ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

やっとこさ第5章の開幕です。


【第5章】危険な存在
【第53話】天才ならざる者


 

 

 

 ベジータと霧雨魔理沙、双方とも不気味な笑みを浮かべながら向かい合っていた。ベジータが初めて幻想郷に来た日と同じように。

 

 あの時の魔理沙はベジータに対して特になにも思っていなかった。しいて言えば『ああ、また外来人が来たのか』くらいで、まさか自分とは比べ物にならないほどの実力者などとは考え至らなかった。

 

 しかし今は違う。チャレンジャーは自分だと理解している。その中で、魔理沙は冷静にベジータを分析しようとしていた。

 今ベジータは上半身が裸になっており、逞しい筋肉を露出している。この筋肉からしてまず普通の者とは思えない。筋肉があれば強いという事でもないのだが、ベジータのこの筋肉は長年鍛え上げて来た成果だという事に魔理沙は気づいていた。

 

 

 

 

 ───しかし、ここまでだ。

 

 

 

 眼で見ただけの情報などたかが知れている。1度戦った事があるといっても、あの時のベジータはとてもじゃないが実力を出し切ってはいない。魔理沙の分析はここでストップした。今の所は、だが。

 

 

「(〝アレ〟は最初からは使えない…先ずは様子見からだ!)」

 

 

 魔理沙は戦いながら分析を進めると決めていた。ひとつひとつの攻撃から、何か自分が有利になれるようなモノを探し出そうとしていた。

 

 

 

「構えろ魔理沙、いくぞ」

 

 

 

「…ッ! 疾ッ…」

 

 

 言われた通りに構えたその刹那、ベジータの姿が消えた。それを魔理沙は眼で捉えきれなかったが、背後に回ったベジータの影だけが眼に入り、ギリギリで攻撃を躱す事ができた。

 

 一瞬、ほんの一瞬だ。

 避けるタイミングが早過ぎたら攻撃の軌道をずらされて倒されていた。逆に遅過ぎたらそのまま攻撃を喰らい、倒されていた。

 運が良かった魔理沙はその2つの危機を回避し、5m、10mと距離をとり直した。

 

 

 

「(あッ…危なかった… 『力の封印』だって?そんな影響何処にあるんだ!)」

 

 

 あまりの疾さに魔理沙は眼を見開いて驚く。以前より確実にベジータは疾くなっていた。いや、ベジータが疾くしていたのだ。今のベジータは、あの時よりも霧雨魔理沙という人間に対し、『戦うべき相手』として認識を強めている。その認識の強さが、スピードを疾めさせていたのだ。『力の封印』をした分、本気になってもすぐに勝負がつくことはないとベジータはわかっている。

 

 つまり以前のベジータは〝全力だったが本気ではない〟が、今のベジータは〝全力ではないが本気〟であるのだ。魔理沙が驚くのも無理はない。

 

 

「…この程度で面を食らっていてオレを倒すとは笑わせる。きさまはこの程度なのか?」

 

 

「!! ……何言ってるんだ。まだまだこれからだぜッ!」

 

 

 

 今度は魔理沙がベジータに襲いかかった。大量の弾幕をベジータの全方位へ撃ち込み、ベジータが避けきった先へと猛スピードでちかよった。

 

 

「喰らえッ! 「恋符《マスタースパーク》!!!」

 

 

「フン」

 

 

 

 虚をついた攻撃のつもりだったが、ベジータはそれを見透かしていたと言わんばかりに悠々と躱した。

 その瞬間、魔理沙に小さな動揺が生まれたことをベジータが見逃すはずもなく、背中へ蹴りを入れて吹っ飛ばした。

 

 クルクルと回転しながら魔理沙は木にぶつかり、その際に頭を打って倒れ込んだ。自慢の帽子もヒラヒラと風に揺れながら地面に落ち、勝負が決まったかと思われたが、魔理沙はすぐに立ち上がる。

 

 

 

「へ、へへ…まだだぜ!」

 

 

 額からポツポツと落ちる血を袖で拭きながら、魔理沙は笑っている。そんな魔理沙をベジータは面白くなさそうに見ていた。

 

 

 

「きさまではどんなに修行しようが、オレにリベンジなど不可能だ」

 

 

「…へぇ、なんでだよ」

 

 

 珍しく断言をしたベジータに対し、魔理沙が問う。

 

 

 

「身体能力の差だ。ハッキリ言ってやる。きさまはオレが幻想郷で見てきた奴の誰よりも基本能力が低い。吸血鬼と言っていたレミリアやフラン、ましてや同じ人間の霊夢や早苗と比べてもきさまのそれ(・・)は大幅に下回っている」

 

 

 正直に答えれば魔理沙は絶対にいい顔をしないとわかっていながら、ベジータは容姿なく答える。そしてさらにこう続ける。

 

 

「きさまがさらに奥の手ともいえる技を残していようが、その程度の身体能力ではオレに勝つことはできん。それが超能力であろうともな」

 

 

「……」

 

 

 魔理沙は黙って聞いている。怒っているのか落胆しているのかはわからないが、理解はしているようだ。いや、ベジータに言われる前から、魔理沙はちゃんとこの事を理解していた。

 

 

 

 〝自分は天才ではない〟

 

 

 

 常々そう思っていた。

 

 確かに人という範囲で見れば相当な実力者に違いないが、それも霊夢や早苗と比べると一回り、いや二回りほど見劣りする。

 魔法使いという範囲でも見ても、アリスやパチュリーといった上位互換のような者がいた。

 

 その分魔理沙は魔法について勉強し、知識を蓄えいろんな技を編み出した。しかしそれは所詮『普通の人間が放つ魔法』に過ぎず、技のクオリティーに自らのスペックがついてこなかったのだ。

 

 頑張って鍛えている時期もあった。しかし基本スペックは生まれつきのものが大部分に関係しており、中々上がらなかった。そんな魔理沙を嘲笑うわけではないが、常に一緒にいる霊夢はとても人間とは思えない高スペックだ。霊夢自体は何も苦労をせずに持ち合わせていたその身体能力を、魔理沙は時に嫉妬する事もあった。が、人間は皆平等ではないという事をわかっていたため、その気持ちを表に出すことはなかった。

 

 が、そう心では思っていても納得はできない。

 しかし努力しても変わらないことから、次第にその気持ちが冷めつつあった。さらには今の力のままでも『異変解決』をできることはわかりきっていたので、最近はあまり気にしなくなっていた。

 

 

 

 

 

「諦めないぞ…私は。ここで諦めたら格好がつかないからな」

 

 

「…往生際の悪い事だ」

 

 

 出逢ってしまった。

 幻想郷(ここ)で。上手く表現できないが、簡単に言えば〝負けたくない〟と思う相手が。

 ただ強いだけでこう思わせるのは不可能だ。大事なのは強さの〝質〟 戦闘という点において、これ程までに研ぎ澄まされた『力』を見せつけられた魔理沙は、冷めつつあった思いを再び憶いだした。

 

 しかし、憶いだした所で身体能力を急に上げることはできない。そこで魔理沙は別のベクトルで考え始めた。

 

 

「確かに私は霊夢みたいに身体能力は高くない。だけど…私には魔法がある(・・・・・・・・)!」

 

 

「いったはずだ、その魔法もオレには通用せん」

 

 

 魔理沙はニヤリといつもみたいに笑いながら、さっき落ちた帽子を拾い深く被った。

 そして右手に持っていた『ミニ八卦炉(はっけろ)』を自分の胸に当てて大きく深呼吸した。

 

 

「まさか…きさま…」

 

 

「ベジータ、私ははじめからお前にはマスタースパークは通用しないとわかっていた。いや、マスタースパークどころか私の魔法全てがな!

 だから私は…これで…自分を強化する(・・・・・・・)ッ!」

 

 

 

 ミニ八卦炉が小さく輝いたと思った瞬間、放出された光で魔理沙を包み込んだ。

 自分で自分にマスタースパークを打ち込んだのだ。その際にベジータは感じ取った。今のは魔法と〝気〟を織り交ぜたモノであるという事を。

 

 

「こいつ…」

 

 

「さぁ、さっさとやろうぜ」

 

 

 

 包み込んでいた光が消えたと思ったら、その中からさらに輝いている魔理沙が現れた。

 ベジータはその魔理沙を見て、ニヤリと笑いながら構えたのだった。




はい、第53話でした。

魔理沙の泥臭さは好きです。もちろんベジータも。

ではお疲れ様でした。

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