悪いものでも食べたのか…お腹が痛いです。
「私を…この紅 美鈴を弟子にしてくださいッ!!!」
思わず大きな声で言ってしまった。
「…それが今起きた怪我人に対する第一声か?」
ベジータは正直な感想を言った。
「あ…いや、えへへ…」
やれやれ…とベジータは息を吐いた。そして答えは…
「何を思って言ったのかはしらんが…オレはキサマを弟子にするような気は無い」
「えっ…」
答えはNOだった。
「オレはこの幻想郷に戦いにきた。それは己のためにだ。他の奴などどうでもいい、オレはオレのために闘う」
これはベジータの本音だった。ベジータは自分が強くなることを第一に、いやそれだけしか考えていないので他人の事などに構っている暇などないからだ。
「それにオレは他の強い奴らとも戦わねばならん。いつまでもここで油を売ってる暇などない」
理由もつけて完璧に断ったのだが美鈴は諦めない。
「お、お願いします!私も強くなりたいんです!紅魔館の門番として…まだまだ私は実力不足です。だから今以上に強くなってお嬢様たちをお守りしなければいけないんです!」
「知った事か、そういうのは自分1人でやるんだな」
ベジータは美鈴をグンと突き離す。
「……」
美鈴は少し考えたあとこう言った。
「…怖いのですか?」
「なんだと?」
「ベジータさんが私に修行をつけて、私がいずれベジータさんを追い越してしまうのが怖いのですか?」
美鈴は賭けに出た。こう言えばベジータが「そんなことありえるか!いいだろう!」と言ってくれると思ったからだ。
しかしこの発言で1番まずいのはプライドを傷つけられたベジータが怒ってしまうことだ。
怒って帰ってしまえば弟子にしてもらえないどころか、これからの関係すら危うくなってしまう…ということだ。
しかし、普通に頼んでも絶対に無理と考えた美鈴はこう賭けに出たのだ。
しかし、ベジータの答えは美鈴の予想を外れていた。
「…ああ、そうかもな」
「!!」
プライドの高そうなベジータのこの発言で美鈴は今日1番驚いた。
「…オレにはライバルがいる。オレとそいつが最初に会ったとき、オレの方が奴より強かった」
ベジータは身の上話を始めた。
「だが…激しい修行や戦いの末、奴はオレを超えやがった…圧倒的強さを誇る、王子である…このオレをだッ!」
「(王子…?)」
「無論、オレも修行を怠った事などない。しかし、オレは遂に奴を超えることはできなかった」
「もうオレは奴の事を追いかけはしない。…ただ純粋に自分の限界を知りたいがために修行をしていた」
「だが、最後にたった1つのチャンスが生まれた。それがこの幻想郷だ。ここでの修行があればオレは奴を超えることができるかもしれん。…その点だけあの女には感謝している」
ところどころ説明が足りないところがあり、わからない点もあったが、ベジータの言いたいことは大体は美鈴に伝わった。
「おれは無意識に感じているのかもしれんな。また『追い越される』ことの恐怖を。自分がどんなに修行しても敵わない高みに登られることを」
ここが異世界ということもあってかベジータは心の奥底の本音を口に出していた。元の世界の者には口が裂けても言わないだろう、美鈴には心を少し許した証拠であった。
ここまで話を聞いた上で美鈴はもうベジータに弟子入りすることは諦めていた。ここまで覚悟を持って強くなりたいベジータをみて、自分に構ってる暇なんてないと悟ったからだ。
「すいませんベジータさん、私はあなたの事をなにも知らなかったのにあんな生意気な事…」
「なぜ謝る」
「えっ?」
「どうやらオレは丸くなりすぎていたらしい…こんな考えをもっちまうようになるとはな」
「このベジータ様ともあろうものが小娘にこんな情けない事を言っちまうなんてな」
「…超えられたからなんだ。オレがさらなる高みに登ればいいだけだ!」
さっきまでのベジータが戻ってきた気がして美鈴は安心した。
「さっそく修行をするか。…キサマも手伝え」
「……え?いいんですか!?」
「気を使える奴と修行した方がいいと思っただけだ」
「オレはしばらくここで修行をすることにする。邪魔をせんと約束するならキサマにも修行をつけてやらんことはない。…嫌ならいい。1人でやるだけだ」
「や、やりますやります!これからよろしくお願いします師匠ッ!」
「次そう呼んだら殺す!」
「はい師匠ッ!」
「………」
そう言うと2人は外に出て修行を始めるのであった。
はい、第14話でした。
こんなベジータも…たまにはいいよね?
これから先の話があまり見えてこなくてクオリティが下がるかも知れません(下がりようない)
それでも一生懸命考えますので次からもよろしくお願いします。