狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第41巻 不死鳥、壁に貼り付けられる

 ~駒王学園 旧校舎 オカ研部室前~

 

「此処だな」

 

 龍牙王は夜叉、桔梗、一誠を連れてオカルト研究部の部室に来ていた。その理由は悪魔の魔力を感じたからだ。現在、この地への悪魔の出入り・居住は禁じられている。だと言うのに悪魔が許可を取る事無く入って来た。神として、守護者としてそれを許す訳にはいかないからだ。

 

「この間の事も解決してないってのに」

 

 夜叉はそう言いながら、オカルト研究部の扉に手を掛けるが開かない。

 

「鍵掛かってやがる」

 

 

「それだけではない……この感じ複数の結界が張られている」

 

 

「兄貴、開かないぞ」

 

 夜叉が力尽くで開けようとするが開かず、桔梗が扉に結界が張られている事に気付いた。

 

「多重結界だな………まぁ、我の前では無意味だがな。【開け】」

 

 龍牙王が命じる様に扉に向かい言い放つ。これは先に魔王達に使った【言霊】だ。

 

 言霊の発動条件は言霊に掛ける対象に声が届く事だ。他にも幾つか条件があるものの、生物であれ無機物であれ同じ条件で言霊を行使できる。

 

 ―ガチャ―

 

 故に言霊を使えば、結界が張られていようと鍵が掛かっていようと龍牙王にとっては開錠は簡単だ。

 

『『なっ!?』』

 

 中から驚愕の声が聞こえてくる。龍牙王を先頭に部屋へと入って行く。

 

 中にはリアスを始めとするその眷族達とメイド、チャラ男、その後ろに複数の女性がいた。

 

「勝手に人様の土地に無断で入って来やがったな、悪魔共………御用改めだ、抵抗するなら斬り捨て御免なんで、宜しく」

 

 龍牙王の額には青筋が立っている。直ぐに天下覇道の三剣を抜かないだけ未だ冷静な様だ。

 

「忙しいのに毎度、毎度、問題起こしてくれてどうもありがとう………本来なら此処で獄龍破か冥道残月破を放つ所だが……生憎、此処は学び舎だ。未来を担う子供達の学ぶ場を血で穢したくはないんだ、言い訳があれば聞いてやる」

 

 

「こっこれはその……」

 

 

「下らん理由で我が手を煩わせたならば………魂を消滅させる」

 

 殺気と神気がこの場を支配していた、それを受けリアスとグレイフィアは汗が滝の様に流れる。下手な事は言えない、言えば殺されるだけでは済まされない……悪魔全ての問題へと発展すると彼女達は理解していた。

 

「この後は色々と予定が詰まってるんだ、さっさと答えろ」

 

 

「そっそれは……「なんだ、貴様は?」」

 

 ライザーはこの空気の変化に気付いてない様だ、彼はドカッドカッと龍牙王の前へと歩を進める。

 

「………鳥か」

 

 

「なんだと、この俺が聞いているんだ………ん?いい剣じゃないか、雑魚には似合わん。この俺が貰ってやろう」

 

 そう言って龍牙王の剣に目を付けたライザー、彼は龍牙王の剣へと手を伸ばす。

 

「触れるな下郎、【下がれ】」

 

 

「はぁ?……ぐわっ!!!」

 

 龍牙王が言霊を使う。その力は物理法則を無視して作用する、下がれと言われたライザーの身体は真っ直ぐ吹き飛び壁に叩き付けられた。

 

「ぐっ……ぐぅぅぅ!なっなんだ、この力は、身体が動かん?!」

 

 

「ライザー様?!」

 

 

「貴様ぁーー!!!」

 

 ライザーの眷族の少女達が龍牙王に攻撃を仕掛ける。再び言霊を使おうとするが桔梗が前に出たのを見ると笑みを浮かべ口を閉じた。

 

 桔梗は何処からか札を取り出し、札に息を吹きかけた。

 

「『偉大なる龍神へ申し立て奉る………禍を封じ給え』」

 

 桔梗がそう呟くと、札が光り始め光の鎖へと変化した。鎖は意志が在る様に動きだし、ライザーの眷族達を拘束した。

 

「流石は桔梗……巫女としても腕は我が巫女の中でも上の方だな」

 

 

「いぇ……私など、アーシア様に比べればまだまだです」

 

 

「そっちの悪魔共は動くなよ、桔梗が今使ってる術は魔に属するお前等にとっては毒だぞ」

 

 夜叉がそう悪魔達に警告した。

 

「これは……『バチッ!』っ!」

 

 グレイフィアは鎖に手を近づけてみると弾かれた。そして手は火傷した様な傷ができる。

 

「それは神の力を用いた封印術の1つ。魔が触れれば、神の力に焼かれるのは当然の事だ」

 

 

「ッ……今回の事に関しては我々の不手際による物です。偉大なる神よ、どうかご容赦を」

 

 グレイフィアはそう言うと頭を下げた。

 

「確か貴様は赤い魔王の後ろにいた女か」

 

 

「はい、グレイフィア・ルキフグスと申します。魔王サーゼクス・ルシファーの女王であり、妻です」

 

 

「それで………貴様もあの場にいたなら分かっているな。特例としてそこのガキ共は滅多な事をしない限りは滞在を許可したが…………他の悪魔の出入りは禁じた筈だ。入って来た場合、命はないと」

 

 

「はい、心得ております。此度は完全に此方の不手際です。御身の地へ入る事を禁じる辞令を四大魔王の名の元に各家へ伝達していたのですが………どうやら彼には未だ伝わっていなかった様です」

 

 

「だから許せと?残念ながら我は悪魔にかける慈悲など持っていない」

 

 

「そっそこをどうか!伏してお願いいたします!彼は、ライザー・フェニックス様は此処に居られるリアスお嬢様の婚約者にございます!この結婚には悪魔の未来が」

 

 

「貴様等、悪魔は人間や妖怪の都合など考えずに襲撃し、無理矢理眷族にしている。ならば何故、我が悪魔の都合なんぞ考えねばならん」

 

 

「っ!!!」

 

 それもそうだ、悪魔は妖怪や人間の都合など関係なしに襲い眷族にする輩もいる。それで絶滅した種族もいる。自分達の未来の為の婚姻だから見逃してくれと言うのは都合がよすぎる。

 

「そっそれは……」

 

 

「だが………これから言う条件を飲むならそこの壁に張り付いている小僧を見逃してやろう」

 

 

「ほっ本当ですか!?」

 

 

「悪魔と違って嘘は云わぬ…………」

 

 そして龍牙王は条件を言った。

 

「なっ?!」

 

 

「そっそんな事、出来る訳ないじゃない!」

 

 その条件に過剰に反応したのがリアスである。何故なら条件の1つにリアスに………正確にはリアスの眷族である姫島 朱乃に関する事だった。

 

「ならばそこにいる小僧を殺すだけだ………」

 

 彼はそう言うと叢雲牙を引き抜いた。

 

 グレイフィアは迷っていた、龍牙王の出した条件は2つだ。1つは朱乃に関する事だが危険ではない、だが問題はもう1つの条件だ。とてもじゃないが、グレイフィア個人で決定できる物ではないからだ。

 

「不死鳥の名を冠する存在であろうと、魂諸共喰われればどうなるやら………」

 

 叢雲牙から禍々しい力が溢れ出す。人間であろうと、妖怪であろうと、地獄の剣の力の前では無力だ。

 

「…………わっ分かりました。もう1つの案件につきましては魔王様にご相談し必ずやどうにか致します、誓います……だから」

 

 

「ほぉ、必ず……ねぇ。神前で誓うという事は、絶対に果たさなければならぬという事だぞ?」

 

 

「この命に代えましても」

 

 グレイフィアは龍牙王の出した条件の1つを飲む事を誓った。では残りもう1つだ。

 

「さて姫島 朱乃、君はどうかな?」

 

 龍牙王は叢雲牙を下げると、笑みを浮かべながら朱乃にそう問う。

 

「わっ私は……」

 

 

「駄目よ!朱乃!」

 

 リアスはその条件に反対した。

 

「別に捕って喰おうって訳じゃない。ある場所に一緒に来て貰うだけの事だ、それが終わればちゃんと送り届けるさ……勿論、無傷でだ。それに貴様には聞いていない、【黙っていろ】」

 

 

「むぐっ!?ん?!ん~!!」

 

 言霊によりリアスは口を強制的に閉じさせられた。

 

「危険な事はない、約束しよう」

 

 

「………分かりました。私が付いていくだけで、ライザー様の命を御助け頂けるなら」

 

 

「約束は守るさ。そっちが襲ってくるなら返り討ちにするがな」

 

 龍牙王はそう言いながら殺気を収めると、叢雲牙を鞘に納めた。同時に壁に張り付いていたライザーとリアスの口に掛けられた言霊が解けた。

 

「きっ貴様!神か?!極東の神の分際で良くもこの俺をぉぉぉ!!」

 

 ライザーは未だ力の差が分かっていない様だ。

 

「止めなさい!ライザー!貴方じゃ勝てないわ!」

 

 

「リアス!お前は黙っていろ!フェニックス家の看板を背負っている俺がコケにされたんだ!相手が誰だろうと許さん!」

 

 どうやら何もできないまま壁に貼り付けられていた事に腹を立てている様だ。

 

「フン………帰るぞ、お前達。数日後に迎えをやるから、そいつについて来てくれ。じゃあな」

 

 龍牙王はそう言うと、夜叉達を引き連れて帰ろうとする。

 

「この……このライザー・フェニックスを無視しやがって!」

 

 ライザーはその手に炎を出現させた。

 

「ライザー様!それ以上するので在れば、力ずくで止めさせて頂きますよ!」

 

 グレイフィアがライザーにそう言った。彼はそう言われると、ビクッと身体を震わせた。

 

「さっ最強のクイーンである貴方まで何故だ!?たかが極東の神風情に何故そこまで頭を下げる!」

 

 

「詳細については話す事はできません。四大魔王により厳命されていますので」

 

 キレているライザーを落ち着かせようとするグレイフィアとリアス。龍牙王はそれを見て詰まらなそうな顔をしていたが、何かに気が付くと廊下の方を見た。

 

『ご主人様、此処にいたんですか』

 

 

「ん?白音か……どうかしたか?」

 

 龍牙王が振り返るとそこには白音と黒歌が立っていた。

 

「ご主人様の力の気配がしたから来たにゃ」

 

 

「何か在ったんですか?」

 

 

「何でもない、帰るぞ」

 

 

「今日はスイーツ祭りに連れて行ってくれるって言いましたよね?」

 

 

「あっ……そうだったな。大丈夫だ、無料優待券はこの通り持って来ている」

 

 そう言うと、龍牙王は袖の下から何かの券を取り出した。そこには【駒王カフェ・デザート食べ放題券】と書いていた。

 

『何故悪魔の俺が極東の神如きに頭を下げねばならん!』

 

 

「皆で行くとするか」

 

 ―ゴオォォォ!―

 

 後ろから炎が迫るが龍牙王はその尾で炎を掻き消した。それに驚いているライザーとその眷族達が聞こえる。

 

「全く………校舎が燃えたらどうするつもりだ。本来なら冥道に送ってやる所だが………あっ良い事思い付いた。おい、そこのメイド」

 

 

「はっはい」

 

 龍牙王はグレイフィアにある事を提案した。それを聞いて少し困惑しているが、直ぐにその提案に了承した。

 

 一体龍牙王は何を提案したのだろうか?




と言う訳でライザーは貼り付けられました。


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