城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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大変お待たせしました!!
待ちに待った奏回です ! !

多くの誤字報告を受けております!
ありがとうございます!
そしてそのせいで読み難くなっていて申し訳ないです!

他にもそういった箇所がありましたらよろしくお願いします!



第66話【秘密だよ】

「ーーそれでお兄様!今日はどこへ連れてってくれるんです?」

「え?奏の行きたいところ行こうと思ってたんだけど…」

 

電車に揺られながら奏と街を目指す。

 

「はぁ…もう!こういうのは男性がエスコートするものですよ!」

「いや。だって奏の誕生日だしーー」

「それなら尚更です!誘った男性がエスコートしてくれないでどうするんですか!」

「う、そう言われると耳が痛いな…」

「まあそんな事だろうと思って今日は行きたいところ絞ってきてあります!今度からは気をつけてくださいね?」

「…善処いたします」

 

 

それから奏の提案でとりあえずランチをすることにした。

 

午前は色々あって潰れてしまったからな…。

 

本当に申し訳ない事をした…。

 

 

「ーーはい!お兄様!あーん!」

 

そう言ってデザートのパフェを1口俺に差し出して来る奏。

 

「ほんと今日はご機嫌だな。外でこんな大胆に絡んでくるなんて…」

 

と、言いつつもちゃっかり貰う俺だが。

 

 

甘い物に目がない俺だぞ?

 

ましてや、こんな超絶美女のマイシスター奏ちゃんの差し出すスイーツだぞ?

 

食べないわけないだろ!ぼけ!

 

 

「ふふ、こう言った兄妹仲の良い姿も大切ですよ!(それに定期的にこうやって見せつけておかないとお兄ちゃんに近づく邪魔者が増えちゃうもの…!)」

「そ、そうか…!」

 

笑顔でそう言う奏だが、何か裏に黒い気配を感じたのはなぜだろうか…。

 

 

 

「見てくださいお兄様!可愛いですよ!」

 

ガラス越しの猫を見て興奮する奏。

 

 

次に来たのはペットショップだ。

 

奏は普段は隠しているが可愛いものが大好きだからな。

 

こう言った類は特にな。

 

 

確かに可愛い。

だが…

 

「あ、でも…」

 

「「うちのボルシチの方が可愛いな(わね)」」

 

奏とハモり、2人で笑い合う。

 

俺も大概だけど、奏も過保護、親バカの気質あり。

 

我が子が一番?当たり前だ!

 

 

それから俺達は服、本、小物など色々な店を回り買い物をして、帰路についた。

 

 

季節ながら5時過ぎだと言うのに辺りはもう真っ暗だ。

 

「ごめんなさいお兄様。荷物持ちになってもらって」

「いいよ別に。奏の誕生日だし。こういうのは男が持つものだろ?少しはカッコつけさせてくれ」

 

お金も全部自分で払ってるし、さすが大金持ちだ。

 

「あ、そう?まあそうですよね!ありがとうございます!かっこいいですよねお兄様!」

 

と、俺の言葉に凄い笑顔でそう言ってくる奏。

 

 

これは完全に確信犯だな。

 

少しでも自分の罪悪感などを減らす為にわざと言わされた!

 

かなちゃん、恐ろしい子!

 

「…え?なにか…?」

「イエ、何モゴザイマセン」

 

 

「あ、そうだ奏。最後に行きたいとこがあるんだけどーー」

 

ーーーーーーー

 

そう言ったお兄ちゃんに連れられて来たのはーー

 

 

ホ、ホホホ、ホテル街//////

 

そ、そんな!?

 

私達血の繋がった兄妹なのよ!?

 

でもお兄ちゃんになら…//////

 

待って!けどまだ心の準備が…!!

 

 

けど、そんな私の心の焦りなど関係もないと言った感じに、

 

「奏?顔赤いぞ?この通り抜けたら直ぐそこなんだけど、体調悪いなら帰るか?」

「…ア、イエ。大丈夫デース」

 

本当、この人は…。

 

いつもこれでもかと言う程、周りには気を配ってるくせに

 

こういうとこに限って無神経なんだから。

 

わざとなのかしら?

 

ならお仕置きが必要ね…フフ。

 

「!?(なんだ?急に寒気が…!?)」

 

 

それからホテル街を抜け、どんどんと路地裏へと入っていく。

 

 

こんなまったく人気のない所になりがあるのかしら?

 

まさか!?

 

そんな…私、初めてなのにこんな所で…!

 

 

それすらも無視して歩き続けるお兄ちゃん。

 

そして、しばらく歩くと、大きな壁の突き当りに出た。

 

「えっと、お兄ちゃん?ここは…?」

 

喋り方も戻せるほど全くと人気がない。

 

「よし、奏少し目を閉じててくれ」

「…え?」

 

ま、まさか本当にここで…!?//////

 

「いいから!」

「は、はい!」

 

言われた通りに目を閉じる。

 

すると、すぐに肩に手が触れられるのがわかった。

 

 

これから起こり得る事に正直若干の期待を抱きながら、思わず身体に力が入る。

 

 

しかし、そんな想いとは裏腹に、

 

「よっと!」

「え?ひゃあ!?」

 

お兄ちゃんは私を抱き上げた。

 

思わず目を開けてしまい、改めて今の状況を確認する。

 

お兄ちゃんにお姫様抱っこされた私。

 

お兄ちゃんの手には籠手が嵌められていた。

 

 

これは確か、闘王の…。

 

 

高ぶっていた感情が一気に冷めたのがわかった。

 

…ちょっと待って。

 

闘王の能力を使わないと持ち上げれない程私が重いとでも言いたいのかしら?

 

「おいおい、目を開けるなよ…ってあれ?なんか怒ってない!?」

「イヤースイマセンネ。怪力超人使ワナイト持チ上ガラナクテ」

「え?…あ!?そんなことないぞ!決してそういう訳じゃなくてだな!」

 

慌てて弁解しようとするお兄ちゃん。

 

「えーい、もう!しっかり掴まってろよ!」

 

そう言って地面を蹴り横の建物の壁にジャンプするお兄ちゃん。

 

そして、建物の壁を蹴り、反対側の建物の壁へとワープして壁を蹴る。

 

それを繰り返しながらどんどんと上へと登っていく。

 

 

「この闘王の籠手は投げれない分、ある程度の距離ならノーモーションでワープ出来るからな、人を抱えたまま飛ぶならこれかなって思っただけだよ」

 

そう言って、修みたく一気に上に行けたらいいんだけどね…と、苦笑いをするお兄ちゃん。

 

なるほど、そう言う事だったのね。

 

「けど、この上に一体何が…?」

「行けばわかるよ。…。さ、着くぞ!」

 

そう言って壁の上に出た瞬間ーー

 

「ーー!?…綺麗…」

 

目の前には視界いっぱいに広がる夜景。

 

街全体を見渡せるほどの場所で見る街の灯は、これまでに見た事がないほど綺麗な景色だった。

 

私達の暮らすこの街はこれ程までに綺麗な場所だったなんて…。

 

「まったく…奏なんか簡単に持てるっての…」

 

そう言って闘王の籠手を戻すお兄ちゃん。

 

「奏“なんか”ね…」

「え、いや。その今のは言葉のあやでーー」

「ふふ、冗談よ!」

 

普段は冷静なお兄ちゃんが慌てる姿は特に可愛くて好きよ。

 

「はぁ…程々にしてくれ?兄ちゃん心が持たねーよ」

 

ため息をついて苦笑いで私を下ろす。

 

「はぁい!善処します!!」

「…たっく…」

 

 

「綺麗だろ?ここ、この街全体を見たくて探してたらここを見つけたんだ」

「なんで街全体なんて見たかったの?」

「んー?俺はこの生まれ育った街が、建物が、人が、全部が好きだからかな。それに…」

 

そこで区切り、お兄ちゃんは私の頭を撫でながら、

 

「全部が見えるここからなら、奏が、皆が、どこかで泣いていてもすぐに気付いて駆けつけてあげれるだろ?」

 

そう微笑んだ。

 

「ーー//////」

 

一気に自分の顔が熱くなるのを感じた。

 

お兄ちゃんはたまに平気で恥ずかしい事を言ってくる。

 

思わず顔を逸らして俯き、考える。

 

 

この人は、本当に、どこまでも私の想像より遥か遠くにいる。

 

私はお兄ちゃんの背中だけを追いかけて努力してきた。

 

けど、お兄ちゃんは私なんかには目もくれずこの国を見ていた。

 

いままで私は人の為にと言って色々な活動をしてきた。

 

けどそれは結局は自分の為。

 

少しでもお兄ちゃんに近づく為に無意識でお兄ちゃんの真似事をしてきていたにすぎない。

 

自分でもそれは気づいていた。

 

いくら追いかけても追いつかないわけだ。

 

お兄ちゃんと私とは見ている世界が違うのだから…。

 

自分の為に努力する私と、人の為に努力するお兄ちゃんとじゃ、目指す場所も覚悟も違うのだから。

 

お兄ちゃんは国民と私達家族となら迷わず私達を優先してくれるだろう…。

 

けどそれはただ家族だからに過ぎない。

 

そうじゃなく、家族だからじゃなく、私は…

 

ただーー

 

ーーーーーーー

 

「…認めて欲しかった。…ちゃんと見ていて欲しかった」

 

俯いた奏が僅かに震える。

 

「…奏」

 

奏は今まで独りで溜め込んでいたんだ。

 

今日だけでそれを痛感した。

 

妹1人ちゃんと見てやれないくせに、何が国を、家族を守るだよな…。

 

「ごめんな奏。独りでツラかったよな…」

 

そう言って奏を抱きしめる。

 

「もう独りにはしないよ。これからはちゃんと俺が奏を見てる」

「…ほんとに…?」

「ああ!本当だ!」

「ふふ、約束だからね!」

 

そう笑って抱きしめ返してくる奏。

 

今日は本当に甘えてくる日だな。

 

なんだか、昔に戻ったみたいです嬉しく感じた。

 

 

ちなみに

 

涙目、上目遣い、奏。

 

という可愛いの3大元素で俺の理性が爆死しかけたのは言うまでもない。

 

 

あれから泣きつかれて眠ってしまった奏を抱き抱えて、家へとその場を後にした。

 

 

その日の夜、街の人々は妹を抱き抱え、建物の上を飛び交う兄とその兄に抱かれ幸せそうに眠る妹の2人の笑顔を目の当たりにしたとかしていないとかーー

 

 

 

家の付近まで来たところで目を覚ました奏と2人で並んで歩く。

 

「もう!目が覚めるなりびっくりさせないでよ!」

「す、すいません…」

「いくら能力があるからって当たり前かのように建物の上を飛んで移動しないでください!…まさか、普段からこんな事してるんじゃないですよね?」

 

能力の乱用について怒られながら。

 

 

ちなみに建物の上の為、カメラに映っていない為、毎週のテレビに放送されていないだけで、街の人々の中では建物の上を飛び回る翔の姿は既に名物化していたりする。

 

 

「そ、そうだ奏!これ!誕生日プレゼント!!」

 

話題を変える為、慌てて奏のプレゼントを取り出す。

 

腕時計と、黒い百合が装飾されたイヤリングだ。

 

「奏は葵や岬と違って髪も長くはないからさ。俺なりに選んでみたんだけど…どうかな?」

「ーー!?ありがとう!!すっごく嬉しいよ!大切に使うね!」

 

そう言って渡したプレゼントを嬉しそうに抱きしめる奏。

 

よかった、喜んでもらえたみたいで。

 

 

そんなやり取りをしている内に家が見えてきた。

 

ん?あれは…

 

「ーー奏!」

「ね、姉さん!?」

 

家の前で俺達の帰りを待っていた葵が駆け寄って来るなり奏に抱きついた。

 

どうやら先ほどもうすぐ着くと連絡してから待ってくれていたようだ。

 

「ごめんね奏。お姉ちゃん、奏に酷いことしちゃった 」

 

泣きながら奏に謝る葵。

 

朝の出来事を気に止んでいたんだ。

 

「ううん。私の方こそ何も知らずに…ごめんなさい」

「そっか…聞いたんだね」

「うん。だから…その…あ、ありがとう」

「え?」

「だ、だから!私達に心配かけさせないように気を使って黙ってくれたんでしょ?だからよ!」

「ーー!?奏。お姉ちゃん嬉しいよ!そうだ!誕生日おめでとう!産まれてきてくれてありがとう奏!!」

「う、うるさい!そんな恥ずかしい事普通に言わないで!」

 

そう言ってさらに奏抱きつく葵と照れながら葵を引き剥がそうとする奏。

 

そんな2人を見て改めてこの笑顔を守りたいと思った。

 

これで一見落着かな?

 

2人の頭を撫でて3人で笑った。

 

「さ!奏!皆待ってるよ!早く入ろ!」

 

そう言って先に家へと入っていく葵に続いて俺も入ろうとすると、

 

「お兄ちゃんも、その、今日はありがとう。楽しかったわ」

 

俺の服の袖を掴んでもじもじとそう言う奏に引き止められる。

 

 

か、可愛い!!

 

そうか!

 

これが俗に言うツンデレのデレか!?

 

今日1日中感じていた可愛さはこれか!

 

ギャップ萌えと言うやつだな!!

 

 

そんな事を心の中で考えながら、奏の頭を撫でる。

 

「あ、そうだ奏。あの場所だけど、まだ誰にも教えてないんだ」

「そうなの?」

「だからあこは俺達2人だけの秘密な?」

「ーー!?2人…秘密…いい!」

「えっと、奏ちゃん?」

 

急に1人でボソボソと興奮しだす奏。

 

たまにこういうとあるから少し不安を覚える。

 

「なんでもないわ!なら約束ね!今度また連れてってよね?」

「ん?ああ、約束だ!」

「ふふ!絶対だからね!」

「ああ!んじゃ早く入ろうか、もう寒くて寒くて…」

 

と、入ろとした瞬間、

 

ちゅ

 

頬に柔らかい感触がした。

 

「秘密なんだからね!」

 

そして俺のすぐ真横にある奏の顔は赤く、しかし意地悪そうに笑顔でそう告げて、足早と家の中へと入っていった。

 

いまのって…

 

確認するようにそっと自分の頬に手を触れる。

 

「…あついーー」

 

そう見上げた空からは雪が降ってきていたーー

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

奏や翔それぞれの葛藤。
そして最後の…むふふ(笑)

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是日是非お聞かせください!

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