城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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今回は卯月登場回です

他の兄弟が出てくるのは2話ほど後になりそうです
楽しみにしてくれている方々には申し訳ないですが

もう少しお待ちいただいて
オリジナルの話を楽しんでいただきたいと思います


第3話【故郷】

「お久しぶりでございます陛下、櫻田家第一子長男、櫻田 翔、ただいま帰還致しました」

 

玉座に向かってひざまづいた状態からそう言い放ち笑顔で顔をあげる

 

「翔!お前、帰ってきたとは聞いていたがまさかそうきたか」

 

国王、父の総一郎(そういちろう)は一瞬驚いたあと嬉しそう笑い飛ばす

 

「お帰りなさいませ翔様。長期に渡る責務、大変お疲れ様でした」

「うん、ただいま師匠!ありがと!」

「翔様、その呼び方はお止めくださいと何度もーー」

 

そう言って困った顔をする楠 史朗(くすのき しろう)さん

 

父の参謀であり、国の軍の最高責任者だ

頭もよく、武術の心得もあり、この国で右に出るものはいない

 

俺も腕には多少自信はあるつもりだが

王族の特殊能力を使わなかったら三回に一回勝てるかどうかだ

 

ちなみに俺の文武の師匠でもあり、この人からは武術、学業、政治など色々な事を教わった

 

しかし俺に師匠と呼ばれるのをあまりよく思ってくれてはいないようだ

 

「お帰りなさいませ。旅の間、不便はございませんでしたか?」

「うん、初姫さん。満姫さんが良く働いてくれてたからね」

 

次に、曽和 初姫(そわ はつき)さん

俺の付き人の満姫さんのお母さんで、この城のメイド長をしてくれている

 

満姫さんの危なっかしさの産みの親である

 

 

「色々つもる話もあるだろうが、父さんまだ仕事が残っていてな、悪いが話は帰ってからになる」

「ん、おっけー大丈夫だよ」

「それからお前にはちょっとやってもらいたいことがあってな、次期国王選挙のポスターの写真撮影をしてもらいたい。今日中に刷って明日には公開するつもりだから」

 

そういや城に向かってる途中、車の中から妹弟達の選挙ポスターを見たな、あれのことか

 

実際選挙には興味はないけど、言ったところで無意味なのはわかってるし、

 

「はいよ、了解。それ終わったら久しぶりの町を見て回りたいし勝手に帰ってるよ」

「そうか、そうだな。しかし早めに帰るんだぞ?もう父さん嫌だからなーー」

 

そう言って奏が、岬がとぶつぶつ言い出す父さん

 

葵から多少電話で聞いてはいたが奏と岬よ父さんにここまでトラウマを残すとは…

 

お兄ちゃん子なのはお兄ちゃん的には嬉しいけど

 

悪い、父さん…

 

 

それからすぐに写真撮影をし、昼食を済ませ俺は城をあとにした

 

 

にしても想像してたより思ったより変わってないな

 

唯一目立って変わったことと言えば…

 

そう思い電柱に設置された監視カメラに目をやる

 

 

そう、この王都には所々に監視カメラが設置されている

 

俺達家族を守るために父さんが設置させたものだ

 

そしてその映像はさくらだファミリーニュースとしてテレビで放送される

 

これも国民の人達に俺たち家族の事をよく知ってもらおうという父の意向だ

 

それはわかるし気にはしていないけど

 

「…昔より明らかに数が増えているな」

 

そう、昔住んでいた頃より格段に数が増している

 

「これじゃああいつが外に出たがらないのも無理ないね」

 

そう思い出すのは二つ下の妹

 

ある出来事がきっかけで極度の人見知りになってしまった

 

ちなみに俺には双子の妹がいる

 

旅の間、両親とその妹とだけ連絡を取り合っていたので家族の事や現状報告など色々していた

 

その為、その二つ下の妹が未だに人見知りで買い物に行きたがらないということも聞かされている

 

 

しばらく町を散策しているとどこかで見たことのある雰囲気の人物を見かけた

 

 

ーーーーーー

 

 

私は昔から体が弱く、今日も学校を休んで病院へ行ってきたところです

 

「はぁ…あっ!ご、ごめんなさい!」

 

下を向いて歩いていたせいですれ違う人にぶつかってしまいました

 

昔から身長も低いので力負けして危うく後ろに転んでしまうところでした

 

あれ?そういえば私なんで転んでないんだろう?

 

そう思って後ろを見ると一人の男性が私の体を支えてくれていました

 

「大丈夫?」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

そして助けてくれた男性に向き合ってお辞儀をすると

 

「ん?なんだ、やっぱりそうか!久しぶりだな卯月(うづき)

「えーー」

 

久しぶり?

そう思って改めてその男性の顔を見る

 

「も、もしかして、翔、さん、ですか?」

 

そこには6年前に突然いなくなった幼なじみがあの頃と変わらない笑顔で立っていました

 

「おう!大丈夫か?」

「は、はい!大丈夫です!」

「まだ体の調子悪いのか?あんま無理すんなよ?」

「はい!とは言っても今日も学校を休んで病院へ行ってきたところなんですけどね」

 

小学生に入学したときからの付き合いなので

彼は私の体の事も知っています

 

「まあ思ったより元気そうでよかったよ。あ、そうだ静流や菜々は元気にやってるか?」

「はい!二人とも元気ですよ!」

 

私には二人の幼なじみがいます

 

静流(しずる)さんと菜々緒(ななお)さんです

 

そしていま私を助けてくれた彼、櫻田 翔さんとその双子の妹さんの葵さんの仲良し5人組です

 

翔さんと葵さんは菜々緒さんのことを菜々と読んでいます

 

「あ!そうだ葵さん!葵さんはこの事知っているんですか?」

「ん?あー近々帰るって電話では言っておいたんだけど、俺も今朝帰って来たところで、どうせこの後帰るから連絡は入れてない、入れた方がよかったかな?奏に怒られるかな…」

 

そう言ってどこか遠い目をする翔さん

 

色々大変そうですね

 

「ま、まあなんとかなるだろ。それより来週から俺も葵らと同じ学校に通うことになったからまたよろしくな!」

「え!そうなんですか!?またみんなで学校生活を送れるんですね!嬉しいです!」

 

それから近くのバス停で私が帰りのバスを待っている間、翔さんとお話をしました

 

私と体の事や、翔さんのいなかった6年間の私たちの出来事や、翔さんの6年間の旅のお話など

 

翔さんは将来この国を担う王族の一人なので色々な責務があって大変なんです

 

私のような一般市民には理解できないような事もたくさんあるんでしょうね

 

「翔さんも国王選挙に?翔さんも葵さんも私みたいな一般の国民にも分け隔てなく接してくれたり、私の体を気遣ってくれたり優しいので、どちらが王様になってもきっと立派な王様になりますね!」

 

そんな私の言葉に翔さんは少し困ったように笑って見せました

 

私なにか間違った事でも言ったでしょうか?

 

しばらくしてバスが来て翔さんは家まで送ると言ってくれましたけど

 

「ありがとうございます!けどそのお気持ちだけで十分ですよ!もう学校も終わってる時間なので早くお家に帰って家族の方々に元気な顔を見せてあげてください!」

「んーそうか?ならいいけど。そうだな!それじゃ、また今度な」

「はい!それでは、また!」

 

そして私たちはその場で別れました

 

 

帰りのバスの中

 

「ふふ、翔さん、なんも変わってなかったなー」

 

6年ぶりに再開した彼はその間の時間さえも感じさせないぐらい親しみやすく接してくれました

 

そんなことを考えていると顔に熱がこもるのがわかりました

 

あ、あれ?なんで?また体調悪化しちゃったかな?

 

今日は早く寝よう

 

そう思いバスの窓に体を預ける

 

 

バスは走るーー


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