔理沙はそれをモロに食らって物凄い勢いで吹っ飛んだ。魔理沙は森の中心部に存在する湖に、大砲のような音を響かせながら落ちていった。

 

 ベジータは魔理沙を吹っ飛ばした後、すぐに湖まで追って魔理沙の様子が見る。彼女は「ゲホッゲホッ!」と水を吐きながら陸へ上がってきているところだった。

 

 

「はぁ…はぁ…さすがの私も今のは死ぬかと思ったぜ…」

 

 そう言いながらも魔理沙は笑みを浮かべている。反対にベジータにイライラが隠しきれていない表情だ。

 

 

「魔理沙!まさか…きさま手を抜いているつもりじゃないだろうな!」

 

 

 そうとしか思えない。いや、もう1つ可能性があるとしたらそれは魔理沙が見栄を張っているという事だ。スーパーサイヤ人になった事により、実力が違いすぎると思った魔理沙が見栄を張っていると考えたら、可能性はなくもない。

 

 

「手を…?馬鹿言うな!私はいつだって本気だッ!」

 

 

 魔理沙は本気で怒る。これを見る限り手を抜いていると言うわけでもなさそうだ。ベジータはさらに訳がわからなくなってイライラが止まらない。

 

「もういい!これで終わりだッ!」

 

 

 怒ったベジータは空中に飛び、ある程度の高さから魔理沙を見下ろした。そして右手を下にいる魔理沙に向け、〝気〟を高め始めた。『ビッグ・バン・アタック』を撃つつもりだろう。

 

 下にいる魔理沙もこの攻撃はまずいと感じ取っていたが、カラダが重くて動かない。

 

 

「ここら一帯吹き飛んでしまえーっ!!!」

 

 

 そしてベジータの『ビッグ・バン・アタック』が放たれた。勿論全力ではない。全力だと魔理沙どころか、だいぶ離れた所にあるアリスの家まで吹き飛んでしまう威力になるからだ。

 だから今の魔理沙がダウンするくらいの威力で放った。それでも凄まじい威力であり、魔理沙が今まで見たことのないほどの攻撃という事には違いないのだが。

 

 動けない魔理沙は迎え撃つ事もせずに、魔法を使ってバリアーを張って攻撃を凌ごうとした。しかしベジータの攻撃はあまりにも強く、大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン…くたばりやがったか」

 

 

 爆風が晴れるとそこには倒れ込んでいる魔理沙の姿があった。もう金色の光を放っていないが勿論生きている。そう手加減したからだ。

 仰向けになった魔理沙の側にベジータが寄り、抱えようとしたその瞬間───

 

 

 ズドンと大きな音が響く。鈍い音だ。その音の正体は───

 

 

「ぐ…あああ…!」

 

「油断…大敵だぜッッッ!」

 

 

 拳打。

 

 魔理沙の拳打がベジータの腹を襲った。不意を突かれたベジータは膝をつき、その隙に魔理沙がベジータのこめかみに蹴りを入れて吹っ飛ばした。

 

 

「はぁ…はぁ…ホントに…間に合ってよかった(・・・・・・・・・)

 

 

 魔理沙はユラッとバランスを崩しながら立ち上がった。満身創痍なのは間違いないようだ。

 

 

「きさまぁ…!その〝気〟は…!」

 

 

 尻餅をついたまま、ベジータは気づいていた。

 魔理沙の〝気〟がさっきの光り輝いていた状態より何倍も膨れ上がっていた事に。その見た目は先程のように黄金の光は消えていたが、白く薄い光を僅かに帯びていた。

 

 やっと気づいたか、と魔理沙もベジータに向かってニカっと笑う。

 

 

「そうだ!さっきの光ってた状態はまだ完全な状態じゃない!いわば〝充電中〟みたいなもんだ!」

 

 

 光り輝いていた状態の魔理沙でも、既に強くなっていた事は確かだった。しかしそれはあくまで〝途中過程〟のようなもの。完全な状態になるには時間が必要だったのだ。

 しかし魔理沙は今までこの完全な状態になった事はなく、どれほどの時間を要するのかもわからなかった。だからあえて(・・・)ダメージを受け、自分を満身創痍にする事で〝カラダを急がせた〟のだ。

 

 

「へ、へへ…悪いな。私みたいな凡人には時間がかかるんだ…!だけど…これからだぜベジータ!」

 

  「魔理沙…!」

 

 

 なんとも不便な強化方法だ。

 自分を『気魔法』で攻撃しスイッチを入れ、敵からの攻撃を食らい充電する。こんなもの完全に強化する前に倒されてしまう可能性の方が高い。

 

 だからこそだ。

 だからこそ魔理沙の本気が伝わってくる。一か八の賭け。ベジータに勝とうとするならそれくらいはやらなければ太刀打ちができないと考えていたのだ。

 

 勿論、充電中の状態で倒すことができればそれが一番良かったが、それはベジータが(スーパー)サイヤ人になった瞬間に諦めた。格が違いすぎたからだ。

 あの笑みもベジータをイライラさせ、大技を出させるための囮にすぎなかったのだ。もっとも一つ間違えたら自分がそれで倒されていたが。

 

 

 欲を言うなら───

 

 魔理沙は今の不意打ちでベジータを倒したかった。そして「戦闘中に油断をするな!」と言いたかったが、ベジータが想像以上にタフなのでそれは叶わなかった。

 

 

 

「さあ!さっさと…おっと、かかってこいよ!」

 

 

 魔理沙はもうフラフラだ。カラダは強化できたが、いかんせんダメージを負いすぎた。どんなに強くてもダメージを負ったら戦えなくなるのは当たり前だ。

 

 

「ククク…そこまでやるとはな」

 

「そこまで…だと?」

 

 

 ベジータがフラフラとしている魔理沙を鼻で笑って挑発すると、魔理沙は眉間にしわを寄せてベジータを睨む。

 

 

「わかってないな…ここは幻想郷だ。お前は外来人だからわからないだろうけど…お前みたいな奴はここには居ない。だからお前が帰ったら私はこの気持ちを誰にぶつければいい…?」

 

 

 魔理沙の声は震えながらも力が篭っている。ためていた本音を吐き出しているのだ。

 

 

「ベジータ、お前にとっては私は数ある戦いの1つなんだろうけど…私にとってはこれは間違いなく生涯最高の戦い(・・・・・・・)なんだッ!全部を出し切って何が悪いッ!」

 

 

 魔理沙は感じていた。

 

 もうこんな戦いは一生味わえないと。ここで妥協したら死ぬまで後悔すると。死ぬ前に『あの時ああすればよかった』と思うような人生はまっぴら御免だ。

 

 霧雨魔理沙は今を全力で生きる〝普通の人間〟なのだから。

 

 

「…いいだろう」

 

 

 ベジータは小さくそう呟いた。魔理沙はその言葉が何を意味するのかわからない。

 

 

「オレの全力をみせてやろう…!」

 

 

 命を賭けて本気で向かってくる魔理沙に、何か思うことがあったのだろうか。ベジータはカラダの力を抜き、静かに前を見据える。前、つまり魔理沙だけを。

 

 

 

 

「はああああああッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 風のように静かだったベジータの〝気〟が、急に嵐のように爆発した。地面は割れ、木はなぎ倒され、湖の水は震えている。

 

 

 

 

 そして次の瞬間───

 

 

 魔理沙は目の当たりにした。

 (スーパー)サイヤ人を超えた(スーパー)サイヤ人を。




はい、第54話でした。

実はこの戦いは予定にはありませんでした。しかし、ベジータと魔理沙という存在に近しいものを感じ、急遽入れる事にしました。後悔はしてません。

ではお疲れ様でした。

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