城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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大変長い間お待たせしました!
城下町のダンデライオン~王の剣~投稿再開です!!

長い間お待たせし、本当に申し訳ありませんでした!

ずいぶんと久しぶりな投稿ということもあり、文章の書き方の変化や、
平成が終わるまでに一本投稿!という思いでけっこう急ぎ足になってしまったため
読みぐるしい点もあるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

けどこの文章打ってるうちに日付変わってしまっていましたww
ですので、令和いっぱつめということで改めてこれからよろしくお願いします!!


再開一発目は茜の誕生日回です!どうぞ!!



第68話【憧れ】

とある日の朝ーーー

 

「おーい、おいてくぞー!!」

 

玄関で靴を履きながら二階の自室にいるであろう人物に呼びかける。

 

 

「ま、待ってよ翔ちゃん!一人じゃいけないよぉ!」

 

 

慌てて上着を羽織りながら、ふわふわと能力を使い二階から降りてくる人物ーー

 

「遅かったな。なにしてたんだ?茜」

 

二つ下の三人目の妹、茜。

 

「だ、だって中々服が決まらなくいて!」

「別にいつも通りでいいだろ?」

「だめだよ!せっかく翔ちゃんが誘ってくれたんだから!」

 

そう言って玄関の姿見で改めて服装と髪型を正す茜。

 

「その髪どうしたんだ?」

 

普段のおさげではなく、三つ編のアレンジがかかった茜の髪型に目をやる。

 

「これね、翔ちゃんとお出かけするからお姉ちゃんにしてもらったの!」

「そうなのか?よく似合ってる!可愛いよ!」

「えへへ、そうかな?」

 

嬉しそうに髪をいじる茜の頭を撫でる。

 

「それじゃあ行こうか!」

「うん!」

 

 

なにを隠そう今日は茜の誕生日なのだ。

 

例のごとく、主役を外に連れ出す役を買って出たまでは良かったんだけどーー

 

「…あの…茜さん?」

「な、なに!?」

「歩きづらいんだけど…」

「だ、だってカメラがぁ」

 

俺の腕に引っつく、挙動不審な妹を見てため息をつく。

 

せっかくの誕生日だってのに、これじゃあかえってストレスを与える事になってしまったか?

 

「そうは言っても茜、こればっかりはいい加減なれないとだな…」

「わ、わかってるよ!今年から翔ちゃんもお姉ちゃんもいないんだもん!ちゃんと一人でもやっていけるようにならなきゃ!」

 

そう言いつつも俺の腕を掴む腕を離す気はない茜。

 

 

俺と葵は先日高校を卒業した。

 

そのため、茜は今年から一人で登校しなくてはならない。

 

まぁ、今年いっぱいは修か奏が一緒に登校してあげればいい話なのだろうが、あの厳しくも妹思いの奏の事だ、茜の今後のためにもそれを許してはくれないだろうな。

 

まぁ

 

修なら喜んで引き受けてくれるだろうけど…

 

逆に茜本人に断られている哀れな弟が容易に想像できてしまい、苦笑いを浮かべる。

 

 

「そうだな、けどまぁ、少しずつ茜のペースでやっていけばいいさ」

「…うん」

 

そう返事をしつつもまだどこか不安そうな表情の茜の頭を撫で、

 

「とりあえずだ!今日はせっかく可愛くおめかししてきたんだから楽しもう!な?」

「うん!そうだね!」

 

こうして少しは元気を取り戻してくれた茜を連れて街へと繰り出すーー

 

 

ーーまでは良かったんだけど…

 

 

「ひぃ!!」

 

 

行く先々で、

 

 

「ご、ごめんなさいぃぃ!」

 

 

人目を気にして、

 

 

「見ないでぇ…」

 

 

パニックを起こす茜。

 

しまいには、

 

「いやぁぁぁぁぁあ!!」

「ちょ!?おい茜!!」

 

どこか遠くへ走り去ってしまう始末ーー

 

 

「ーーったくあいつどどこ行った?」

 

急いで追いかけてはみたものの、能力を使い重力を無視して走り抜ける茜に到底追いつけるわけもなく、完全に見失ってしまった。

 

とりあえず茜の携帯に電話をかけてみるが、

 

~♪~♪~

 

 

なぜか俺の上着のポケットから流れ出す茜の携帯の着メロに、黙って発信を切る。

 

なんで俺のポケットに入ってるんだよ!?

 

腕を掴んでいた拍子に紛れ込んだのだろうか?

 

しかし、いまそんな事はどうでもいい、

 

「…まいったなーー」

 

 

ーーーーーーー

 

 

「ーーうぅ…どうしよう…」

 

周囲から感じる視線の恥ずかしさのあまり駆け出して、気が付けば一人になってしまていた。

 

「…携帯もどこかになくしちゃったし…翔ちゃぁん」

 

一人こそこそと不安になりながら歩き、さっきまで一緒にいたはずの兄の名前を呼ぶ。

 

それにしても、翔ちゃんは本当に凄いなぁ…。

 

6年間旅をしていて、去年までこの王都にいなかったはずなに、もう国民のみんなに受け入れられて、すごい人気だ。

 

今日一緒にいて、行く先々で声を掛けられている兄の姿を見て改めてそう感じた。

 

まぁ、そのおかげで一緒に注目を浴びて、いまこうして一人途方に暮れているはめにもなったんだけど…。

 

 

「…うぅ…」

 

不安のあまり、いまにも泣き出しそうになる。

 

そんな時ーー

 

「ーーきゃあ!?じ、地震!?」

 

けっこうな揺れの地震が起き、咄嗟に歩道の柵に掴まる。

 

「おさまった?み、みんなは?!」

 

暫くして地震がおさまったり、慌てて周囲の皆の安全を確認する。

 

どうやら怪我人はいなさそう。

 

良かったー!

 

ほっと胸をなでおろしていると、

 

 

「おい!あれ見ろ!!」

 

一人の男性が上を見上げ、それを指さし叫ぶ。

 

「え!うそ?!」

 

その指の先には、二人の作業員を乗せたビルの窓拭き用のゴンドラが傾き、今にも二人が落ちそうになっていた。

 

「危ない!!」

 

誰かがそう叫んだ拍子に、二人の作業員が真っ逆さまに落ちた。

 

「っ!!」

 

咄嗟に体が反応し、能力を使って二人を救出し、ゆっくりと二人を地面に降ろす。

 

「ーーー!!!」

 

と、同時に周囲から歓声があがる。

 

「//////!!!」

 

し、しまったぁ!また目立ってしまったぁぁあ!!

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「茜様は命の恩人です!」

「茜様万歳!」

「うぅ!み、見ないでぇぇぇえ!!!」

 

助けた二人の感謝の言葉も耳に入らないくらいにいまはそれどころではないと慌てて顔を隠す。

 

けど、まだ終わってはいなかった。

 

 

ガタンッ

 

 

辛うじて片方で吊られていたゴンドラが大きな音をたて、落下しはじめた。

 

「やばっ!」

 

もう一度能力を使い浮かび上がり、落ちてくるゴンドラに向かう。

 

「茜様危ない!!」

 

下で小さい女の子の声が聞こえた。

 

瞬間ーー

 

「!?」

 

隣で建設工事をしていた、ビルの鉄筋が崩れ、ゴンドラのさらに上から重なるように降ってきた。

 

な、なんで!?

 

さっきの地震の影響で不安定になってたの!?

 

 

だめ!

 

一人じゃこんなに一度に受け止めきれない!!

 

 

「あーー」

 

急展開についていけず慌てていると、もうゴンドラが目の前に来ていた。

 

やばい当たる!

 

能力を使うのも忘れ、迫りくる痛みの恐怖で目を閉じる。

 

そんな、目を閉じる瞬間、

 

淡い光と共に大好きな憧れの人がゴンドラと私の間に割って入って来た様に見えたーー

 

 

 

「ーー金属操作(メタナイト)

 

 

一向にやってこない痛み。

 

恐る恐る目を開けると、

 

 

「ふぅ…なんとか間に合ったな。茜無事か?」

「…翔…ちゃん?」

 

ビルの壁に刺した鎖鎌の鎖を片腕に巻き、もう片腕で私を抱きかかえ、ゆっくりと地面に降りながら優しく微笑みかけてくる大好きな兄の顔がそこにはあった。

 

「…どうしてここに?」

「どうしてって、そりゃお前。妹が急に走って消えたら探すだろ?」

 

そう言って困った風に笑い地面に足をつける翔ちゃん。

 

「そうだ!そんなことより!!」

 

ゴンドラは!?鉄骨は!?

 

上での出来事を思い出し空を見上げるーー

 

 

「ーーって!えええぇぇぇぇぇええ!!!!」

 

崩れつつあったビルの鉄骨や既に落ちてきていた鉄骨が寄せ集まって、まるで巨大な手の形となって、空中でゴンドラを掴んでいた。

 

「なにあれぇ?!」

「なにって俺の能力の一部だけど?」

 

なにを今さら?といった顔でゴンドラを地面に置き、鉄骨を元のビルの形へと戻す翔ちゃん。

 

 

金属を自由に操れるってことは知ってたけどこんな事まで出来るの!?

 

もともと知っていた常識離れした兄の一端を改めて再認識したーー

 

 

 

ーー帰り道

 

あの後、現場を警察と消防隊の人達に任せて、私のためにと翔ちゃんが早々にあの場を切り上げてくれた。

 

 

「それにしても茜、なにも考えずに飛び出す癖は相変わらずだな」

 

そう言って、自身のポケットから私の携帯を取り出し返してくる翔ちゃん。

 

「う…。だって気づいたら体が動いてるんだもん」

「まぁわからなくもないけどなー」

 

はははと笑いながら私の頭を撫でてくる。

 

「でも、なんか安心した!」

「なにが?」

「翔ちゃんは今も昔と変わらず私のヒーローだなって!」

「うーん、前に葵にも似たようなこと言われたなー」

 

そう言って笑いながら歩きだす翔ちゃん。

 

「ま、待ってよ!」

 

追いかけて翔ちゃんの腕にひっつく。

 

「ま、人見知りの茜の壁ぐらいならいくらでもなってやるよ」

 

そう意地悪そうに、自分の腕を掴む私の腕を指さす翔ちゃん。

 

「うぅ…意地悪ぅ!」

「ははは!あ、そうだ!ほら茜、誕生日プレゼント!!」

 

そう言って私の掌に赤い石が装飾された髪留めを置く翔ちゃん。

 

「その石はガーネットと言って、情熱や熱意を与えてくれるといわれてるんだ!普段は人見知りで怖がっていても、いざという時は国民の為、みんなの為にと行動できる本当の茜にぴったりだろ?」

 

そう言って私の胸、心を指さして笑い、歩き出す翔ちゃん。

 

 

あぁ…この人は、本当に…

 

翔ちゃんはいつもそうやって、常に私達兄弟のことを気にかけてくれて、ちゃんと見てくれている。

 

口ではお兄ちゃんだから当たり前、別にヒーローなんて大した人間じゃないよ。

 

なんて普段言ってるけど…

 

 

でも、私にとっては今も昔も変わらず唯一無二の憧れのヒーローは翔ちゃんなんだよ?

 

 

 

掌の髪留めを髪につけ、先を歩く翔ちゃんを追いかける。

 

 

 

かなちゃんや岬には悪いけど、

 

今日くらいはお兄ちゃんを独り占めしてもいいよね?

 

 

そう思い、もう一度改めて翔ちゃんの腕を掴み直したーー

 




気づいた方もいると思いますが、

金属操作の能力名を【メタナイト】に変更いたしました。

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