狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第45巻 猫姉妹の力

 ~夜叉達が進む一方~

 

「姉様、引っ付かないで下さい。尻尾引き抜きますよ」

 

 

「酷い!お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはないにゃ!」

 

 瞳に涙を浮かべ、着物の袖で口元を隠しながらそう言う黒歌。そんな姉に対して、うんざりした様な顔をする白音。彼女達は徒歩で体育館の方へと向かっていた。

 

「一応、試合は始まっているんですよ?油断しててやられるとか、御主人様に顔向けできませんよ?」

 

 

「白音………私があんな奴等にやられると思ってるの?」

 

 

「そうは思いませんが………油断大敵ですよ」

 

 

「まぁ、それに関しては同感ね………あっ体育館が見えて来たわよ?」

 

 

「中に1、2、3………6人ですね」

 

 

「しかも何の罠も仕掛けずに堂々と待ってるなんて………完全に舐められてるわね」

 

 黒歌と白音は猫魈と呼ばれる種族の生き残りであり、猫魈は猫又でありながら仙術を使用できる珍しい種族である。故に悪魔の駒が出来てから狙われていた一族だ。

 

 仙術は自然のエネルギーを取り込む事で自分の力を飛躍的に上げ、肉体強化から、生命エネルギーの生産しそれを他者へ分け与える事まで出来き、習得すれば周囲の命の気配や気の流れを知る事が出来るので、隠れている者や罠などを感知できる。

 

「まぁ、罠もない様ですし、このまま入りますか?」

 

 

「そうね、折角待っていてくれたみたいだしね」

 

 姉妹はそう言うと体育館の中へと入って行った。

 

 

 

 

 体育館の中には姉妹が感知した通り、ライザーの眷族が6人待ち構えていた。

 

「よく来たな。妖怪共」

 

 

「此処まで堂々と待たれてるとねぇ…………取り敢えず自己紹介が必要ね。私は黒歌、見ての通り猫又よ」

 

 

「同じく猫又の白音です」

 

 

「其方が名乗ったのであれば此方も名乗ろう。私は雪蘭(シュエラン)、ライザー様の戦車(ルーク)だ」

 

 中華風の少女・雪蘭がそう名乗った。

 

「私はミラ。駒は兵士(ポーン)よ、武器はこれよ」

 

 そう言って和服を着た少女・ミラが棍棒を見せながらそう言った。

 

兵士(ポーン)のイルです~」

 

 

「同じく兵士(ポーン)のネル」

 

 

「「バラバラにしてあげる!」」

 

 双子の姉妹イルとネルがそう言いながら、手に持つチェーンソーのエンジンを作動させた。

 

「私はニィにゃ~」

 

 

「リィにゃ~」

 

 

「「同じ猫又にゃ!」」

 

 セーラー服を着た水色髪と赤髪の少女がそう名乗った。どうやら、猫又らしい。

 

 両者が自己紹介を済ませ、互いに殺気立ち始める。

 

「戦う前に1つ言っておきます。降参して下さい、貴方達は私と姉様には勝てません」

 

 

「そうね。大人しく去りなさいな。特のそっちの猫又ちゃん達………同じ猫又としては争いたくないわ」

 

 白音と黒歌が彼女達にそう告げた。

 

「ふざけているのか?………戦わずしてその様な事を言うなどと!」

 

 

「あの神といい、お前達といい、一体何様のつもりだ!!」

 

 

「「ふざけないでよ!」」

 

 

「口だけなら何とも言えるにゃ!」

 

 

「お前達も、あの神も、きっと口だけにゃ!」

 

 彼女達はそう言う。しかも此処にいない龍牙王の事まで引合いに出した。

 

「そうですか、残念です。ならもう1つだけ……………………………………」

 

 白音はそう言うと、頭に猫耳が、スカートの下から3本の尾が現れた。

 

「あの方の事まで侮辱したんです。少し痛い目に合って貰います」

 

 

「「「「「「はっ?」」」」」」

 

 白音の発言に唖然とするライザーの眷族達。自分達が下に見られていると思い激昂しようとする。

 

「「「「「ふz」」」」」

 

 

「ぐぅ!?」

 

 雪蘭、イル、ネル、ニィ、リィが叫ぼうとした瞬間、苦悶の声が聞こえた。彼女達がミラの方を見てみると、そこにはミラにボディーブローを入れている黒歌に似た白い猫耳の女性の姿が在った。

 

「いっ何時の間に?!」

 

 

「まっ………まった……く………見えな………かっ………た」

 

 ミラは鳩尾を殴られた為に、肺の中の空気が全て吐き出された様で、途切れ途切れにそう言う。

 

「きっ貴様、一体誰だ?!」

 

 

「白音です………さっきも言いました」

 

 

「「「「「なっ?!」」」」」

 

 黒歌以外の全員が驚いた、先程の白音と今、ミラに拳を叩き込んでいる白音の姿はあまりにも違い過ぎる。具体的には、緩やかな丘が大きな山になっている。即ち、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる…………もっと分かり易く言うとボン・キュ・ボンである。

 

「この程度、仙術を使えば余裕です」

 

 

「仙術?」

 

 

「「まさか猫魈かにゃ?!」」

 

 ニィ、リィだけがどうやら2人が猫魈だと理解した様だが、他の者達は分かっていない様で、仙術がその様な物かも知らない様だ。

 

「その通りよ。私達は猫魈の生き残りよ」

 

 ニィとリィはそれを聞いた瞬間、顔が青ざめ、冷汗が流れ始めた。

 

「猫……魈だ…か…何だか知らないけど!」

 

 白音に殴られ苦しんでいたミラだが、何とか息を整えた様だ。

 

「舐めるn「遅い…はっ!」がっ!?」

 

 膝蹴りで反撃するの為に足を動かそうとしたした瞬間、白音は一度拳をミラの身体から離し、掌を彼女の胸に当てた。その瞬間、ミラの身体が大きく後方に吹き飛んでしまった。

 

「ぐっ!……かはぁ!」

 

 ミラはそのまま、壁に激突する。壁が陥没すると共に、彼女の身体は壁にめり込んだ。どうやらミラは気を失っているらしく、既に動かない。やがて彼女の身体が光に包まれると、このステージより退場した。

 

『らっライザー様の兵士1名脱落』

 

 そうアナウンスが鳴り響き、場が沈黙した。

 

「てっ…」

 

 

「撤退にゃ!」

 

 ニィとリィがそう叫ぶと、雪蘭、イル、ネルの腕を掴んで体育館から出ていった。

 

「ちょっと2人とも!?」

 

 

「敵を前に逃亡なんて」

 

 

「ありえないよ!」

 

 引っ張られている3人がそう言うが、ニィとリィは止まらない。

 

「駄目にゃ!」

 

 

「あれは危険にゃ!」

 

 

「どういう事?確かに見えないほど早かったけど、全員で掛かれば」

 

 雪蘭は残った5人でかかれば何とかなると考えて居る、イルとネルも同意見の様だ。

 

「無理にゃ!私達猫又の一族の中には決して喧嘩を売っちゃ駄目な一族が2ついるにゃ!」

 

 

「1つは豹猫族、凶暴で力も強く、一時は西国でその名を轟かせたにゃ。そしてもう1つは猫魈にゃ!」

 

 

「それってあいつ等の………」

 

 

「猫魈は豹猫族とは正反対に大人しい一族だけど、特異な力を持っているにゃ。それこそが仙術にゃ………風の噂で滅んだって聞いてたけどにゃ」

 

 

「真面に戦っても勝てないにゃ!」

 

 

『その通りよ、お嬢ちゃん達』

 

 声が響くと共に彼女達の前方に青い炎の壁が出現する。彼女達は何とか、炎の壁に当たる前に停止する事ができた。

 

「罠!?」

 

 

「くっ!」

 

 直ぐに逃げようとするが、右も左も後ろも既に炎の壁で塞がれてしまった。

 

「囲まれた?!」

 

 

『終わりね』

 

 

「くっ!こんな事でやられる訳には……」

 

 

『もう終わりです』

 

 

「何処だ?!どこにいる?!」

 

 

『『上です(にゃん)』』

 

 5人が上を見上げると、そこには空に浮いている白音と黒歌がいた。

 

「そろそろ時間が差し迫っているので」

 

 

「終わらせて貰うにゃん」

 

 白音、黒歌、血を別けた姉妹が敵を倒す為にその力を合わせる。2人は手を雪蘭達に向かって翳す。

 

「魔に属する悪魔にとっては少し痛いかも知れませんが………運がなかったと思って諦めて下さい」

 

 

「死なない様には加減するから安心しなさい」

 

 2人の手から白い炎が出現し、それが雪蘭達に向かい放たれる。

 

 仙術の力は周囲の気を取り込むだけではない、邪気を払い、浄化する力を持っている。つまり闇に属する悪魔にとっては致命的な力だ。

 

 それは一瞬だった、雪蘭達の視界が真っ白になった瞬間、凄まじい熱と共に彼女達の意識は強制的に失われた。

 

 

 

 

 

 

「ん~終わったにゃ~」

 

 炎が消え、その場には既に雪蘭達の姿はなかった。

 

「姉様、早く合流しましょう」

 

 

「白音~お姉ちゃん、疲れたから白音成分を補給したいにゃ~」

 

 そう言いながら、白音に抱き着こうとする黒歌。だが白音はそれを避けた。回避された故に黒歌は地面とキスする羽目になった。

 

「いったぁ~」

 

 

「先に行きますよ」

 

 

「えっ?ちょw本気で私を置いて行くつもり!?」

 

 

「来ないなら置いて行きますよ、姉様」

 

 

「ちょっと待っててばぁ!」

 

 先に行ってしまった白音を追い掛ける黒歌。

 

 彼女達は夜叉達と合流する為に、先へと進んだ。


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