狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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今回はタイトル通りの話です。


第21巻 意外な接点

 ~龍王神社 境内~

 

 

「はぁはぁ……死ぬかと思った」

 

 一誠は神社の境内で四つ這いになり顔を青く染めていた。

 

 

「情けない……たかがあの程度で」

 

 

「無茶言うな!本気で怖かったんだぞ!」

 

 本気で怖かったのか、若干涙目になっている一誠。

 

 

「お戻りでしたか」

 

 声のした方を見ると、巫女姿の桔梗と火鼠の衣で出来た羽織を着た夜叉がいた。

 

 

「巫女姿の日暮さん!?きたぁぁぁぁぁぁ!」

 

 桔梗の巫女姿を見た一誠はどうやら復活した様だ。

 

 

「でもなんで2人が?」

 

 

「だって此処は俺の家だぜ、桔梗は龍神神社の巫女だが……まぁ色々在って此処に住んでる」

 

 

「住んでる!同棲だと!?」

 

 

「そう言う訳ではないのだけど……何故彼を此処へ?」

 

 

「夜叉、此奴に服を貸してやれ。汚れたままで神殿に入れると掃除が大変だ。桔梗はついて来てくれ」

 

 

「あぁ……ほらっ行くぞ、一誠」

 

 

「えっ、ちょっと!?」

 

 一誠は夜叉に引き摺られて、家のある方向へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~神殿~

 

 夜叉の服を借り、着替えた一誠は案内されて神殿の中へ来た。

 

 

「……えっと、夜叉、日暮さん。1つ聞きたいんですけど」

 

 

「なんだ?」

 

 

「此処って神殿だよな」

 

 

「そうだけど……」

 

 

「なら、なんであの人は神殿の奥で座ってるのかと」

 

 神殿の再奥で我が物顔で座っている自分を助けた人物について考えた。

 

 人とは思えない力・容姿→神殿の奥で寛いでいる→神殿の主→神様。

 

 しかし普通ではそんな事を考えもしないが、目の前で普通では考えられない事が起きていたので案外、直ぐに行きついた様だ。

 

 

「あの方は此処の主ですから」

 

 桔梗は瞬きしている一誠にそう言った。

 

 

「(此処は龍王神社……此処の神様は龍王さま………と言う事は目の前にいるのが)……でぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

「一誠、うるさい」

 

 

「えっ……あっ……その……本当に……本当に神様……龍王さま?」

 

 

「然り……我はこの地に祀られる神だ。お前達、人の子は龍王と呼んでいる存在だ。本当の名は違うがな」

 

 一誠はそれを聞くと、何故か頭を下げた。

 

 

「助けて頂いてありがとうございました!」

 

 

「気にする必要はない、この地の子等を護るのが我が役目でもある」

 

 

「さっきの事もそうですけど……その12年前に俺が川で溺れた時の事です!」

 

 

「12年前……ぁあ……あの時の事か」

 

 

 ―アレは12年前……夜叉達が4~5歳頃の事だ。

 

 我は龍眠より目覚めて、溜まっていた仕事をして土地の調律を行っていた時の事だ。森の中で惨殺死体が出たとかで……それが人ならざる者の仕業と聞き、そこへ赴き解決した。確か百足上臈だったか……原作で幾度も出てきたな。この世界に来て、見てなかったと思ったら今頃出てきたのかよ思ったくらいだ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~12年前~

 

 駒王の山奥で上半身は人間の女性、下半身は百足になっている妖怪がいた。この妖怪は百足上臈、原作でも幾度か出てきた妖怪である。

 

 百足上臈は何かを貪っていた。その手には無残に殺された男が握られており、百足上臈は男の身体を喰らっていた。

 

 

「この街にいると言われている巫女は凄まじい霊力の持ち主だとか……ククク、喰ろうてやる。そう言えばこの街の神はなんと言ったか?」

 

 

「おい、お前」

 

 

「なっ!?」

 

 百足上臈は突然、声を掛けられて振り返ると白銀の少年が立っていた。

 

 

「貴様……ん?百足上臈、今頃かよ……まぁいいや。人を喰らっているのか……近頃の惨殺は貴様の仕業か?」

 

 

「くっ!だとしたらどうした!?」

 

 

「殺す……我が土地の子等を傷付けられるのは困る」

 

 

「貴様、この地の土地神か!ッ!なんだこの巨大な力は!?何者!?」

 

 

「知っていてきたのではないのか……我が名は龍牙王だ」

 

 

「りゅ……りゅう…‥がおう……あっあの伝説の龍神!?」

 

 

「【滅魂爪】」

 

 百足上臈は龍牙王の名を聞き驚いている間に、爪で引き裂かれた。

 

 

「でっ出番これだけぇ~!?」

 

 

「桔梗を狙ってきた時点……と言うか、この地で子等を手に掛けた時点で貴様の死は決まっている。さっさと死ね」

 

 出てきた所なのに終わってしまった百足上臈はそう叫ぶと消滅してしまった。

 

 

「全く……取り敢えず……ん?この男……何処かで?まぁいいや」

 

 龍牙王は手に付いた百足上臈の血を振り払うと、腰に刺さっている天生牙を引き抜いた。

 

 ―ドクン!―

 

 天生牙が脈動を打つと、龍牙王は無残に殺された男を見た。龍牙王の眼には男の亡骸に群がる小さい鬼の様な者達が見える。この者達は魂を冥界へと導く【冥界の使い】だ。

 

 龍牙王は使い達に向かい天生牙を振るった。天生牙の一閃により、冥界の使い達は消滅した。そして男は一瞬、光に包まれると男は息を吹き返した。

 

 

「はっ!?此処は!?確か私は……化物に」

 

 

「ちゃんと生き返ったか」

 

 龍牙王は天生牙を鞘に納めると、男を見た。

 

 

「あっあなたは……」

 

 

「我の事はいい。それよりも体に異常はないか?」

 

 

「はっはい……ですが化物が」

 

 

「案ずるな。奴は始末した……あっ思い出した!」

 

 龍牙王は何かを思い出した様に手を叩いた。

 

 

「確か数年前に神社に来てた夫婦だ。確か子供が欲しいと祈願されたな……中々子供が出来ないから来たんだったな。かなり熱心に願ってて、幾度も来てたからな」

 

 

「どっどうしてそれを……」

 

 

「あっ……ぁ~まぁ気にするな。取り敢えず街まで送ってやる」

 

 龍牙王は自分の尾で男を掴み上げると、空へと飛び上がる。

 

 

「うっうわぁぁぁっぁぁ!!とんでるぅ~!?」

 

 男は空を飛んだ事で驚きの声を上げた。そして龍牙王は街の方へと向かい飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍牙王の尾の中で下を見ながら震えている男。現在の高度は地上から1000mほど……落ちたら確実にミートソースをぶちまける事になるだろう。

 

 

「安心するといい、落とす気はないからジッとしてろ」

 

 

「あっ……はい。あっあの貴方は一体」

 

 

「詮索するな。世の中には知らなくていい事がある。ん?雨が降ってきたな……」

 

 どうやら雨が降って来た様だ。急ごうと速度を上げようとした時、龍牙王はふっと下を見た時の事だ。丁度、川が見えた。何故か川に人が集まっていた。

 

 川は先日からの雨で増水しており、流れる水も濁っているのだが特に変わりない様に見えた。

 

 龍牙王は近くに降りた。何故か他の者達は気付いていないが、神の力なのだろう。助けられた男も龍牙王の尾から解放された。

 

 龍牙王と男が人の集まっている方に近付いてみる。

 

 

「レスキューは未だか!?早くしないと子供が」

 

 

「子供?」

 

 龍牙王と男はその言葉を聞き、人々の視線の方向を見てみると増水した川に4~5歳くらいの子供がいた。どうやら何等かの理由で川に落ちた様だ。

 

 川の幅は20m程で普段は川岸で子供が遊べるのだが、増水でかなり深くなっている上に流れも速い。子供は川の真中辺りにある中州にいるが、天候は雨だ。徐々に川の水は増えてくるだろう。そうなれば子供が流されるのは言うまでもない。

 

 

「早く助けを……あれ……一誠!?」

 

 龍牙王に助けられた男は子供を見てそう叫ぶ。どうやら顔見知りの様だ。

 

 

「一誠!?なんでそんなところに!!」

 

 

「……(まずいな。このままじゃ、助けが来る前に)」

 

 龍牙王はこの駒王の地の神。土地の天気や気の流れなどは手に取る様に分かる。雨は強くなり、数分もせぬ内に子供は流されてしまう事が理解できた。

 

 

「はぁ……また陽牙と陰牙に文句を言われるだろうが……」

 

 龍牙王が動こうとした時、子供は流されてしまった。

 

 

「やばっ!」

 

 それを見ると、直ぐに増水する川の中へと飛び込んだ。普通の人間なら助ける事など不可能に近いが、神ならば……。

 

 見ていた人々も何とかしようと動くが、次の瞬間、眩い光が川の一面を覆った。それにより人々の視界は一時的に奪われた。

 

 皆の視界が回復すると、急いで川を見る。先程と変わらぬ荒れた川だ、子供の姿もない。

 

 

「……あっ、一誠は!?」

 

 助けられた男は先程の子供の事を思い出すと、川を必死に探すが見つかる訳もなく。男は飛び込もうとするが、周りの者達に止められた。

 

 

「離して下さい!息子が……息子が!」

 

 

「あれ……あそこで寝てるの、さっき流された子じゃ」

 

 男を止めていた内の1人が、近くで眠っている子供を見つけた。

 

 

「一誠……一誠!?」

 

 男は子供に駆け寄った。子供はどうやら気を失っているだけの様で、目立った外傷もない。だが何故、流された筈の子供が自分達の近くで寝ているのか分からなかった。

 

 

「これは……これは龍王さまじゃ!龍王さまの御加護じゃ!」

 

 人ごみの中に居た、老人がそう言った。そして老人は神社の方向に向かって手を合わせている。それが広がり皆まで手を合わせだした。

 

 これが龍牙王と一誠、一誠の父・兵藤 一也の出会いであった。

 

 ~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―龍王さま……この駒王の地の神であり、我の事だ。

 

 我は街に出て、時折困っている者達を助けている。

 

 時に妖怪を倒し、病に苦しむ者達に巫女を通じて治療法を伝授したり、池が干上がり雨が降らなかった時には雨を降らし、貧しい少女に嫁入り道具一式をやったりしたか。

 

 正直、例を上げればキリがない。そんな中で偶に我の姿を視える者もいた、特に子供は見える事が多い。子供は純粋だからな、見えなくていい物を見る時期がある。

 

 そんな助けられた者達から噂が広がり、村全体が信仰する。

 

 日本の神は人を見守る存在であり時折、巫女を通じて意志を伝える。その様な存在なのだが、我は前世が人であるのでそんなのは知らん。

 

 故に、現在でも我を信仰する者達が多い。我は別に信仰を狙って助けた訳ではないのだが、結果的に信仰を増やす事になった。

 

 まぁ、側近の陽牙と陰牙達の眷族……アイツ等は神社の狛犬達で、我に仕える最も古い者だ。奴等は忠義に篤い者だが、事ある毎に神の在り方やら、何やら小言を言ってくる。

 

 我、神なのに-




 名前:兵藤 一也(ひょうどう かずや)



 一誠の父。何より、妻と一誠を愛している。しかし幼い頃から女の尻を追い掛ける一誠の将来を心配している(主に逮捕されないかどうか)。

 誠実で優しく、現在は一誠が溺れた一件で何があっても対処できる様に日々身体を鍛えているらしく、細マッチョで若干原作より若々しくなっている。

 一誠が生まれる前は、子供が出来ず妻と共に困っていた所、龍王神社の事を聞き神頼みをしたところ、一誠が出来たとか。これに龍牙王が力を貸したかどうかは不明。

 初登場時は何故か、百足上臈に襲われており、喰われていたが天生牙により蘇えった。










 ・兵藤 一誠



 特に原作と変わらない主人公。

 しかし、子供頃に龍牙王に助けられたからか信心深い。












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