ー龍牙王だ。まずは此れまでの事を話そう。
犬夜叉と桔梗殿はちゃんとした結婚式を上げた。うん、桔梗殿の白無垢を美しかった……犬夜叉は……贔屓目で見ても馬子にも衣装みたいな感じだったな。
式には犬夜叉の家族として我、御母堂、親父、十六夜殿が参加した。えっ?死人がいる?問題ない、黄泉の王とは知り合いだ。酒で手をうった。
それから、変わった事と言えば桔梗殿の村に我が祀られる事になった。まぁ、我を祀ると言う事はその土地が我の領地となると言うことだ。この土地を襲おうとするバカな妖怪もいなくなるだろう。個人的には犬夜叉と桔梗殿、そしてその子孫を護れるならと言うことで引き受けた。そして神社には巫女として桔梗殿とその妹の楓が着任した。
ちゃんと手続きはしたし、高天原の神の許可も貰った。天照に言ったら二つ返事で良いよって言われた。何で最高神と知り合いなのか?色々とあんだよ……。
丁度、近くに我が所有する土地も在ったのでそこと合併した。名前は特に決めてないが……人間は
ん?
悪魔に対して当たりが強い?悪魔には因縁があるからな、それはいずれ話そう。それにしても……D×Dの舞台が我が土地になるとは……これは気を引き締めよう。
それからなんだっけ……犬夜叉は人間になったものの、身体能力は普通の人間を遥かに凌ぐ、刀々斎に打たせた我の牙で出来た剣を二振り渡した。
1つは結界を張る剣、もう1つは魔や邪を祓う剣だ。桔梗殿と楓ちゃんも我が加護を受け、霊力があがり3人で妖怪退治や悪霊払いをして生計をたてている。
犬夜叉が人間になって50年が過ぎた。犬夜叉も桔梗殿も大往生し、今はその孫達が神社を仕切っている。
そんな時、殺生丸がやって来た。原作の様に邪見とりんを連れて…。我はそれを見て、殺生丸に鉄砕牙を渡した。このまま行けば、殺生丸も答えを見つけると思ったからだ。
そして、その考えは当たった。冥道残月破を手にして、りんを再び死なせてしまい、愛する者を失った哀しみを知った。そして、鉄砕牙への執着を捨て、自分自身の牙・爆砕牙を手に入れた。
まぁ、鉄砕牙はほぼ完全状態で渡してたからな。この50年で、月夜丸、宝仙鬼、奪鬼などと関わる事が在ったので冥道残月破以外は習得済みだったしな。因みに旅の途中で弥勒やら珊瑚にも会った、そんで我は二人の恋のキューピットになったりと色々在ったな。
それから少し経ってから殺生丸が結婚式すると言ってきた。相手は勿論、りんちゃんだ。
だが婚姻する前に、一度全力で戦ってほしいと殺生丸に頼まれたー
~荒野~
荒野に立ち、互いに相手を見ている龍牙王と殺生丸。
殺生丸の腰には鉄砕牙と天生牙はない。前にやった闘鬼神は折れたらしい、鉄砕牙達は今は此処から離れている場所に御母堂と共にいるりんちゃんに預けてる。どうやら自分自身の力だけで我に挑む様だ。
殺生丸は爆砕牙を抜き構える。龍牙王も自分の尾の中の牙を取り出した。その牙は普通の刀と変わらぬが、峰の部分だけが真っ黒になっている。
殺生丸はそれを見て、笑みを浮かべた。その理由は龍牙王が出した牙だ、今まで兄弟で戦うのに決して出さなかった自身の牙を龍牙王が出した。それは兄自身が自分を牙を出すべき相手だと認識してくれた、認めてくれたと思ったのだ。
先に動いたのは殺生丸だった。人の目では見えぬ程、速い動きで龍牙王に迫り爆砕牙を降り下ろす。
龍牙王はそれが見えていた、故に殺生丸の一撃を右手の牙で受け止めた。だが殺生丸も受け止められるのは分かっていた。父と同じく目指した最強がただの一撃で倒せる訳もない。
殺生丸は直ぐに爆砕牙を引き、連続で斬撃を繰り出した。爆砕牙の能力は斬りつけた部位から爆発が起こり、全体にダメージが広がると言うものだ。原作でもチート的な武器だった、故に爆砕牙を同じ敵に対して幾度も振るう事など殆どなかった。
しかし龍牙王には、その牙が届く前に防がれている。
「はあぁぁぁぁぁ!」
原作でも掛け声など殆ど出さずクールを貫いていた殺生丸が掛け声をだし、斬撃が先ほどより速くなる。次第に土煙が龍牙王を包み込む、しかしそんな事は殺生丸に関係ない。斬撃は確実に防がれ、匂いは其処にある。自身の持てる全てを掛けて越える壁だ、一瞬たりとも気が抜けない。
「!?」
殺生丸は爆砕牙が動かなくなったことに気付く。そして、土煙の中の龍牙王の気配が変わった。土煙の中から感じるのはかつて目指した兄の気配だった。次の瞬間、土煙が何かに吹き飛ばされた。
そして、龍牙王が立っていた場所に素手で爆砕牙を止めている青年の姿があった。
殺生丸と同じ位の背丈、闘牙王と似ている顔立ち、額の太陽、頬の紋様、首から掛かる宝珠、鎧、3本の尾。それは本来の姿の龍牙王だ。
「!」
殺生丸はその姿を見て、表情には出さないが歓喜していた。兄がこの姿を出すのは、本気になる時のみ……それは兄が本気を出すに値すると、認めてくれたのだ。それは何事にも代えがたい喜びだ。
「強くなったな、殺生丸」
「それも、兄上が居たからこそ。父上亡き今、兄上こそ私が越えべき最強だったからです」
「そうか……殺生丸、1つ教えてやろう。我や父上を越えると言うことは、お前が愛すべき者を護り通した時だ」
殺生丸は兄な言葉を黙って聞いていた。
「親父にも、我にも出来なかったこと……お前なら出来るだろう。後、りんちゃんは人間だ。産まれてくるのも半妖だ」
「心得ています」
「ならば言うまい。殺生丸、よくぞ此処まで這い上がってきたな。流石は我が弟だ」
「兄上…」
その言葉こそ、殺生丸が父や兄から言って貰いたかった言葉だ。そして龍牙王の持つ牙に力が収束していくのに気付いた殺生丸は、自分の妖気を自身に纏わせる。
「これは我からの餞別だ。心して受け取れ……陰陽牙【
陰陽牙より放たれた光と闇による破壊の力が、龍牙王と殺生丸を呑み込んだ。
眩い閃光が起こり、消えると荒野に巨大なクレーターが出来ていた。その中心には少年の姿の龍牙王と殺生丸が倒れていた。二人ともボロボロである。
こうして、兄弟の決闘は終わった。
~天空城~
「いだだだだ!御母堂!もう少し優しく」
「至近距離であんな技を放ったのは自分であろう、長男殿。この位は我慢されよ」
御母堂に傷の手当てを受けている龍牙王。
「殺生丸様、大丈夫?」
「……」
2人とも、手当てなどせずとも時間を掛ければ勝手に治るが動けない痛みで2人はされるがまま治療を受けていた。
「痛っ……それで殺生丸、満足したか?」
「はい……」
「殺生丸も満足した所で……婚姻の準備だな」
御母堂がそう言い出した。龍牙王はそれを聞いて、ニヤッと笑みを浮かべた。殺生丸はそれを見て、悪寒がした。
(兄上のあの顔……ろくでもないことを考えているな。何としても止める)
殺生丸は経験上、龍牙王があの笑みを浮かべるとろくな事にならないのを知っていたため、何とか止めようと動こうとする。しかし、敵は龍牙王だけではない。
ーしゅる…ギュ!ー
殺生丸は圧迫感を感じて自分の体を見てみると、体が太い注連縄で縛られていた。しかも、札の様な物まで貼られている。後ろを見ると、御母堂がニコッと笑いながら縄を結んでいた。
注連縄とは、元来神社等で穢れを寄せ付けぬ様にする他に神の力を社の内に封じる為の物だ。貼られている札は妖力封じの物、そして穢れ、このコンボでは流石の殺生丸も動けなくなった。
「りんちゃん、良いものを見せよう」
龍牙王が自分の尾から出したのは、自分が製作した殺生丸の幻の写真集「せっくん、可愛い」だ。
それから、鑑賞会(龍牙王・御母堂の解説付)は殺生丸にとって地獄だったのは言うまでもない。