ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

早めに投稿できて良かったです(*'∀'*)ゞ


【第46話】大きな壁

 

「………」

 

 

 

美鈴は自分流の『界王拳』を生み出すべく、あれから修行に励んでいた。

修行といっても激しい動きはせず静かに、そして黙って立っているだけだ。

 

 

「ふぅ…」

 

 

一呼吸おいたら美鈴は目を瞑った。そして自分の中にある〝気〟を徐々に(・・・)()げていく。

 

 

「(美鈴の〝気〟がドンドン昇がっていく…集中力は大したもんだな)」

 

 

感心しながら見守る悟空。

悟空は大きな岩の上に登っており、胡座をかきながら見下ろすように美鈴の修行風景を眺めていた。

 

 

 

「(徐々に〝気〟を昇げて…その後一気に……………

……………………爆発させるッ!)」

 

 

「っ!!」

 

 

ピクッと悟空が反応した。

 

 

「はあああああああッ!!!!!!」

 

 

 

 

美鈴の〝気〟を昇がったと同時に大地が揺れる。

小さな台風のようなものが巻き起こったほどだ。

 

 

「…ダメだ」

 

 

しかし思った通りにはならない。

自分のイメージとは全く違う。

 

 

「美鈴!最初からなんてできねーのが当たり前だぞ!

でもそのできなかった一回を無駄にすんな。できなかった一回を見直すことで成功につながるからな!」

 

「…はい!」

 

 

悟空もアドバイスはしてあげるが、それ以上のことはしない。

美鈴が自分1人で成し遂げなければいけない事だと思っているし、

それとただ単純に美鈴がどんな新化を遂げるか興味があったからだ。

 

 

「(今んとこはただ〝気〟を昇げているだけだ。けどこっから美鈴がどうなんのか…へへっ オラも楽しみだ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

あれから数時間経った。

美鈴はひたすら同じことを繰り返していたが、何も掴めてはいない。

ザッと膝と手を地面につき、肩で息をしている。顔を下げた事によって、汗が顎から滴り落ちた。

 

 

「うっし!今日は終わりにすっか!」

 

 

初めは岩に座って美鈴の修行を眺めていた悟空であったが、どんどん暇になっていき、最終的には1人で筋トレをしていた。

 

 

「はい!」

 

「お?やけにいい返事だな。

何か掴めたのか?」

 

 

修行を始めたときよりも美鈴は清々しい顔をしていた。

なんというか迷い、悩みを吹っ切れた。そんな感じの顔だ。

 

 

「いえ全く…でも、なんででしょうね。

なんか今まで以上に私は強くなれる、そんな気が全身から感じるんです。もっともっと修行をしていたいです!」

 

「そうか…でも無理はしちゃいけねえぞ。

おめえはオラやベジータみたいにカラダが強くねえからな」

 

 

妖怪といえど戦闘種族のサイヤ人ほどカラダは丈夫ではない。

無理をして早く技を習得しようとすればするほど、それが遠のいていくことは悟空には解っていた。

 

 

「もちろんわかっています。

でもなんだか悔しいですね………私もサイヤ人ならよかったな。

というかサイヤ人って他にいるんですか?」

 

 

ベジータに質問していたら地雷だったかもしれない。

まあ今更ベジータも引きずってはいないだろうが。

 

 

「星ごと滅んじまった。いや、滅ぼされたって言い方の方が正しいんかな?」

 

「え?ほ、滅ぼされた?

だ、誰に…?」

 

「フリーザっちゅう悪い奴にな。

オラとベジータとその仲間達は生き残ったんだ」

 

 

なんでそんな事を軽く言えるのだろうと不思議に思う美鈴。

無理もない。悟空にとっては惑星ベジータなど全く思い入れはないからだ。

しかしだからといってどうでもいいわけではない。星を滅ぼされて死んでいったサイヤ人達の嘆き、悲しみは悟空にも容易に想像できる。

 

 

「その仲間達と悟空さんとベジータさんは今現在地球に住んでいるという事ですね。いやはや…まさかサイヤ人とは別の星の生命体だったなんて…」

 

 

美鈴が驚くのも当然だ。つまり美鈴からみたら悟空達は宇宙人なのだから。

 

 

「いや、ベジータの仲間は2人とも死んじまった。

だから純粋なサイヤ人、だっけ?それはオラ達2人しかいねえんじゃねえかな」

 

「あっ…すいません…」

 

 

残り2人のうちの1人が悟空達の手によって、そしてもう1人がベジータの手によって殺されたと知ったら美鈴はどんな反応をするだろうか。

 

 

「謝んなって!さっ 帰ってメシにしようぜ!」

 

「…はい」

 

 

 

いつもみたいに悟空はニッと笑い、雰囲気を明るくしてくれた。

 

2人は瞬間移動で家に戻り、夕飯の手伝いをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああ………」

 

 

 

美鈴が再び〝気〟を高めた。

美鈴は具現化された〝紅い気〟を纏っている。悟空の『界王拳』よりも暗く、不気味な光沢を放っていた。

 

 

「(美鈴のやつ、恐ろしいスピードで成長してんな。

ただもうひと押し…後もうひと押し足りねえ)」

 

 

あれからひと月が経った。

美鈴は悟空の予想をはるか上回るスピードで成長していたのだ。

 

今の美鈴は体力の消耗を限りなく抑え、それでいて通常の『界王拳』にも勝るとも劣らない新技を編み出す一歩手前のところだ。

 

 

「くっ…はあッ!」

 

 

それを美鈴もよくわかっている。

ここまで来れたのは圧倒的な速さなのだが、あと一歩、ちょっと手を伸ばせば届きそうなところで届かないこのなんとも言えない気持ちがもどかしいのだ。

 

 

「…ダメ元でやってみっか!」

 

 

何かを決心した悟空が美鈴を呼びつける。

それに気づいた美鈴が小走りで悟空に駆け寄った。

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

「今からオラと組手だ」

 

「組手ですか?しかしまだ技が完成して…」

 

「わかってる。だからだ」

 

 

悟空の顔が真剣になる。

ひと月前に組手をして以来、いやあの時よりも気合いが入っているようにも見える。

 

 

「わかりました…!ではいきます!」

 

「おう。本気でこいよ美鈴。

………オラも本気でいく!」

 

 

みるみる悟空の〝気〟が高まる。

そして悟空は〝気〟を解放した。

 

 

「…はッ!」

 

「いっ…!?」

 

 

 

 

 

 

美鈴が驚愕する。

 

 

 

「金色の髪…これが悟空さんのスーパーサイヤ人…」

 

 

シュインシュインシュインと静かに音を立てている。

目つきもなんだか悪くなったような気がする。悟空はスーパーサイヤ人になったのだ。

 

 

「さぁ…いくぞ美鈴!」

 

「はいッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー1分後ー

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「ここまでだな」

 

 

美鈴は地面に大の字で倒れ込んでいる。一方悟空は息すら乱さずに美鈴を見下ろしていた。

 

 

「ふぅ… 美鈴、強くなったな」

 

「…まだまだです」

 

 

「(マズかったかな…)」

 

 

悟空はスーパーサイヤ人で戦い、追い込むことによって美鈴が技を完成させる事を期待していたが、そう上手くいかなかった。

むしろ絶対的な差を見せられた美鈴のモチベーションを下がったかもしれないと慌てていた。

 

 

「(恐らく美鈴は元々オラには勝てねえと思いこんでる。

そのオラが追い込んでも美鈴の引き金を引くのはできねえ…か)」

 

 

ベジータのように半殺しにする覚悟があれば話は別だったかもしれないが、まだ知り合ってひと月、それも女性をそこまで追い込めるほど悟空は非情ではない。もちろんベジータも美鈴のためを思った行動であった事には変わりないが。

 

 

「ちょっと疲れただろ?休憩するか!」

 

「いえ!」

 

「…ん?」

 

 

美鈴がユラっと立ち上がる。

修行を続けるつもりだ。

 

 

「おいおい無理すん…」

 

「? どうしました?」

 

 

美鈴が無理をしているようには見えない。

むしろ楽しそうな顔をしている。

 

 

「ははは…なんでもねえ!

オラちょっと昼メシ持ってくる!」

 

「いつも思うのですが…わざわざ飛んでいかなくても瞬間移動で行けばいいのでは?」

 

 

悟空は毎回毎回家まで全力で飛んで行っている。

瞬間移動を使えば体力を使うこともないのに、と美鈴は常々思っていたのだ。

 

 

「これも修行だ! じゃあ行ってくるぞ!」

 

 

そう言いながら悟空はすごいスピードで飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへへ…美鈴はこんくらいでやる気を無くす奴じゃなかったな!

オラばっかり慌てちまって…バッカだなー!」

 

 

美鈴はモチベーションを下がったりしない。むしろ上がったのだ。

しかし悟空は知らない。組手の相手が他でもない悟空だからこそ、美鈴のやる気が上がった事を。

 

悟空は全力ではないにしろ、本気で美鈴に向かっていった。それが美鈴は何より嬉しかったのだ。

強大な力を見せびらかすのではなく、大きな壁として立ちはだかったのだ。すると美鈴はこう思った。

 

 

 

 

〔この人()超えたい!〕

 

 

 

悟空の強さは敵にやる気を無くさせる強さではない。

こいつを、この人を、この者を超えたい、と。そう思わせる強さなのだ。

 

 

 

「とはいえ美鈴はもう技を覚えてもいい頃だ。

なんか考えねえとなぁ。正直さっきの考えは良かったと思うけど何が悪……………ん?」

 

 

腕組みしながら高速移動している悟空。

何かを思いついたように急ブレーキをかけた。

 

 

「オラ自分で言ってたじゃねえか。美鈴はオラには勝てねえと思ってる…勝てねえでいいのはオラが美鈴の敵じゃないから。だから美鈴は本気になれない。つまり…………」

 

 

珍しく悟空が戦闘以外で頭を働かせている。

頭の中がこんがらがって痛くなりそうだが、これも美鈴のためだ。

 

 

「…そうだ。そうだよ!ははーっ!なんだ簡単な事じゃねえか!

よーーーし!さっそく頼んでみっか(・・・・・・)!」

 

 

「やっほーーーーーっ!」

 

 

自信があるのだろうか。何かを思いついた悟空は嬉しそうにしながら家に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

悟空が飛んで行った後、美鈴は再び集中力と〝気〟を高めていた。

その途中、もう見えないくらい離れている悟空の声が聞こえた気がした。

 

 

「どうかした?」

 

「いや、悟空さんの声が聞こえた気がし…ってうわあッ!?」

 

 

存在が神出鬼没、八雲紫が美鈴の後ろの岩へ座っていた。

 

 

「毎回毎回面白い反応ね。まさか練習してる?」

 

「してませんッ!」

 

 

いつも通りにニコニコしている紫。

何をしに来たんだろうと美鈴は一瞬思ったが、用がなくても来るのが紫なのだ。

 

 

「ホラホラ、修行を続けて?」

 

「わ、わかってます! ………貴方がいたら集中できません。

休憩です!」

 

ザッと地面に座り込む美鈴。

前と同じような風景だ。

 

 

「修行、頑張ってるみたいね。キツイ?」

 

「ええ。キツイけど…でも楽しいです!」

 

 

「…そう。安心したわ」

 

 

 

すると紫がスキマを開く。

もう帰ろうとしていた。

 

 

「え?も、もう帰るんですか?」

 

「ええ…私に此処はキツイ(・・・)わ。

じゃ、頑張ってねー」

 

 

来て2、3分で紫は帰ってしまった。

美鈴はポカーンと前を見続ける。

 

 

 

「…私何か悪い事でも言っちゃった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ースキマの中ー

 

 

 

「ふぅ…あの凄まじい〝気〟の名残り…孫悟空ね。

私程度じゃあの場に長時間居られないわ。幻想郷(こっち)に住んでいる者ほとんどが…ね」

 

 

「………」

 

 

 

「紅美鈴………楽しみね」

 

 

 




はい、第46話でした。

今更ですが、30000UAありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。

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