狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第1巻 犬夜叉

 ―あにうぇ~-

 

 

 ―おぅどうした、殺生丸-

 

 

 ―どうしたら、あにうえやちちうえのようにつよいようかいになれますか?-

 

 

 ―頑張って修行すればいい―

 

 

 ―わたしもいつか、あにうえたちのようなだいようかいになります!-

 

『小さい殺生丸は可愛かった。何をするにしても我の後をひょこひょこと付いて来た。このまま兄を尊敬する弟になってくれればいいなぁ……いや上手い事いけばそうなんじゃね?』

 

 

「渡さぬと言うなら殺してでも奪うまで!」

 

 

 ―そう思ってた時期もありました。はい……現在、殺生丸()と追いかけっこ中です。追い掛けられている理由は、我の背の叢雲牙と腰の鉄砕牙だ。

 

 親父は龍牙王()に『一振りで百の亡者を甦らせる【叢雲牙】』を

 

 殺生丸に『一振りで百の命を救う【天生牙】』を

 

 犬夜叉に『一振りで百の妖怪を倒す【鉄砕牙】』を残した。

 

 かと言って、犬夜叉は未だ子供だ鉄砕牙を渡す訳にはいかないと言う訳で我が管理している。故に―

 

 現在の叢雲牙と鉄砕牙の所持者は龍牙王→龍牙王を倒せば二振りとも手に入る→龍牙王を倒す→兄を越えた上に剣が手に入る→「死ね!兄上!(鉄砕牙と叢雲牙を寄越せ)」と言う訳です。

 

 

「はぁ、殺生丸……今のお前には此奴等は使い熟せんよ。じゃあバイビー!【風の傷】!」

 

 我は腰の鉄砕牙を引き抜き、変化させると奥義「風の傷」を目晦ましとして使う。

 

 

「くっ!?……逃げたか、あの力……何時か我が手に」

 

 殺生丸は逃げた兄に舌打ちしながらも、何時か自分の手にと考えその場から去った。殺生丸が去ったのを確認すると、龍牙王は物陰から出て来た。

 

 

「はぁ……今のアイツは鉄砕牙の結界に拒まれるのによくもまぁ……分からなくもないけど、その執着を捨てない限り、親父は越えられんぞ殺生丸」

 

 龍牙王はそう言うと、何処かに向かい飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~屋敷~

 

 

「さんこんてっそう!」

 

 赤い衣を纏った銀色の髪の幼い子供が真剣な顔付で屋敷の岩をその爪で斬り裂こうとする。しかし岩にはほんの少しの傷しかつかない。

 

 

「むぅ……」

 

 

「犬夜叉」

 

 呼ばれた少年・犬夜叉は振り返るとそこには長い黒髪の美しい女性がいた。この女性こそ、犬夜叉の母・十六夜である。人間の姫の身でありながらも、闘牙王と愛し合い犬夜叉を産んだ。

 

 

「ははうえ!」

 

 先程までの顔つきが嘘の様に無邪気な子供らしい顔になって、母に抱き着いた。

 

 

「また修行をしていたのですか?」

 

 

「うん!つよくなっておれがははうえをまもるんだ!」

 

 

「あらあら……」

 

 十六夜は愛おしそうに犬夜叉を撫で抱き締める。

 

 

(私は後、どれほどこの子の傍に居れるのだろう?この乱世の世……この子を育てる為には此処に戻るしかなかった……でも)

 

 十六夜は知っている、この屋敷の者達が犬夜叉の事を半妖と蔑んでいる事を。それでも生きていく為には此処にいるしかない。十六夜は元はかなり位の高い家の姫だが、妖怪の子供を産んだ事で蔑まれ、この屋敷には情けで置いて貰っている身だ。

 

 そして半妖は人間からも、妖怪からも蔑まれる身だ。もし妖怪が犬夜叉を襲えば、自分には守る事はできない………犬夜叉も自分も殺されるだろう。かと言ってこのままこの屋敷にいても犬夜叉が本当に幸せなのかと彼女は考える。

 

 

(此処にいるのが……本当にこの子の幸せなのだろうか?……あなた……私はどうすれば)

 

 十六夜は我が子の事を思い涙を流す。犬夜叉はそれを見て、母を心配そうに見ている。その時、凄まじい風が吹いた。

 

 

「!?……この匂い」

 

 犬夜叉は半分とは言え狗妖怪である父の子供だ、鼻は人間の数倍以上効く。その鼻が匂いを嗅ぎ取った、それは何処か懐かしい匂いだった。

 

 風が止むと、そこには1人の青年が立っていた。

 

 

「あなた?」

 

 

「久しぶりだな、十六夜殿」

 

 犬夜叉と十六夜はその声で我に帰ると、青年が立っていた場所に少年が立っていた。

 

 

「龍…牙王……様?」

 

 

「あぁ、色々と走り回ってたら数年が経っていた。迎えが遅れてスマンな」

 

 

「どうして……此処に?」

 

 

「親父と約束したからな……犬夜叉が一人前になるまでは守ると」

 

 

「ははうえ……だれ?」

 

 

「この方は龍牙王様……貴方のお兄様ですよ」

 

 

「あにうえ?」

 

 

「あぁ……会うのは久しぶり……と言ってもお前は未だ赤子だったから覚えておらんか。お前の兄だ、因みにお前にはもう1人兄がいるが……いずれ会せよう。まぁ当分の間は無理だろうけど」

 

 犬夜叉は十六夜の後ろに隠れて龍牙王をジッと見ている。う~と唸って威嚇している様だ。

 

 

「警戒するのは仕方ないか……十六夜殿、まずは此処を離れよう。その子を狙ってくる同族も多い」

 

 犬夜叉は半妖……故にその力と血を重視する妖怪達にとっては、偉大な大妖怪である闘牙王の血が半妖如きに流れている事が許せない輩もいるのだ。

 

 

「ッ……ですが」

 

 

「案ずるな………母上と御母堂が色々と動いてくれたんでな」

 

 

 ―こうして我は十六夜殿と犬夜叉を連れ、この屋敷を出た。向かう先は親父の城……現在は殺生丸の母の城だ。御母堂には十六夜殿と犬夜叉を一時的に保護して貰う。

 

 犬夜叉を狙う者達がいる、我はそんな輩をどうにかする為にこの数年走り回っていた。しかし数が多い故に、完全に終わるまでは御母堂に保護して貰う事にしたのだ。御母堂は意外に乗り気だったので助かった、恐らく狗妖怪の性質だろう。母性が強く、成長した殺生丸が可愛げがなくなったと嘆き、幼く親父に似ている姿の我を着せ替え人形にして遊ぶのは止めて欲しい。

 

 親父に似て幼い犬夜叉と十六夜殿の事を聞き、是非とも保護したいとか。原作でも案外そうだったりして……まぁ分からんが、手伝って貰おう-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~天空城~

 

天空を飛ぶ城……元々は闘牙王の城だが、現在では殺生丸の御母堂の居城となっている。そんな天空城の一室では……

 

 

「おぉ!どれどれ、こっちの着物を着てみよ」

 

 

「あらっ可愛いですよ、犬夜叉」

 

 

 ―正妻やら側室やら関係なく仲良くなった母親達。犬夜叉は着せ替え人形になっている。ふぅ、これで着せ替え人形にされずに済む―

 

 

「いやだぁ~女の服なんてきたくない~あにうえ~たすけて~」

 

 

 ―無理、こっちも標的になるし―

 

 

「はくじょうもの~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―犬夜叉……我が鍛えてやる……だから強くなれ。いずれお前は出会うだろう、お前を想い、愛し、共に歩む者と……そんな存在を、大切な者を護る為の力を手に入れろ。我の様に失うな―

 

 龍牙王は着せ替え人形になる犬夜叉を見ながら、そう思っていた。


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