ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

梅雨はジメジメしてて嫌いです。


【第38話】決着

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

霊夢の顎から汗が滴り落ちる。肩で息をしており序盤の余裕は一切無いといった表情だ。

 

「……」

 

森の中で戦っていたベジータと霊夢。その2人の戦いは持久戦となっていた。霊夢の夢想天生が切れるのが先か、それとも狭い範囲で霊夢の攻撃を受け続けているベジータがやられるのが先か。

 

…しかしはたから見たらどちらが有利であるかは一目瞭然だった。

 

 

「どうした。こないのか?」

 

 

「………」

 

ベジータはこう言っているものの、すでにわかっていた(・・・・・・)

 

 

「アンタってつくづく嫌味な性格してるわね…」

 

そして暫く黙り込み、一呼吸置いて口を開いた。

 

「…参ったわ。私の…負けよ」

 

 

そう言いながら夢想天生を解いた。いや、解ける寸前に負けの宣言をしたのかもしれないが、それは霊夢にしかわからない。

 

 

「…ふう。慧音の言ってた通りに中々の実力を持っていたみたいだな。オレが幻想郷(ここ)で戦った中でも1番と言っていいだろう」

 

ベジータはスーパーサイヤ人を解いた。肉体的にも精神的にも幻想郷に来て1番疲れたかもしれない。

 

「あいつを知ってるの? というかそんなこと言われても全然嬉しくないわ。 …それより無駄に動いてお腹すいちゃった。帰ろっと」

 

霊夢は再びアリスの家に戻ろうとする。しかしその霊夢の肩をベジータがガシっと掴んだ。

 

「乙女の肩を急に掴まないでくれる?… なによ」

 

「キサマ…なぜ修行をしない?」

 

ベジータが真剣な目で聞いてくる。何か変な考えを持って聞いているわけではない。純粋な気持ちで聞いたのだ。

 

 

「はぁ?なぜって…めんどくさいからに決まってるでしょ。前にも言ったけど、私はめんどくさいことはしない主義なの」

 

そっぽを向いて腕を組みながら答える。

 

 

「それほど才能を持ちながら強くなりたいとは思わないのか?今よりさらに高みへ登れる可能性を捨てるのか?」

 

「別に。私は今の自分で満足してるから」

 

「…オレが敵だとしたらどうだ?」

 

霊夢は、はあ?といった顔をする。何を言ってんのアンタ、と言わなくても伝わるくらいだ。

 

 

「この戦いはあくまで互いの〝腕試し〟だった。だからオレはキサマをどうこうしようとする気は無い」

 

「だがオレが本当の敵だとしたら…キサマはオレに殺されていた。キサマが何か奥の手などを隠していなければな。それでいいのか?」

 

 

ベジータが言っていることはあくまでたらればの話である。これに近い話を神奈子とも以前していた。

 

 

「…その時はその時ね。私の運がなかったってところじゃない?そんな来るかわかんない時なんかのために、修行なんてやってらんないわ」

 

「フンッ!随分と楽な暮らしを送ってきたようだな!」

 

皮肉を込めて返す。なぜベジータが少し苛立っているのかというと、これほどの才能を持ちながら、霊夢に向上心がないからである。

 

別に霊夢に限った話ではない。元の世界でもベジータの周りには、トランクス、悟天、悟飯といった才能溢れる若者がいる。しかし、その3人からもベジータもしくは悟空と同じくらいの向上心は感じられない。

 

ベジータは悟空のように、これからの地球を守ってほしいなどと若者に求めているわけではない。ただ単になぜそれほどの才能を持ちながら、誰よりも強くなりたいという気持ち、向上心を出さないのかと甚だ疑問に思っているのだ。

 

 

「私からすれば逆に何でそんなに頑張るの?って思うくらいだわ」

 

「なに…?」

 

ベジータはピクッと反応する。

 

「だってそうじゃない。確かに修行をすれば今よりは強くなれるかもしれないわ。でも強くなって何がしたいの?アンタは最強になって何をするつもりなの?」

 

霊夢の言っていることも分からなくはない。自分の世界に、自分が全く敵わないほど強いバケモノがやってくるなど普通の者は考えないだろう。ましてや幻想郷の住人は。

 

ベジータの性格からして、世界を支配するなんて答えではないと思っていたが、どんな答えが返ってくるか霊夢は割と興味はあった。

 

 

「くだらん質問だな。最強になってなにをしたいか、ではない。〝最強になること〟自体に意味があるんだ」

 

「最強になる…ね。じゃあその最強になるとやらの定義はなに?何をしたら最強になれるの?」

 

「決まっている。それは…」

 

ベジータの言葉が止まる。一瞬悟空の顔が頭に浮かんだからだ。そして同時に思った。

 

 

〔オレはこんな所でなにをしている…?〕

 

 

そもそもこの幻想郷には遊びに来たわけではない。強くなるために来たのだ。

今の霊夢とのやりとりを全て放棄して飛び立ちたい気分に襲われたが、神奈子の言葉を思い出し踏みとどまった。

 

「(焦るな…気持ちにゆとりを持て…!)」

 

ふぅーと大きく息を吐いた。霊夢は首を横に傾げながら返答を待っていたのだが…

 

 

「ハラが減った。戻るぞ」

 

ベジータは霊夢の質問スルーして言い出した。

 

「はぁ!?私の質問に答えなさいよ!」

 

「キサマに話したところで何になる」

 

ベジータのツンツンした態度に霊夢のイライラが募る。

 

 

「アンタって本当に自分勝手ね…」

 

しかし逆に潔すぎて怒る気にもならない。

 

「そんな元気があるなら修行をするんだな。文句があるならオレを倒してからにしろ」

 

「…上等ね!待ってなさいよ!修行でも何でもしてやるわ!」

 

これを聞き、くいっとベジータの口角が上がる。

 

「修行はしないんじゃなかったのか?」

 

「…アンタを倒すまではやってやるわ。覚悟する事ね。この私ならちょっと修行するだけでアンタなんて余裕で追い越すから」

 

霊夢の決意が表情からよく伝わってくる。めんどくさがり屋といっても霊夢はやる時はやるのだ。でないと異変解決などするはずもない。

 

「ククク…おもしろい!今度はオレも本気を出させてもらおう」

 

 

あーだこーだ言いながら2人は意気投合しつつあった。そして2人は共に帰ろうとしたが…背後からただならぬ殺気を感じた。

 

 

「…ア、アリス?」

 

恐る恐る霊夢は振り返る。すると鬼の形相でこちらを睨みつけているアリスの姿があった。

 

 

「アンタ達…ひとの頼みごとを無視してなに遊んでんの?」

 

「フ、フン!遊んでいたわけではない!」

 

確かに遊んでいたわけではないのだが、アリスからしたらそんな事はどうだっていい。

 

「へぇ…じゃあもちろん魚は釣ったし薪も集めたんでしょうね?」

 

「さ、さあ…?ベジータが集めたんじゃない?」

 

「ッ!! きさま!!!」

 

霊夢は目線を外しながらベジータに責任転嫁する。しかしアリスにはそんな事通用しない。

 

「人が折角夕食の準備してあげたのにアンタ達は…」

 

「うるさい!今からすればいいだけだろう!」

 

アリスの説教に嫌気がさしたベジータは釣竿を持って歩いていく。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

「霊夢!キサマはさっさと薪を集めてこい!オレは魚を釣ってくる」

 

「はいはーい」

 

キーキー言っているアリスを置いて2人はそれぞれの場所に向かう。その途中ベジータは、アリスのことを少しだけブルマに似ているなと思っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー龍球の世界ー

 

 

 

「ほら!たんと食べろ!腹減ってんだろ?」

 

「わあ…!美味しそう!」

 

テーブルの上には美鈴が見たことのない料理がたくさん並ぶ。中にはトカゲらしきものもチラホラあった。

 

「いっただっきまーす!」

 

「い、いただきます!」

 

手を合わせてから料理をいただく。見た目が美味しそうな料理はやっぱり美味しかった。

 

「これすっごく美味しいです!」

 

美鈴は笑顔でそう伝える。それを聞いて女性もニッコリと笑顔になる。

 

「これも食べてみろ?」

 

そう言い、トカゲのような生物がのっている皿を渡される。

 

「え…えっとぉ…」

 

「どうした?遠慮しなくてもいいぞ?」

 

夕食をいただいている身として断るわけにはいかない。美鈴は意を決して謎の生物を、恐る恐る口に運ぶ。

 

 

「どうだ?」

 

「……お、美味しい!」

 

見た目と反して味はすごく美味しかった。ゲテモノほど美味しいと何処かで聞いたことはあったが、美鈴は少しだけそれを信じるようになった。

 

「そうだろ?」

 

「はい!あの…ところでえっと…貴女に聞きたいことがあるのですが…」

 

「チチ。おらの名前だ」

 

女性はまず自己紹介をした。チチという名前らしい。

 

「あ、私は紅美鈴と申します!」

 

「ボクは孫悟天だよ!」

 

悟天とは既に自己紹介したのだが、なぜか場の空気を読んでもう一回自己紹介をした。

 

「お二人共よろしくお願いします!ところでこの家にはお二人で住んでいられるのですか?」

 

「………」

 

 

チチはジーッと美鈴の顔を見てくる。

 

 

「あの…私の顔に何かついてます?」

 

「おめえそのかたっ苦しい喋り方なんとかならねえのか?」

 

チチは美鈴のカチカチの敬語が気に入らないみたいだ。

 

 

「え?ああすいません。じゃあ言い直します」

 

「ここには2人で住んでいるんですか?」

 

「………」

 

少し砕けた言い方だが、敬語である事は変わらないので再びチチはジーッと美鈴の顔を見つめる。

 

「あ…あはは…」

 

「…まあいいだ。ここには4人で住んでるべ」

 

「4人ですか?あとの2人は?」

 

美鈴はもう夜になりかけている時間帯なのに、あとの2人は帰ってきていないことが気になった。

 

「悟飯はなんか学校の研修ってやつで暫く帰ってこないべ」

 

「学校…?寺子屋みたいなものかな…それで悟飯さんとは?」

 

「悟飯っていうのはボクのお兄ちゃんだよ!」

 

「あっお兄さんですか。ではもう1人は────」

 

 

 

 

 

 

 

美鈴は急に黙り込んだ。いやそうではない。言葉が出せなかった(・・・・・・)のだ。

 

 

 

 

〔なんだ…この気はッ………!!?〕

 

 

 

ガタッと席から立ち上がり、入り口のドアを見る。

 

 

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

 

 

「何かが…くるッ!」

 

 

 

 

悟天との会話中に美鈴は感じてしまった。自分達の元へとだんだんと近づいてくる、考えられないほどデカイ気を。

 

 

 

普段、美鈴は遠くにいる者の気を感じる事はできない。誰にも習っていないし、しようとしなかったからである。

 

しかしその美鈴ですら感じてしまうほど大きく、純粋な強さが伝わってくる気であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアが開き、そのデカイ気をもった者が家に入ってきた。

 

「帰ったぞ〜!すっかり遅くなっちまった!」

 

 

「………」

 

実際に見てみると先ほどよりさらに気が大きく感じた。だが、近くにいて悪い気は全くしない。まるで大きな森に護られているような安心感すらあった。

 

「悟空さ!何やってたんだ!もう飯食ってるぞ!」

 

「いや〜わりいわりい!…ところでおめえは誰だ?」

 

 

どうやら彼がこの一家の父親らしい。顔は悟天にそっくりで、武闘家だという事は体つきを見れば1発でわかる。

 

 

「はじめまして、私は紅美鈴といいます」

 

若干緊張しながら美鈴は名乗った。そんな美鈴がおかしくて男はハハハッ!と笑った。

 

 

 

「オラは孫悟空だ!美鈴、ヨロシクな!」

 




はい、第38話でした。

悟飯を居ないようにした訳は、悟空の強さをより表したかったからです。原作では悟飯の方が悟空より一回り強かったので…悟飯ごめんよ…

ではお疲れ様でした。

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