~駒王街 教会跡地 地下空間~
この地の神・龍牙王はこの地に住んでいた家族が傷付けれたのを目の当たりにし、怒りで地獄の剣【叢雲牙】を引き抜き、獄龍破を放とうとしていた。
今まさに放とうとしていたその時、叢雲牙から放たれていた邪気が龍牙王の後方から出現した光に掻き消された。
全員、光の方向を見るとそこには巫女服を着た黒髪の少女が立っていた。
「どうかお止め下さい、龍王さま」
その姿、その声、その匂い、その霊力、龍牙王は忘れる筈がない。この時を幾年も待ち続けていたのだから。
「ふっ………フハハハハハハハハハ!」
龍牙王は彼女の姿を見て、笑い出した。そして、叢雲牙を鞘へ仕舞うとゆっくりと彼女の方へと歩を進めた。
「たわけ………遅い」
彼はそう言いながら、歩を進める。
「申し訳ありません」
巫女は申し訳なさそうに俯いてしまう。
「我があの時、どの様な気持ちでお前が散って行く様をこの腕の中で感じていたと思う?」
「あの時は……ぁあするしか……本当に申し訳ありません」
「いやお前を責めてはいない………あの時、我が地を離れなければお前があの術を行使する事も無かったのだ。許せ」
「そっその様な事はありません!貴方様は何時も、この地の為に、この地で生きる者達の為に身を削ってまで………」
そう彼女は知っていた、龍牙王がギリギリまで本来の眠りを伸ばしていた事を。
「それは当然のこと……土地神となった我の役目、我はそれを果たす為に全霊で行っただけだ。
あれから数千年経った………その間、3度、我は眠りについた。眠っている間にお前や天照達と一緒に過ごした日々を夢に見ていた。間違いなく、これまでで一番幸せだった時間だった」
「龍牙王様」
龍牙王は巫女の顔へと手を伸ばす。
「我にはお前達が必要だ……お前達がいないと我はきっと壊れてしまう。だからまた我の傍に居てくれぬか?」
「っ……はい!」
「おかえり………アイリ」
「ただいま戻りました……龍王さま」
龍牙王はアイリを、アイリは龍牙王を抱き締めた。こうして龍王と巫女は時を越え、再会した。
「……ぁ~良い雰囲気の所、申し訳ないんだが俺達はどうすれば」
この雰囲気を破ってそう声を掛けたのはアザゼルだった。
「チッ、良い所で邪魔しやがって………とまぁ言っても仕方ないか。一度、社に戻るか……この神父共は」
『彼等については私達に任せて頂きましょう』
声と共に、空に光が満ち、白い翼を持つ天使達が現れた。
「ミカエル、遅いぞ」
「申し訳ありません。何分、天界も色々ありますので……ガブリエル、私は彼と共に行きます。此処を任せても大丈夫でしょうか?」
「はい、ミカエル」
こうして龍牙王はアイリとミカエル、アザゼル達を連れて神社へ戻る事にした。