ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

何故か眠い時にかきたくなってしまったので、何いってんだこいつ。
って文があるかもしれません。


【第44話】ライバル

 

 

「………」

 

 

「……かはッ…」

 

 

 

悟空と美鈴。

凄まじい程の〝気〟を纏った2人の拳はぶつかり合ったように見えたが実は違う。

 

2人は同じように真っ直ぐ突き進んだが、美鈴は最初から最後まで自分の出せる全力のスピードで悟空に向かっていった。

しかし悟空は違う。あの状況でも冷静に相手の動きを観察し、美鈴と同じスピードで向かっていった…途中までは。

 

悟空は美鈴の拳が自分の拳とぶつかりそうになった瞬間、急加速して美鈴の懐に潜り込んだ。美鈴の拳は空を貫き、一方悟空の拳は美鈴の腹に突き刺さった。

 

 

本来ならば見えなくなるくらい吹っ飛ばされる筈だったが、悟空が直前で拳の勢いを殺したため、むしろ拳に腹がひっつく形で美鈴は崩れ落ちた。

 

 

「おっと」

 

 

倒れる美鈴の方を悟空が受け止めた。

美鈴は意識を失う寸前だったが、舌を噛み、なんとか1人で立とうと必死になっていた。

 

 

「無理すんな。今のはこたえただろ?」

 

 

「くッ…!」

 

 

足をガクガクさせながらも悟空の両肩に自分の両手を置き、無理やりに立ち上がった。

フーッ!フーッ!と荒く息を吐いていた口からは、強く舌を噛みすぎたからか血が出ていた。

 

 

「美鈴、とりあえず座れ。

よっと。ほら、オラも座ったぞ?」

 

「………はい」

 

 

 

 

本心ではない。もちろん美鈴の本心はまだ戦いたいという気持ちでいっぱいだ。

しかし美鈴には見えなかった。

 

〝自分が悟空に勝てるビジョン〟が。

 

 

「ちょっとは楽になったか?……おめえが師匠ってやつにどんな戦い方を教え込まれてるかオラにはわからねえ。わからねえけど…

ホントにそれがおめえに合ってんのか?」

 

「…!」

 

 

「確かにおめえからは絶対に負けたくねぇ!っていう気合は伝わってくる。でもそれはあくまで気持ちの問題だろ?体は限界なのに無理しちゃいけねえ。

ベジータには合ってるかもしれねえけど…ハッキリ言うぞ。美鈴、おめえにはその考え方は合ってねえ」

 

 

話の内容ももちろん解っていた。しかし美鈴には悟空の『ベジータ』という発言のせいで一瞬他の事が頭から消えてしまった。

 

 

「やはり悟空さんは師匠…ベジータさんを知っていたのですか」

 

「ああ。ちょっと前にベジータの〝気〟が消えてさ。死んだとも思えねえし…『精神と時の部屋』に入ったんかなって思ったんだ。ミスター・ポポが入り口直したって言ってたしな。

あれ?デンデだっけ?まぁそれはいいか!」

 

 

話に全く説明を入れないため、美鈴は悟空が何を言ってるのかわからなかった。

しかし悟空は容赦なく話を続ける。

 

 

「だからそん中でおめえとベジータが修行してたんじゃねえかなって思ったんだ。なんとなくおめえの戦い方や技がベジータと似てんだ」

 

 

美鈴の戦い方や技がベジータに似ているのは、もちろんベジータに習ったからだ。それは間違いない。間違いなのは…

 

 

「『精神と時の部屋』って…何ですか?」

 

「え?」

 

 

美鈴がベジータと『精神と時の部屋』で修行をしたという事だ。

 

悟空の推測は近いものもあったが、根本がおかしい。

そもそも全く接点のないベジータと美鈴が、何故『精神と時の部屋』で修行をしているのかというところがまずおかしいのだ。

 

 

「確かに私はベジータさんと修行をしていました。戦い方を学び、悟空さんは私には合ってないと言いましたが、戦いに関する姿勢のようなものも」

 

「やっぱりか」

 

「ええ。しかし『精神と時の部屋』…ですか?そんな場所へ行った記憶は…」

 

 

ないに決まっている。事実行ってないのだから。

 

 

「う〜ん…じゃあおめえたちは何処で」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

突然変な音が鳴り響き、美鈴は辺りを見渡した。

しかし周りには何もない。不思議と悟空の顔を見ると、悟空はケラケラと笑っていた。

 

 

「ハハハハハ!わりい!オラの腹の音だ。

丁度いいからメシにすっか!美鈴、ウチに戻ろうぜ!」

 

 

清々しいほどの笑顔だ。

先程まで天才的な戦い方をしていた者とは思えない。大事な話だったのだが、悟空からしたらメシを後にしてまでの重要事項ではないようだ。

普段からあまり隙のないベジータとは反対だと美鈴は悟空を見て感じた。

 

「すいません…まだお腹が痛くて。悟空さん家に戻って食べてきてください」

 

 

ものの数分前に凄まじいパンチを食らったのに、すぐにメシなど食べられるわけない。

美鈴はとりあえずもう少しこのままでいたかったのだ。

 

 

「大丈夫か?…よし!チチに弁当作ってもらうから待ってろよ!」

 

「え?いやお構いなく…」

 

「すぐ戻ってくっからな!」

 

 

そう言い残しものすごいスピードで家に戻って行った。もしかすると戦ってる時より速いかもしれない。

 

 

「なんなのあの人は…」

 

 

溜息を吐きながら独り言を呟いた…つもりだったが、

それは独り言にはならなかった(・・・・・・)

 

 

 

「ベジータの〝ライバル〟よ♪」

 

「ひっ…!」

 

 

急に声が聞こえて反射的に後ろに振り向いてしまった。

美鈴の前に現れたのはもちろん紫だった。

 

 

「はぁーい美鈴♪調子はどう?」

 

「…紫さん」

 

扇子を口の周りに持ってきて、クスクスと笑っている。

そんな紫に対し、美鈴は妙な気持ちになった。

言葉にするのなら『なんかムカつく』だろうか。

 

 

「女の子がそんな言葉遣いじゃだめでしょう?」

 

「いや何も言ってないですけど…」

 

 

地べたに座っている美鈴のすぐ近くにある岩に、紫は腰を下ろした。

 

 

 

「それより…悟空さんが師匠のライバルって本当ですか?」

 

「あら、ちゃんと聞こえてたの?ボケーッとしてたから聞いてないと思ったわ♪」

 

「はぐらかさないでください!」

 

「……」

 

 

美鈴はいつになく真剣な眼だ。

そんな真剣な美鈴をみると、紫はなんだかニヤニヤが止まらなかった。

 

 

「本当よ。 …悟空(こっち)がどう思っているかは知らないけどね」

 

 

ベジータは悟空の事を間違いなく『ライバル』と思っているだろう。

『ライバル』というのは超えるべき壁そのものだ。

どんなに強くなろうがその壁を超えることができなければなんの意味もなさない。

 

一方悟空はベジータの事を『ライバル』というよりは『仲間』として見ている方が大きいだろう。そのことは勿論紫も知っていたのだが、あえて(・・・)美鈴には詳しく話さなかった。

 

 

「そっか…悟空さんが師匠のライバルなんですか」

 

「何か思うことでもあるの?」

 

 

美鈴が何かを考え込んでいる顔をしていたので、紫はそう聞いてみた。

 

 

「いや別に…」

 

「…当ててあげましょうか?」

 

「えっ?」

 

紫は扇子をパンッと閉じた。

そしてクルッと後ろを振り向き、空を見上げた。

 

 

悟空()とベジータでは〝力の差〟が大きすぎる。

とてもライバルと呼べるほどではない。

 

…なんて考えてたんでしょう?」

 

 

ドキッと美鈴は反応した。

それは自分が考えていた事を紫が完璧に当ててみせたからである。

 

動揺している美鈴を見た紫はまたクスクスと笑う。

 

 

「そんな事…」

 

「なんで隠そうとするの?貴方がそう思っている事はお見通しよ。

…それとも師匠であるベジータに気でも使っているのかしら?」

 

「……」

 

 

図星である。

美鈴は感じていた。何をかというと、それは悟空とベジータの実力についてである。

両方と戦ってみた結果、明らかにベジータよりも悟空の方が実力が上とわかってしまった。

ベジータは悟空をライバル視している。ライバル視している相手が自分より強かったとしても別におかしなことではない…が美鈴はそれ以前の問題だとわかってしまった。

 

ベジータと戦った時は、確かに底の見えない相手だと感じた。

今の自分では勝つ事は厳しいと。

スーパーサイヤ人を見た時は恐ろしいとすら思った。。しかし同時に〝負けたくない〟という気持ちを生まれ、自分の闘争心はグンと上がっていった。

 

 

 

一方悟空は〝強すぎる〟

 

今戦ってみてわかったが間違いない。

技、戦術、経験、全てにおいて美鈴とは勝負にならない。

それに悟空はまだ全力ではない。限界を超える力を全く出さずにあの強さだったため、美鈴は悟空に勝ちたいとは思わなくなってしまった。

 

例えるなら『神』

 

誰も神相手に勝とうとするものは居ない。

そう、雲の上の存在であるのだ。

 

 

 

…と両者を比べた結果、悟空とベジータでは相手にならないとまで美鈴は思ってしまった。

 

勿論ベジータが弱いという訳ではない、悟空が〝強すぎる〟のだ。

 

 

 

 

「図星みたいね。

貴方すぐ黙り込むから分かり易いわ」

 

「ほぼ初対面みたいなものなのに、わかったように言わないでください」

 

 

プイッと美鈴はソッポを向く。

その瞬間先程パンチを食らった腹部がズキズキと痛んだ。

 

 

「あらあらごめんなさいね。

…でも確かに、貴方からすると初対面かもしれない。

けど私は貴方のことをずっと見ていたわ」

 

「えっ!」

 

「大体居眠りしてたけどね」

 

 

紫は幻想郷の賢者だ。

常に幻想郷の様子を見ている。人や妖怪が変な事を起こさないかなど注意深く見守っているのだ。

 

 

「ストーカーですか」

 

「違うわよ!」

 

紫は鋭いツッコミを入れる。

まぁそう言われても仕方がないのかもしれないが。

 

 

「もうっ…!じゃあそろそろ行くわね」

 

 

頃合いだと思った紫は立ち上がった。そして手を前に差し出す。

するとそこからいつものスキマが現れた。

 

 

「悟空さんに会っていかないのですか?」

 

「別世界の住人同士が干渉するのはNGよ。

貴方とベジータは例外。 わかった?」

 

「…例外の基準は?」

 

 

 

「…私の気分♪」

 

 

少し間を置いて答える。とんだ賢者である。

 

 

「最後に聞いてもいいですか?

…紫さんは悟空さんと師匠の事を私より知っているんですよね?

じゃあ悟空さんが師匠の事をどう思っているか教えてくれませんか?」

 

 

美鈴も立ち上がった。そして先程からずっと聞きたかった事を聞いた。

これほど力の差がありながらベジータは悟空の事をライバルだと言っていた。じゃあ悟空はどう思っているのか、それを知りたかったのだ。

 

 

勿論紫は全ての答えを知っている。

 

しかし

 

 

 

 

「本人に聞いてみれば?

またくるから答えを聞かしてね」

 

「あ!ちょっと!」

 

「バイバーイ♪」

 

 

 

逃げるようにスキマでそこから消えていった。

美鈴は紫がその事について知っているとわかっていた。

わかっていたからこそ何故隠すのかわからなかった。

 

 

「はぁ…」

 

 

そう溜息を吐き、仰向けに寝っ転がった。

そしてそのまま雲ひとつない青い空を細目で眺めていた。

 

 




はい、第44話でした。

実際悟空ってベジータの事を具体的にどんな風に思ってるんですかね。私は『仲間』とか『友』とかだと思いますけど、殺そうとした相手にそう思えるってすごく器が大きいですよね。

ではお疲れでした。

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