狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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今回は少し時間が飛びますが、犬夜叉と桔梗の話がメインです。


第3巻 四魂の玉

 ~龍牙王と桔梗が出会って1年~

 

 龍牙王は突然、犬夜叉に呼び出された。

 

 犬夜叉が龍牙王を呼び出す方法は1つ。かつて龍牙王から貰った鈴がある、それは特殊な力を発し龍牙王だけが知覚できる。幼き頃に犬夜叉に渡した物だ、しかし鳴らされた事は半妖である犬夜叉が力を失う朔の日……それも幼き頃くらいのものだろう。

 

 鈴が鳴らされた事に気付き、龍牙王は光の如き速さで犬夜叉の元へと翔けつけた。

 

 

「どうした、犬夜叉?」

 

 

「兄貴……ちょっと相談したい事がある」

 

 顔を赤くしながらそう言う犬夜叉。

 

 

「相談?」

 

 

「あぁ……その桔梗との事でだな。どうすればいいのか、分からなくて……冥加爺が兄貴なら分かるだろうって言うから」

 

 

「(なに、この弟……可愛いんですけど)……ほぅ冥加がね。隠れてないで、出て来い冥加」

 

 龍牙王がそう言うと、犬夜叉の髪の中から蚤の妖怪・冥加が出てきた。

 

 

「おっお久しぶりでございます、龍牙王様」

 

 

「あぁ」

 

 冥加は龍牙王を見て、俯いている。

 

 

「冥加爺?そういや、冥加爺は昔から兄貴と顔を合わせたがらないな」

 

 

「フン……冥加、あの時の事は貴様の責ではない」

 

 

「っ!しかし、儂等がいながら……『黙れ、それ以上言うな』」

 

 龍牙王から殺気が向けられ、硬直してしまった冥加爺。犬夜叉もその様な兄の顔を見た事ないため、全身から汗を噴き出している。だが彼は直ぐに何時もの表情になると、犬夜叉に顔を向けた。

 

 

「冥加、我はお前を恨んでおらぬし、アイツだってそれを望まぬ」

 

 

「龍牙王様……」

 

 

「それで、犬夜叉、何の用だ?」

 

 

「あっ……あぁ」

 

 犬夜叉は話し始めた、この1年桔梗と共に四魂の玉を狙う妖怪や各地の妖怪を退治してきた。その中で風の傷、爆流破(これは龍牙王に言われて、竜骨精を倒しに行った)を覚え、自分も強くなれたと。そして桔梗と愛し合い、共に生きようと考えたと。だが、桔梗は巫女……それも四魂の玉を護る巫女だ。普通の女としては生きられぬ……その為に四魂の玉を使い、犬夜叉は人間となると。そうなれば四魂の玉は正しき願いにより消滅する、桔梗もまた巫女の宿命より解放される。

 

 

「そうか……桔梗殿と生きるか。それはお前が選んだ道か?」

 

 

「あぁ……『愛する者の為なら、何処までも強くなれる。だからお前もそう言う者を見つけるんだな』って、昔兄貴に言われた事がやっと理解できたような気がするぜ」

 

 

「分かった……しかし、それでは四魂の玉は消滅しないぞ」

 

 

「えっ?」

 

 

「よし、取り敢えず桔梗殿に会いに行くぞ!」

 

 

「えっ、ちょっと待て!兄貴はなんでそんなことを知って……って離せ!」

 

聞こうとするが、龍牙王に首根っこを掴まれる犬夜叉。龍牙王はそのまま桔梗の村の方へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~桔梗の村~

 

 突如やって来た、犬夜叉と龍牙王。犬夜叉は桔梗と共にいるから未だしも、龍牙王は初めて来るため警戒しない訳がない。

 

 

「犬夜叉、それに龍牙王殿?」

 

 

「半月振りだな、桔梗殿」

 

 龍牙王は桔梗と会っていた。半月に一度程のペースで、会うのは犬夜叉の話をする為だ。赤子の時からずっと犬夜叉を見守っている龍牙王は大抵の事は知っている、それを話すためであり、桔梗自身が強くなる為に龍牙王に術を教わっていたのだ。

 

 

「少し話がしたくてな」

 

 

「そうですか……では私の家に」

 

 

「もふっもふっ」

 

 

「ん?」

 

 桔梗が龍牙王を家に案内しようとした時、小さい子供が龍牙王の尾を触っていた。これには村人達も顔を青ざめさせる、見ず知らぬ妖怪の身体に触れる等自殺行為にも等しいからだ。子供にそんな事が分かる訳もない、子供の母親らしい女性が子供を抱き、謝罪をしている。

 

 

「別に構わんよ、尾に触れられた程度で怒りはせん。それよりも……犬夜叉、気付いたか?」

 

 

「あぁ……ぐうぅぅぅぅ」

 

 犬夜叉は空の方を睨み唸っている。桔梗も何事かと思い、気配を探ると巨大な邪気を感じ取った。そしてその方向から凄まじい数の妖怪がやって来た。

 

 

(こんなに近くまで……やはり霊力が)

 

 桔梗の霊力は落ちている。その理由は恋をしたからだ、巫女は恋をすれば霊力が落ちるとされている。

 

 

「また妖怪共か……近頃多いぜ」

 

 

「(もう鬼蜘蛛が動き出しているのか)弟の恋路は邪魔させんよ」

 

 

「兄貴?」

 

 

「犬夜叉、下がっていろ……グルルル」

 

 龍牙王の眼が紅く染まり、その身から眩い光を放ち天へと昇る。その姿は人から空一面を覆う七色の光を纏う巨大な龍へと変化していく。龍へと変化した龍牙王は神々しい光を放ちながら妖怪達を見据えている。光の所為でハッキリとした姿は分からないが、巨大過ぎる。

 

 

【悪しき者共よ、消え去るがいい】

 

 龍がそう言い、一瞬、太陽の様な光を放つと妖怪達は光により消滅した。龍はそれを見届けると、再び人の姿へと戻った。

 

 

「ふぅ……一先ずは脅威は去ったか。ん?」

 

 龍牙王は周りを見てみると、村人達が自分を崇めていた。あの様な光景を見れば、龍牙王が龍神だと気付くだろう。龍牙王はそれを見て、困ったような表情をする。犬夜叉と桔梗の脅威になると思ったから、自分の本性を現してまで妖怪を消滅させた。まぁ本人の思惑は別の意味もあるが、それは置いておこう。

 

 それから龍牙王は犬夜叉と桔梗と話をする事にした。

 

 まずは四魂の玉の事だ、四魂の玉は「正しき願い」を告げない限りは消滅しないと。その正しき願いとは「四魂の玉の消滅」だ。その事を前世の知識で知っていた龍牙王はそれを伝えた。

 

 犬夜叉と桔梗はそれを聞くと、玉の消滅を願うと決めた。犬夜叉は自分が人間になれずとも、桔梗を宿命から解放できると言い、それを伝えると桔梗は了承した。

 

 次に犬夜叉の事だ。犬夜叉を人間にするのは簡単な事だ、元は半分人間であるため、龍牙王の力を使えば人間に出来ると言う事だ。

 

 2人はそれならば、玉の消滅を実行させる事を決め、夜明けに実行する事にした。

 

 

 

 

 

 龍牙王は桔梗の村の上空から、地上を見降ろし笑みを浮かべていた。

 

 

 ―さて……俺の掌で踊って貰うとしようか、奈落-


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