城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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第64話【やっぱり兄弟】

ーー最近、遥と光の様子がおかしい。

 

最近と言うか先日のお泊まり会から帰ってきてから光の様子がおかしい。

 

こそこそと何かをしている。

 

まあ兄弟仲が良いのは大変よろしいことなので何も口出しをする気はないが…

 

 

「…お前ら、ほどほどにしとけよー」

「「ーー!?」」

 

朝、こそこそと2人で出掛けようとする光と遥を見つけ年を押しておく。

 

何故か光は能力で成長していたし。

 

何か問題を起こさなければ良いけどな…。

 

 

そう思いながらリビングへ入ると父さんがいた。

 

「あれ?父さん今日休み?」

「そうだぞー!国王だってたまには休みたい時もあるさ!」

 

はっはっはと笑う父を見て、あんたもほどほどになーと思いながらソファに座る茜の横に座る。

 

「何読んでんの?」

「アイドル雑誌だよ!」

「へーアイドルねえ…あ、この子最近よくテレビで見る子じゃん」

「さっちゃんだよ!」

「さっちゃん?」

 

どれどれ…米澤 紗千子(よねざわ さちこ)って言うのか…。

 

へーまだ中学生じゃないか。

 

岬と遥と変わらないのに頑張ってるんだなぁ。

 

わがままな光もいつかはこの子みたいに努力するってことを覚えてくれたらなぁ。

 

ま、甘やかしてるのは俺なんだけど…。←自覚あり。

 

 

案外その願いは早くやってくるもので、

 

昼を過ぎた頃、光と遥が2人の大人の男性を家へ連れてきたーー

 

ーーーーーーー

 

「ーー光様にはアイドルとしての天性の素質を感じ得ずにはいられません!!どうか!光様のアイドル活動にご賛同願えませんでしょうか!」

 

客間へ迎えられ国王を前に土下座をして懇願する松岡と社長。

 

それを腕を組み、怖い顔で話を聞く、国王 総一郎。

 

だが、

 

「うん、いいよ!」

 

存外あっけなく軽いのが総一郎なのだ。

 

 

「やったー!ねえ、しょうちゃん!私アイドルだよ!凄いでしょ!?」

 

そう言って扉の横の壁に腕を組んで寄りかかっていた翔の腕に抱きつく光。

 

同時に、松岡と社長に緊張が走る。

 

 

この国の者なら誰もが知っている。

 

父親である国王以上に、兄弟の事となると人一倍うるさく恐ろしい人間(あに)がいることを…。

 

 

「…松岡さん、でしたね…」

「は、はいぃ!」

 

ずっと黙り込んでいた翔が口を開き、名前を呼ばれた松岡は緊張で体を強ばらせる。

 

「話はわかりました…。光が自分の意思で掴んだチャンスですし、成長できる良い機会だと思います。…わがままで人の話を聞かないところもある光ですが、どうか妹の協力をよろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げる翔。

 

「翔様!?い、いえ!こちらこそ!よろしくお願い致します!」

 

翔の言動に驚きつつも、深々と頭を下げ翔の気持ちに答えようとする松岡を見て、翔は満足そうに笑い、

 

「光。お前がやるのは仕事であって遊びじゃないんだぞ?やるからには半端は許されない。嫌だからって簡単には逃げることも出来ないぞ?」

「うん!わかってるよ!私頑張る!」

「ならば良し!光なら大丈夫!きっと上手くやれるよ。俺も出来る限りは力になるから」

 

光の頭を撫でる。

 

「そうだ、松岡さん。光がアイドルをやるにあたって1つ、俺から条件があるんですけどーー」

 

ーーーーーーー

 

「ーーわぁ光可愛い衣装着てる!」

 

数日後、テレビに映る中学生姿の光を兄弟みんなで見ていた。

 

「いいなー!」

「なら茜もアイドルするか?」

「や、やらなーい…」

 

修の言葉に自分には無理だと返事をする茜。

 

『桜庭らいとでーす!みんなよろしくぅ!!』

 

桜庭らいとと言うのは中学生姿の光の芸名と言うやつだ。

 

「桜庭ってお兄ちゃんが旅の途中によったお祭りで使った偽名じゃない」

「そうだよ!気に入ったから貰っちゃった!」

「それで翔兄さん、松岡さんにどんな条件だしたの?」

 

「ふ、よくぞ聞いてくれた遥!」

「よく聞いてくれたねハルくん!」

「なんで光まで自慢気なのよ…」

「俺が出した条件、それは…これだ!」

 

そう言って財布から1枚のカードを取りだし皆に見せる。

 

それは何かと言うと、

 

「桜庭らいとファンクラブ、会員No.1の会員証だ!」

 

アイドルになると言うことは当然ファンクラブも出来る。

 

俺は光が産まれた時から可愛がってきたんだぞ?

 

言わば、産まれながらのファンだ!

 

「だから俺が最初のファンと言うことで取り計らってもらったわけだ!」

「「「…」」」

 

瞬間、光以外の皆が冷めた目をして、視線をテレビに戻す。

 

なんだよ…なんだってんだよ!

 

 

「…どこかの双子とやることが一緒で、本当にやっぱり兄弟だなぁって思うよねぇ」

「「ーー!?…」」

 

葵の言葉に一瞬びくつきながらも心当たりのある2人は、知らぬ顔を通しながら静かにリビングを後にしたーー

 


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