細く、長く続けていきたいです。
「……」
腹が減ったベジータは守矢神社に帰って何かを食べようとしていたのだが、いちいち戻ってくるのが面倒だと思い近場で何か食べられるものを探していた。
「クソッタレ!何も無えじゃねえか!」
しかし思い通りにはいかなかった。食べられそうな草やキノコをいくら探しても見つからないのだ。
「川や池などを探すしか………誰か来るな」
川などで魚を採ろうと考えていたら何者かが近づいていることに気づいた。
ヒューーン!
ザッ!
「どうも!清く正」
「あっちにありそうだな…」
ザッザッザ
ヒューーン!
「……」
着地した瞬間に話しかけたのだが完全に無視されてしまった。しかも自分の真横を横切った後、ベジータは何も言わずに飛んで行った。
「…チッ、ここにも無いか。こうなると河童がいたところまで戻るか…いやそこまで戻るなら神社に帰った方が早そうだな」
ヒューーン!
「…む?」
再び何かが近づいてくる気配がする。
ドカーーン!
天狗が物凄いスピードで着地した。土煙が舞い、着地した場所は大きな穴が開いていた。
「どうも〜!!!清くぅぅ!!?」ガシッ!
天狗が喋っている途中にベジータは右手で顔を掴んだ。掴んだというより喋れなくするように挟んだという方が正しいかもしれない。
「ゴホッ!ゴホッ!…キサマ、オレに殺されにきたのか?」
「い、痛いでぇす!離しゅてきゅだしゃい!」
涙目になっていたので仕方なく離してやった。
「痛たた…いきなり何なんですか?」
「こっちのセリフだ!あんなスピードで落下してきやがって!」
「落下では無いです!芸術的な着地といってください!あ、私の名前は射命丸文です。清く正しい新聞記者です!お見知りおきを!」
胸を張りながらちゃっかり自己紹介した。
「そんなことは聞いていない。オレはもう行くぞ」
「ちょっと待ってください!…先ほど感じた大きな力の持ち主はあなたですよね?」
「…だったらなんだ。」
「お願いします!しゅ」
「断る。」
即答した。相手が新聞記者であることからベジータは何をお願いさせるのか既に知っていたからだ。
「まだしゅ、しか言ってませんよ!」
「どうせ取材だろう。昨日も他の奴に言ったがな…オレは取材を受ける気など無い」
「ほお〜、はたてと会ったのですか。しかしはたても一度断られたくらいで諦めるとは情けないですね〜」
見ていてとても腹の立つ笑顔で文は言った。もちろんはたては一度断られたくらいでは諦めなかったのだが説明が面倒だったベジータはこれ以上何も言わなかった。
「ほう、キサマならこのオレをなんとかできるとでも言うのか?」
「もちろん!」
胸を張りながら文は答えた。
「ほう…なら行くぞ!」
いきなりベジータは構えた。
ポーヒー!
ベジータの手から気弾が放たれた。
「…え?」
ズドーーン!!
気弾はすごい勢いで奥の木にぶつかって爆発した。
「な、何をするんですか!!」
「……(こいつ、避けやがった!さっきの落下してくる時といいとんでもないスピードをもってやがる!)」
「攻撃に決まっている。これは戦いなんだからな」
「戦い!?」
驚きながら空中にいた文は地上へ降りてきた。
「いや…あの会話の流れからなぜ戦いになったのですか!?」
「オレはその女に言った。取材をしたいのなら“このオレを倒してからにするんだな”と。キサマはオレをなんとかできると言った、つまりオレに勝てるということではないのか?」
「……」
な、なんて戦闘馬鹿なんだ…と文は心の中で呟いた。文は別にベジータと戦うつもりはないし、ましてや勝つつもりなど全くない。ただ別の方法でベジータを説得しようと考えていただけなのである。
「違いますよ!戦うつもりなんてないです!」
「ならオレはもう行く。いつまでもキサマと遊んでいるヒマなど…」
グゥ〜!
すごい音がベジータの言葉をかき消した。お腹の音である。
「確か名前は…ベジータさん、でしたよね?私こんなものを持っているのですが…」
「……!!!」
文の手には袋に包まれた箱があった。明らかにお弁当箱である。
「き、キサマ…このオレ様をもので釣ろうなどと…」
「ふふ…お茶もありますよ?」
左手でヒョイと水筒も見せる。
「……」
「取材…受けていただけますか?」
「……5分だけだ」
「十分です♪」
ニッコリしながら文は答えた。
一方その頃、美鈴と早苗は食材を買いにいくために人里へ向かっていた。
「へぇー!吸血鬼ってもっと怖いかと思ってましたけど優しい人なんですね!」
「はい。お嬢様も妹様もお優しい方々です」
美鈴と早苗はお互いの身近な関係者について話していた。優しい“人”ではないのだがそのまま話を続けた。
「私は紅魔館の門番としてはまだまだ力不足です。だから師匠と修行をすることになったのですが…」
「……」
美鈴はまた暗い顔をした。先ほどの修業中に何かあったんだろうと早苗は感じ取った。
「美鈴さん、さっき何かあったんですよね?何があったのか聞かせてもらえませんか?」
「でも…」
美鈴は躊躇った。この暗い気持ちを早苗にまで移したくなかったからだ。
「私ってそんなに頼りなさそうですか?これでも一応神様ですよ!…助言の一つくらいしたいです!」
「早苗さん…」
早苗の気持ちが伝わった美鈴は正直に話した。
中華説明中
「むむ、なるほど。そんなことがあったのですね」
美鈴は全部説明した。全部といってもそんなに話すことはなかったのだが。
「これは師匠が私のことを見限ったのではないかと思って…」
「…美鈴さんって思ったより繊細なんですね」
「えっ?」
「見限ったのなら午後からの修業はしないと思うし、ベジータさんは美鈴さんに関わろうとはしないと思います」
「それはそうですけど…」
「ああっ!もうっ!ネチネチしてますね!」
急に立ち止まった早苗は美鈴の前で仁王立ちした。
「ひゃ、ひゃい!?」
早苗がいきなり大声を出したので美鈴はビックリした。
「ちょっとネガティヴすぎです!ベジータさんは今の美鈴さんでは修行をしても無駄だと思っただけだと思います!」
「だから気分転換させに神社に戻らせたんですよ!そこまで深く考える必要はないです!」
「…私が暗い顔をしていたから」
「それと気持ちの問題だと思います。勝てるかわからないと思いながら修行しても意味がないと思いますしね」
「美鈴さんは美鈴さんらしくしてればいいんです!ベジータさんもその美鈴さんだからこそ私たちに勝てると確信したんですから!」
右手の親指の裏をピッと見せながら早苗は言った。そして語り終わった後、はっ!と素に戻った。
「す、すいません!何も知らないくせに私っ!」
アタフタと慌てている。
「いや、ありがとうございます。早苗さんのおかげで吹っ切れることができました!私は私らしく…修行に取り組もうと思います!」
美鈴は早苗に礼を言った。その時の顔はさっきのような引きつった笑顔ではなく満面の笑みだった。
「よかったです!じゃあ時間も無くなってきたしそろそろ行きましょうか!」
「はい!……それにしても“思ったより”繊細っていうのは少し傷付きました…」
ガッカリしながら美鈴は言った。
「あ、いや、違うんです!あれは!」
冷や汗をダラダラ流しながら早苗は弁解しようとしている。
「ふふ…冗談です!行きましょうか!」
もうさっきまでの美鈴ではなく、いつもの美鈴に戻っていた。
「ふぅ…これくらいですかね。…あれ?早苗さん?」
人里に着き、大量の食材を買った2人。気づくといつの間にか早苗がいなくなっていた。
「美鈴さーん!こっちです!」
少し離れた所から早苗は手を大きく振っていた。美鈴も早苗がいるところに近づいていった。
「お団子屋さん…ですか」
早苗がいたところは団子屋だった。ここに寄って行こうということであった。
「寄り道なんていいんですか?お二人になにか…」
「いいんです!息抜きっていうのは必要ですからね!」
そういってお店の人に話しかける。
「すいませーん!お団子2本ずつ下さい!」
「はいよ〜、ありゃお嬢さんたちかわいいねぇ。1人1本おまけしとくね〜」
「えー!全然そんなことないですよ〜♪ありがとうございます♪」
なんか慣れてるな…と美鈴は思った。
「よいしょっと、じゃあ食べましょうか!」
2人用の席を見つけ2人は座った。お店の中は家族連れのお客さんなどでいっぱいである。美鈴は妖怪なのだが見た目は人間と変わらないので誰も気づかない。
「そうですね、じゃあいただき…」
「オラァ!よこせやァ!!」
急に男の粗い声が響いた。
「な、なにするんですか…ああ!誰か捕まえてー!!」
「ん?何事ですか?」
団子を食べていた早苗が何かに気づいた。恐らく強盗がお店のお客さんの荷物を奪ったのだろう。
「!! 早苗さん!私たちの荷物を見ててください!」
そういった後美鈴は強盗を猛スピードで追いかけた。
「ちょ、ちょっと!美鈴さーん!?あ!団子がァァァ!!!」
早苗の声は既に美鈴には届かなかった。
はい、第23話でした。
人里治安悪すぎぃ!!と思いましたがストーリーのためには仕方ないのです。 人里は犠牲になったのだ…
ではここで終わります。お疲れ様でした。