城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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第62話【この親にしてこの子あり】

「やはり、一晩もの間、娘3人だけというのは…」

 

ある日の事こと、

 

父さんは他国と交友関係を深める仕事の為、1日国にいない。

 

母さん、葵、修の3人もその付き添いで家にはいない。

 

本来なら長男の俺が行くとこなのだが、俺は俺で他国のお偉いさんの相手を城で父さんの代わりにしなくちゃいけなく、手が離せない。

 

遥、岬は修学旅行。

 

光は友達の家でお泊まり会。

 

輝は学校に泊まるイベントで家にいない。

 

だから今日1日家で留守番をするのは奏、茜、栞だけなのだ。

 

その上、茜は熱を出し寝込んでいる。

 

「栞の面倒も茜の看病も私1人で十分よ」

「しかし、警備に不備が…」

「こんな能力者の巣窟に手を出す奴なん花いないってば」

「いや!やはり特殊部隊に警備させよう!」

「恥ずかしいからほんとやめて」

「そうだよ父さん。夜には俺も帰れるんだし」

「うぅむ…。じゃあせめてーー」

「さっさと行かないと明日から無視するわよ」

 

 

「ーーってことが今朝あってさ…玄関で30分も粘るとは思わなかったわ」

「陛下も過保護ですなぁ」

 

そして現在、城で客人を待つ間、王の剣の皆とそんな話をしている。

 

ちなみに、城内には王の剣の部屋が一室設けられていて、そこが俺達の拠点となっている。

 

 

「過保護なら翔くんも負けてないけどねぇ♪」

「…うるせぇよ」

 

そんな話をしていると、

 

「翔様。お客様がお見えになりました」

 

曽和さんが呼びに来る。

 

「あれ?シヴァさんが見当たりませんけど…?」

「ああ、シヴァにはちょっと別件で出てもらってるしいいんだ」

「…なるほど。後でばれて怒られても知りませんよ?」

「…う、それは怖いな…」

 

何なのかを察した曽和さんとそんな話をしながらマントを受け取る。

 

「まあ、とりあえず今は客人を歓迎しなくちゃな!よし、行こうかーー」

「「「は!」」」

 

受け取ったマントを羽織り金具を止め、王の剣を引き連れる。

 

実質、今日は俺がこの国のトップと言うことになる、大きな失態は許されない。

 

その為、俺も皆も正装に着替えている。

 

謁見の間にて、客人を迎え入れる。

 

 

俺のミス1つで大事になるかもしれない。

 

けど、

 

「本日はよくお越しいただきました!歓迎致します!」

 

俺は俺の出来ることを全うするだけだ。

 

ーーーーーーー

 

「ーーだぁ!疲れたぁ!」

 

夜の8時過ぎ、客人を見送り、ようやく解放され、イフが部屋の椅子に勢い良く座り込む。

 

「こら、イフ!だらしないぞ!」

「そんなこと言ったって1日黙って突っ立ってるだけなんて苦痛すぎだろ!」

「俺達の言動1つで翔様の評価に関わるんだしっかりしろ」

「言われなくてもしてるっての!」

 

「いやー皆、今日はお疲れ様!悪いね。さすがに護衛はつけないと曽和さんがうるさいから…」

「当たり前です!」

 

そんなこんなでその日は解散となり、俺も急いで家へと帰る。

 

すっかり遅くなってしまった…。

 

奏達はちゃんとしているだろうかーー

 

ーーーーーーー

 

時計を見ると9時を過ぎていた。

 

「もうこんな時間!髪乾かしたらお布団行こうね!」

 

お風呂から上がり、栞の髪を乾かしながらそう言う。

 

「…まだ眠くない…」

 

栞に上目使いでそう言われたら、

 

「今日は内緒で夜更かししちゃおっか!」

 

許しちゃうわよね普通。

 

 

と、その時2階から物音がした。

 

茜起きたのかしら?

 

栞にちょっと見てくると伝え、茜の部屋へ向かう。

 

 

「茜?起きた?」

 

部屋をノックしても返事がなく、覗いてみても誰もいない。

 

「…トイレかしら?…ひょわあ!?」

 

壁の向こうから大きな音がして思わず悲鳴をあげてしまう。

 

「あかね~…?いるの~…?」

 

念のためスタンガンを生成して恐る恐る隣の部屋を見に行く。

 

隣は修ちゃんと輝の部屋。

 

扉が開く。

 

「あかね…?」

 

違う!

 

明らかに私より身長が高い。

 

誰!?

 

怖い!

 

「だぁー!!」

「あばばばば!!!!」

 

恐怖でその人物にスタンガンを当てると、その人物が悲鳴をあげる。

 

って、

 

「しゅ、修ちゃん!?なんでここに!?」

「わ、忘れ物を取りに瞬間移動で…」

「ごめんなさい!…大丈夫…?」

 

その時、窓ガラスを突き破り、

 

「「わあああああ!?」」

 

何人もの男性が部屋に侵入してきた。

 

何!?

 

どういうこと!?

 

修ちゃんと驚きの声をあげる。

 

 

そして、その内の1人が私達に近づいてくる。

 

 

ーーと、思ったら。

 

どこからともなく1人の女性が現れ、その男の膝の後ろを蹴り倒し、腰にした2本の刀をその男性の首元に当てた。

 

早業。

 

目にも止まらぬ早さとはこの事をいうんだろうけど…

 

今度は何!?誰!?

 

もうどうなってるのよ!

 

「…あら?あなた達は…」

「し、シヴァ殿!?」

 

そんな私をよそにどうやら勝手に誤解を解決しあっていた。

 

 

「ーー異常な熱反応と尋常じゃない叫び声がしたもので…」

 

あれから、どうやらこの人達はパパが配備させた国の軍の人達だとわかった。

 

他の人達は後片付けを、先程の1人は誰かと電話をしている。

 

その相手は…

 

『気づかれずに任務を遂行しろと言っただろ!』

「申し訳ございません陛下…」

 

間違いなく、確実にパパね。

 

「…代わってもらえます?」

『ま、待て!代わるんじゃないーー』

「ど、どうぞ…」

『おい!聞いてるのかーー』

「はい、聞いてますよ」

『あ、か、奏か?あ、朝ぶりだなぁ元気?ははは…!』

『パパ、警備はいらないって言ったでしょ?信用してくれてないの?』

『いや、聞いてくれ奏!』

『もういいです、帰ったらまた話しましょう』

『奏でちゃーー』

 

何か言っていたけど構わず電話を切る。

 

そして、扉の前に立っていた女性に話しかける。

 

「あの、シヴァさんですよね?お兄ちゃ、兄の王の剣の…」

「はい。お初にお目にかかります奏様。改めまして、翔殿下直属特殊能力部隊、王の剣のシヴァと申します」

「え、はい!次女の奏です!いつも兄がお世話になってます!旅の間も色々と苦労をお掛けしたみたいで…」

「いえ、我々は自らの意思でお供しているまでです」

 

この人はどこか自分に似ている気がする。

 

雰囲気というか人との接し方が…

 

「ありがとうございます!それにしてもどうしてここに…?今日はお城で仕事だって兄から…」

「マスター、翔殿下より私だけ別の任務を任されておりまして」

「…それってまさか…」

「はい、奏様、茜様、栞様3人の身辺警護です」

「…」

 

あんのバカ兄!!

 

パパといいお兄ちゃんといい、何してるのあの親子は!

 

「…そ、そうですか。それで兄はいまどこに…?」

「先程、いまから帰ると連絡をいただきました」

「そうですか。では兄にこう、お伝えください。帰ったら覚えてろ、と…」

「…」

 

私の言葉に少し考えるシヴァさん。

 

「…だ、そうですよ?…マスター」

「…え?」

 

シヴァさんの後ろの扉の向こうから音がする。

 

まさか…!

 

「お兄ちゃん!?」

 

ーーーーーーー

 

「や、やぁ奏。朝ぶりだね元気してた?ははは…!」

 

えーい、シヴァめ!

 

びっくりして、音をたててしまったじゃないか!

 

「それはさっきパパから似たような台詞を聞きました。…それより、なぜシヴァさんが家にいるのか、じっくりお話ししましょうかお兄様!」

「え、ちょ…ま…!」

 

俺の服の襟を掴み自分の部屋へと引きずっていく奏。

 

「シヴァさん。今日はありがとうございました。今日はもう兄もいますし、帰宅されて大丈夫です。お疲れ様でした!」

 

奏の言葉にお辞儀をして帰っていくシヴァ。

 

ちょ!?

 

助けてよ!

 

なに普通に帰ってんの!?

 

それによく、この真っ黒な奏を前に平気な顔してられるな!

 

そこは尊敬するーー

 

「お兄様?どうやら話す内容が増えたようですね?

 

な!?心を読まれた!?

 

「そんなに私とお話したかったんですか?もう!仕方ないですねぇ」

 

さぁ逝きましょ!と、笑顔で俺を引きずる奏。

 

階段の方に目をやると。

 

栞の目を隠しながら、涙目でこちらに敬礼をする茜が…

 

良くやった茜!

 

こんな奏、栞に見せたらきっと泣いてしまう!

 

そして、逝ってきます…。

 

櫻田家の夜まだまだ明けそうにないーー

 

 

 

 




翔達の正装についてですが、

翔はFF15のノクトの選ばれし王の衣装を参考にしてください。ただ黒シャツに白スーツです。

王の剣のメンバーは白シャツ、黒スーツで右肩に白色の片掛けマントをしています。つまり色は翔と逆ということです。

シヴァはショーパン、リヴァはスカートです。

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