狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第5巻 牙

 ~火山~

 

 火山帯にある巨大な魚の骨で出来た工房。その中に1人の妖怪が住んでいた。

 

 

「ふぁ~……なんか嫌な予感がする。殺生丸でも来るのかな?………逃げよう」

 

 このよぼよぼの妖怪は刀々斎。見た目によらず犬夜叉の父・闘牙王の牙から鉄砕牙と天生牙を作った刀匠だ。刀々斎は嫌な予感を感じて、この場から去ろうとしていた。

 

 

「刀々斎」

 

 

「おわぁ!?儂はお前に刀を打たんぞ!……って龍牙王、お前さんか」

 

 

「あぁ……貴様に仕事を依頼しに来た」

 

 

「はぁ?お前さんはもう牙を多く持ってるだろうに……これ以上何を望む?」

 

 刀々斎は冥加爺と同じ、闘牙王に仕えていた妖怪達の1人だ。

 

 

「守護の刀……そして人を禍より護る刀だ」

 

 

「はぁ?それならお前さんも持ってるだろう」

 

 

「あぁ、しかし人の身が扱うには強大過ぎるから我以外に使えん。だから人……正しい心を持つ人間だけが使える刀を打ってくれ」

 

 

「むぅ……分かった。何を素材にするかのぅ……お主の注文通りに作るなら相応の物がないと」

 

 

「素材なら此処にある」

 

 刀々斎は龍牙王は口を開き、左側の上の牙をへし折った。

 

 

「なっ……なぁ~!!なんて事しやがんだ!!!半分とは言え狗妖怪の牙をへし折るなんて!その牙にはお前の力が何百年……いやお前さんなら何千年分の力が蓄積されてるだろうが!」

 

 

「純粋な狗妖怪ではないからな、牙はまた再生する。我が力の大元は宝玉だ、牙など大した物ではない」

 

 

「それでも、牙だけで親方様の半分以上の力を持ってるじゃねぇか……はぁ分かった。作ってやるよぉ……お前さんにはあの時」

 

 刀々斎が何かを言おうとするが、龍牙王が睨みつける。それ以上言うなと言う目だ。

 

 

「ッ!すまん……それにしても誰が持つんだ?」

 

 刀々斎は牙を受け取ると、作業に入る。

 

 

「犬夜叉だ」

 

 

「犬夜叉?……アイツには鉄砕牙が……ってなんでまたお前が持ってるんだ?」

 

 

「人間になったからな。もうアイツには使えん、だから代わりの物を用意してやろうと思ってな」

 

 

「はぁ?!」

 

 龍牙王は刀々斎に事情を説明した。犬夜叉と桔梗の事、四魂の玉の事を。

 

 

「それにしても……全く親子だなぁ」

 

 

「なにが?」

 

 

「親方様も鉄砕牙を作る時、躊躇なく牙をへし折りやがったんだ……十六夜を護る為の力が欲しいってよ」

 

 刀々斎は龍牙王を見る、その姿がかつての主・闘牙王の姿と重なった。

 

 

「……では頼んだぞ」

 

 龍牙王はそう言うと、去って行った。

 

 

「親方様、ますます、アイツはあんたに似てきたぜ……はぁ、これも儂等の性じゃなぁ。儂等があの時…」

 

 その呟きは金槌の音に打ち消されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍牙王は飛んでいると懐かしい匂いを感じた。

 

 

「殺生丸か」

 

 

「お久しぶりです、兄上」

 

 それはもう一人の弟・殺生丸だった。

 

 

「やはり鉄砕牙は兄上の元に戻っていたか……兄上、鉄砕牙と叢雲牙を私に譲って頂きたい」

 

 

「まだ言っとるのか、お前は……親父と同じ戦バカめ」

 

 

「何と仰ろうが構いませぬ。ですが、その牙達こそ最強への道を開く力……何としても手に入れる」

 

 その眼は唯、純粋に力を求める眼だ。父を超える為に力を求めている殺生丸。だがそれだけでは駄目だと龍牙王は知っていた。

 

 

「殺生丸、お前に守るべきものはあるか?」

 

 

「!?」

 

 殺生丸は兄の言葉を聞いて驚いた。その言葉は正に最後に父が自分に聞いてきた言葉だ。

 

 

「守らねば生きていけぬ様な弱者は不要」

 

 殺生丸はそう伝えた。彼にとっては力こそが総て、強者こそが絶対だ。

 

 

「……殺生丸、いつかお前にも出来るだろう。もしその時が来れば鉄砕牙は譲ろう」

 

 龍牙王はそれだけ言うとその場から去った。


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