城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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大変長い間お待たせしてしまって申し訳ありませんでした!

今回から日常2年目突入です!

今後とも城下町のダンデライオン~王の剣~をよろしくお願いします!


日常編 2年目
第61話【茜事件】


冬休みも終わり、学校も再開されて数日がたったある日。

 

事件は起きたーー

 

 

「ふぁ…寝み…」

 

窓際の自分の席に座り、朝の予鈴の音を聞きながらあくびをしていると、

 

「…ん?あれは…茜?」

 

茂みから慌てて走って校舎へ向かってくる茜を見つけた。

 

「…またこんなギリギリに…。まったく何してんだよあいつは…」

 

つーか、あんな全速力で走ったりしたら…

 

あーあ、ほらパンツが丸見えだぞ。

 

 

…ん?

 

 

…んん?

 

茜のパンツと共にとんでもないものを目の当たりにした気がしたが…。

 

いやいやいや、気のせいだな。

 

あの茜に限ってそれはありえない。

 

既に茜は校舎内で確認のしようもない。

 

きっと眠くて寝ぼけてたんだ俺。

 

そうに違いない、そう自分に言い聞かせながら眠りにつこうとする。

 

「あ、翔君また?ちゃんと授業受けなよーー」

 

隣の席の葵が何か言ってる気がするけど無視無視。

 

私は寝るのだーー

 

 

 

ーーそして昼休み

 

 

結局一睡も出来なかったぁぁぁあ!

 

くぅ!茜ちゃんめ!

 

お兄ちゃんを悩ませやがってぇえ!!

 

 

あり得ない、見間違いだよな。

 

あの茜がーー

 

「ーー君、ーー翔君!聞いてる?」

「ん?あ、ああ、葵か…何?」

「お昼だよ?食べないの?…て、どうしたの!?顔色すごく悪いよ!?」

 

スカートをはいていなかったなんて!

 

「ーーそれが…」

 

事情を話すと何とも複雑な表情を浮かべる葵。

 

「え?なに?」

「どうやら、そのまさかっぽいの…」

「…へ?」

「一応、私も気になってメール入れてみたんだけど、返事が無くて…」

「…」

「…」

 

「「いやいやいやいや」」

「あの茜だぞ?それだけはあり得ないだろ!」

「そうよね!あの子に限ってそんなこと、ね!」

 

互いに笑い合う。

 

「兄妹仲良く現実逃避してるところ悪いけど、どうやら目撃情報が多数みたいよ」

「「はははは…は、は…は?」」

 

そんな俺達をよそに冷静に現実を突きつけてくる静流。

 

「「…」」

 

その時、

 

『1年A組、櫻田 茜さん。生徒会長がお呼びです。至急、生徒会室まで来てください』

 

放送がかかった。

 

「生徒会長ってことは、奏か?外で自分から茜を呼ぶなんて珍しいな…」

 

卯月達、3年も生徒会をやめ、現在は奏が生徒会長を引き継いでいる。

 

「もしかして奏もかな?」

「ああ、恐らく事の真相を確かめるつもりだろうな」

「なら、あとは奏に任せておけば安心だね!」

「いや…。これには欠点がある」

「欠点?」 

「ああ、茜のクラスから生徒会室まで移動するとなると、必ず階段を上ることになるつまり…!」

「ーー!?まさか!」

「俺達にまで届いている事を同じ1年、強いてはクラスの男達が知らないはずがないだろ」

 

そう言って立ち上がる。

 

「どこいくの?」

「ちょっと様子見てくるわ」

「そっか!翔君、お願いね!」

 

そして教室を後にした。

 

「翔さんは何年経っても、ああいうところは相変わらずですね」

「ほんっと妹大好きなお兄ちゃんだこと」

「まあ、翔らしくて良いんじゃない?」

「ふふ」

 

そんな、翔を微笑ましく見送る幼馴染みの3人と葵だった。

 

 

ーーあの後、俺が真っ先に向かったのは茜の元ではなく、

 

「やぁ花ちゃん。相変わらず小さくてキュートだね!」

「翔さん!?あ、ありがとうございます!」

 

2年の教室だ。

 

「あ、翔さんだ!こんにちは!お久しぶりです!」

「やぁこんにちは零子ちゃん!久しぶりだね!」

 

早乙女さん改め、零子ちゃん。

 

学園祭の劇以来、下の名前で呼ぶ仲である。

 

「急に現れるなり弟の女を口説こうとは大胆ですねぇお兄さん」

「何言ってんだ瞳ちゃん。弟の女だから可愛がってるんだろ?将来は俺の妹になるんだし!」

「い、妹だなんて/////」

 

そこにそれを見ていた修が近づいてきて、

 

「に、兄さん!佐藤をからかうのはやめてあげてください」

「からかってなんかないぞ修!俺は本気だ」

「そこまでは聞いてません/////」

 

2人して顔を赤くする修と花ちゃん。

 

ほんと、はよ付き合えお前ら。

 

と、そんなことより…

 

「修、お前に用があったんだ。ちゃっと手貸してくれ」

「…え?」

 

ーーーーーーー

 

「ーーやだなぁお姉ちゃん!ちゃんと下はいてるよ!」

 

階段の手前で待っていた奏と合流した茜と花蓮。

 

ギリギリ下から覗かれると言うことは未然に防がれたが、

 

「でもどう見ても…」

「…それで今日はやたらと男子達が…しょうがないな男の子は…登校中スカートが破けちゃったから途中で短パンにはきかえたんだって!」

「な、なんだそうだったの…」

「ほらーー」

 

そう言って茜が制服をまくり上げた瞬間ーー

 

「「「…はぁ」」」

「ぶふぅ!」

 

間一髪ギリギリのところで修が茜、奏、花蓮を連れて校舎裏へ瞬間移動。

 

すでに待機していた葵、奏、修は妹の醜態にため息。

 

花蓮は鼻血をふきだした。

 

そう、制服をまくった茜は

 

どう見ても下着でした。

 

ーーーーーーー

 

「く!修様の能力か!?」

「ちくしょう!確認できなかった!」

「で、でもこれで罪を犯さずにすんだじゃないな!これでよかったのかもしれない!」

 

「ああ、けどあれはどうみてもはいていなかった。惜しかったな」

「確かに、もったいないことをした気もする…」

「今回はスカートをはいてなかった茜が悪いのは確かだ」

「…え?」

「けど未遂とは言え、確信犯なお前達にも非があるとも思わないか?」

「「「ーー!?」」」

 

男子達が振り返るとそこには…

 

「お前達、放課後グラウンドに来い。全員の顔覚えたぞ?もし逃げたら…わかってるよな?」

「「「ひ、ひぃぃぃぃい!!!!」」」

 

鬼が立っていたーー

 

 

その日、茜と花蓮が下校する時、

 

「あれ?なんで男子達走ってるんだろ?」

「…きっと怖い鬼に捕まったんだよ…」

 

グラウンドを運動部員と同じように走り続ける男子の軍団を見たという。

 

 

「ーーなるほどな。それでスカートはいてなかったわけか」

「言わないでぇえ!」

 

家に帰ってきて茜達から事の真相を聞かされた。

 

どうやら朝、カメラを避けて登校していたらスカートを引っかけて破いてしまったらしい。

 

それでちょうど持っていた短パンに着替えようと茂みに隠れたはいいものの、予鈴の音に条件反射で反応してしまい結果パンツで半日過ごしたとか…

 

「アホか…。いくら遅刻したくないからと言って、それはあり得ないだろ」

「うぅ、ごめんなさい」

 

もっと冷静に物事をとらえるよう茜に説教をする。

 

「まあ今回は何事もなくことを終えたからこんぐらいにしとこう…」

「本当に感謝しております」

「…それで?あのボルの布団はそういうことか」

「え?」

 

そう言って俺の指差した先には、茜のスカートを下敷きにして眠るボルシチが。

 

「あー!探しに行っても見つからないと思ったら、ボルシチが持って帰ってきてたの!?」

 

本当に騒がしい妹だーー

 

 

 


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