ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

皆さま、新年あけましておめでとうございます(遅い)
この『ライバルを超えるために幻想入り』もそろそろ1周年になりそうです。今年も頑張って書くのでよろしくお願いします。


【第51話】紅美鈴という存在

 

 

ー神殿ー

 

 

 

「…ひとまずコレでいいか」

 

 

ピッコロは気絶している美鈴を神殿まで連れてきた。悟空が帰ってきてから移動しても良かったが、悟空には『瞬間移動』があるので別に構わないだろうと思ったのだ。

 

 

「……」

 

 

美鈴の腕は先程より元に戻っている様子だったが、まだ黒く、若干の煙を出していた。

初めに水晶で見た時と大分印象が変わっている。

 

 

「待っていろ。今デンデを呼んでくる」

 

 

恐らく聴こえていないだろうが、ピッコロは声に出して美鈴に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー5分後ー

 

 

 

「すいません、お待たせしました。では行きましょう」

 

 

デンデは少しやる事があったようで、ピッコロはそれがひと段落するまで待っていた。

それも終わり、ピッコロは美鈴についてデンデに説明しながら歩いていた。

 

 

 

「なるほど…ボクに、その紅美鈴さんという方を治してほしいという事ですね」

 

 

「ああ、すまないな」

 

 

「いえ構いませんよ」

 

 

 

デンデは神さまであるが、だからと言って人を上から見たりはしない。優しい心の持ち主なのだ。

 

 

 

「にしても異世界から…ですか。それは気になりますね」

 

 

「まだ確定したわけではないがな。オレと悟空がそう思っているだけだ」

 

 

そう言いながら2人は外へ出た。が───

 

 

 

 

 

 

 

「いま…せんね」

 

 

「…!」

 

 

そこに美鈴の姿はない。確かにピッコロは、今自分が向いている先の地面へ美鈴を寝かせた筈だ。

しかしその事実を否定するかのように、小さな風の音だけがそこで響いていた。

 

 

 

「帰ったのでしょうか…」

 

 

「いや…先ほどまで小さな〝気〟を感じていた。お前と話している時は会話に集中したからわからなかったが…」

 

 

 

ピッコロはふと目を瞑る。そしてすぐに目を開けた。

 

 

 

「それで〝気〟を上手く隠したつもりか?紅美鈴!」

 

 

「…ッ!」

 

 

ピッコロは左を向いた。その先には大きな柱がある。

 

 

「…なぜわかったんですか。完璧に〝気〟を消していた筈です」

 

 

「…なに…?」

 

 

柱の後ろから、美鈴がピッコロとデンデに警戒しながら出てきた。

その美鈴を見たピッコロは目を見開いて驚く。それもその筈だ。怪我が完治していたからだ。

 

 

「まさか〝気〟以外に相手の位置を探る術すべが…」

 

 

 

「…そんな事はどうでもいい。きさま…どうやって怪我を治した?」

 

 

ピッコロからするとそれが1番気になる。デンデを待っていた時間と、美鈴の元へ戻る時間を合わせてもまだ10分も待っていない。なのに美鈴の姿は元に戻っていた。

怪我が治っただけではない。衣服も元通りになっていた。

 

 

 

「…怪我?なぜ私が怪我を………ッ!」

 

 

ポカンとしていた美鈴だったが、急に顔が引き締まった。何かを思い出したのだ。

 

 

 

「あいつッ!あいつはッ!?」

 

 

美鈴はキョロキョロしながら〝あいつ〟とやらを探す。眼にはまだ怒りが籠っているように見えた。

 

 

「あいつ?プイプイの事か。あいつは地獄へ戻っただけだ。それより…」

 

 

「ピ、ピッコロさん!?」

 

 

「──!」

 

 

ピッコロの〝気〟がドンドン膨れ上がっていく。ピッコロの強さを感じとった美鈴は驚きながらも構えた。

 

 

「きさまには聞きたい事が山ほどある。正直に言うつもりがないのなら…力づくで言わせてやろう」

 

 

「……私も貴方達に聞きたいことがあるんですよ。山ほどね!」

 

 

美鈴も撃退体制に入る。目の前の者が先程のプイプイより格段に強いことをわかってはいたが、何故だか負ける気がしなかった。

 

そして一瞬気持ちが緩んだのだろうか。美鈴の口元がニヤッと動いた。しかしその瞬間にピッコロの拳が美鈴の腹へクリーンヒットし、後方へ吹っ飛ばされた。

 

 

「がッ…!?」

 

 

美鈴は何が起きたかわかっていない。ピッコロが消える瞬間も、パンチを繰り出した瞬間も、そしてそれが腹に当たる瞬間すらも確認できなかった。

 

 

 

「なッ…痛ぅ……!」

 

 

右手で腹を抑えつつ、美鈴は立ち上がった。ピッコロは美鈴を見下ろすようにして見ている。

 

 

「…フン。敵意満々といった(ツラ)だな。オレが憎いか?」

 

 

「…ははッ 別に憎くなんてないですよ。ただ貴方には負けたくない。それだけです」

 

 

抑えていた右手を腹から離し、再び構えた。先程のように油断した構えではなく、全力時の構えだ。

 

 

「ならば抵抗して見せろ」

 

 

「(悟空…まだ帰ってくるなよ。これが1番手っ取り早い…!)」

 

 

これがピッコロなりの決断、そして行動であった。

やはりピッコロは紅美鈴という存在を受け入れられない。信じられない。

 

 

 

 

 

「ふぅ……行きます!」

 

 

1度深呼吸をして美鈴は集中力を高めた。そしてすぐにピッコロに向かっていく。

 

 

「やあああああッ!!!」

 

 

そして鋭く疾い攻撃を連続で繰り出す。が、ピッコロには当たらない。すべて躱すか捌かれていく。

 

 

「くっ…」

 

 

このままではラチがあかないと思った美鈴は、一旦後ろに下がって体制を立て直す。

 

 

「この人強い…持久戦でいくしか…」

 

 

「つまらん作戦で体力を使うな。どうせ無駄に終わる」

 

 

「え…!?」

 

 

美鈴は頭で考えていたことがいつの間にか声に出ていた。しかしそれはあまりに小さな声だったので、この距離で聴き取られたことに驚いてしまった。

 

 

「(耳…良すぎでしょ!…まさか心を読まれてる?じゃあ考えたって仕方ないか…!)」

 

 

ピッコロは心を読む事などできない。だから美鈴の一方的な勘違いだったのだが───

 

 

「はあぁぁぁぁ…!!!」

 

 

「ほう…〝気〟が充実していく…」

 

 

 

それが逆に美鈴を吹っ切らせてしまった。美鈴の集中力は先程の比ではない。

 

 

「(なるほど…悟空が気にするのもわかる…)

ㅤㅤいくぞ紅美鈴。集中しろ、かつてないほどにな」

 

 

そのピッコロの言葉によりさらに美鈴は集中した。どんな攻撃がきても今なら大丈夫。

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤそう思っていた(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「え……」

 

 

 

美鈴は空を見ていた。

腹が痛い。先程のように。

 

気付いたら横たわっていたのだ。

 

 

 

 

「終わりか?」

 

 

ピッコロの声で正気を取り戻す。恐らく自分は相手の攻撃を受け、反応できないまままた吹っ飛ばされてしまったのだろうと理解できた。

 

 

 

「ぐ…はぁ……ッ!」

 

 

あまりの痛みに立ち上がることが出来ない。顔は汗でびっしょりだ。しかし本当に気になるのは腹の痛みではなく───

 

 

 

 

 

「(()えない()えない()えない()えない───!!!)」

 

 

相手の動きがまるで見えない。万全であり最高の状態の自分ですら、攻撃が入る瞬間すら捉えることができなかった。

 

 

──疑問。

 

──屈辱。

 

──焦燥。

 

──憤怒。

 

 

色々な感情が美鈴のカラダを巡っていく。

 

 

 

 

 

「…そのまま聞け。紅美鈴、オレ達はきさまが異世界から来たことを知っている。だが何のために来たのかはわかっていない…そしてきさまはそれを言おうとしない。

わかるか?オレはきさまを怪しんでいるのだ。

…悟空がきさまをどう思っているかは知らんがな」

 

 

「……」

 

 

悟空の名をピッコロが口に出した。だとするなら恐らくピッコロは敵ではない。彼の言葉からはプイプイの時と違い、真っ直ぐな気持ちを感じられた。嘘ではないだろう。

いま自分がここで素直に事を説明すれば、ピッコロは拳を収めるはずだ。もう闘う理由はない。

 

しかし美鈴は自分が好きで黙っているわけではない。紫と約束したのだ。幻想郷のことは〝他言無用〟と。

説明をしようとすれば幻想郷の事を言わなければならない。それだけは駄目と美鈴はわかっていた。

 

 

 

「確かに私は怪しいかもしれませんね。でも…ッ!言えませんね…信じてくださいとしか」

 

 

ピッコロの言い分もわかる。あちら目線でいえば自分は怪しい存在だ。そんな者を野放しにする方がおかしな話である。

そうわかっているからこそ美鈴も辛かった。

 

そして美鈴はグッと膝に手を置き、体重をかけて立ち上がった。

 

 

「…何が可笑しい?」

 

 

美鈴は笑っていた。しかし今の笑みは先程のような油断・慢心の類でないことをピッコロは感じた。

 

 

「随分と懐かしい気がしましてね。貴方が…」

 

 

〔私の師匠にほんの少しだけ似ていて…〕

 

 

美鈴はそう言おうとしたがやめた。これをベジータが聞いたら怒るかとしれないと思ったからだ。

それにしても本当に懐かしい気がした。会わなくなってもう何十年も経ったかのような…そんな感覚だった。

 

 

「さあて。次…行きますよッ!」

 

 

 

意味深な笑みを浮かべつつ、美鈴はピッコロに向かう。

頭の中をフラットにし、今自分ができる闘いをしようと決めて。

 

 

 

「(面白い…!)はぁッ!」

 

 

それに応えるようにピッコロを少しだけ笑っていた。傍観していたデンデは、ピッコロが少しずつ美鈴のペースに引きずられているように思えた。

 

 

 

凄まじい攻防が続く。しかし互角とは到底見えない。汗びっしょりではぁはぁ息を吐く美鈴と、全く呼吸が乱れていないピッコロだったからだ。

そんな状況でも美鈴は攻撃する事と、笑う事をやめない。

 

 

 

「どうした?威勢だけで何も変わっていないが」

 

 

「それはッ!貴方がッ!強いからですよッ!

私だって一生懸命やってるんですッ!」

 

 

美鈴は勝ち負けより以前に、何故だか少しだけ楽しくなってきていた。

美鈴だけではない。ピッコロもそうだ。ここ最近純粋に闘いを楽しんだ覚えがない。フリーザ、人造人間、セル、魔人ブウとの闘いをピッコロは、純粋に楽しめていなかった。

 

こんな気分は…悟飯に修行をつけていた時以来の気がした。

 

 

 

「…紅美鈴、これはどうだ?」

 

 

距離を取ったピッコロが人差し指と中指を額にもっていった。美鈴はそのまま不思議そうに見ていると───

 

 

 

 

「──!!!」

 

 

 

凄まじいほどの〝気〟が指先へ集まっていく。美鈴はこれがピッコロの奥義であると直感的に感じた。

 

 

 

「(私じゃこれを受け止めるのは不可能…!かと言って躱すのも難しい。ならば……)」

 

 

 

 

 

 

────迎え撃つしかない!

 

 

 

 

 

 

「はああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

 

 

美鈴は残った〝気〟、体力、精神力を全て次の一撃に懸ける事に決めた。

恐怖はない。あるとするならば、それは勝負から逃げようとする自分の心の弱さにだ。

 

これほどまでに、真っ向から勝負を仕掛けてくれる相手に出逢える事はそうそうない。その相手に応えずに何が武闘家か。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うけてみろ──!『魔貫光殺砲』!!!!!」

 

 

「これで…決める!『ビッグ・バン・アタック』!!!!!」

 

 

 

 

 

2つの奥義が今ぶつかり合う───!!!

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第51話でした。

なんかこの小説ではいつも美鈴がボコボコにされてる気がするんですけど気のせいですかね…
予定では次の話で章の区切りとなる予定です。

ではお疲れ様でした。

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