全部投稿されていなかったですね、
さっき気づきました…
本当にすきません!
「ーーここか…」
あの後、俺達はすぐに司会の男から情報を聞き出した建物へと来ていた。
そしてなぜか、イフに負けた瞬間、男の能力は消えた。
「な!?イフこれって!」
「…あぁ。まさか繋がってたとわな」
その建物は昔イフの家の近くに建っていた工場と全く同じ形をしていた。
「…とりあえず中に何があるかわからない!みんな油断だけはするなよ!」
「「「はっ!」」」
「ーーちぃ!どいつもこいつも…どうなってやがる」
建物に乗り込んだ俺達を迎える黒服の集団を次々に制圧して奥へと進む。
驚くことにその全員がそれぞれに特殊能力を持っているのだ。
しかし、全員があの司会の男同様、扱いきれていないといった感じで話にはならないのだが。
これは眷属器じゃない…間違いなく王族の特殊だ。
でもなんでこんなに大勢の人間が?
「ーーわけがわからないと言った顔じゃのぉ」
「「「ーー!?」」」
そして、広間に出た所で、オーナーの爺さんが姿を表した。
全員が臨戦態勢で爺さんを睨む。
「…満姫は無事か?」
「あのメイドの娘の事か?それなら安心せい!奥の部屋で寝てもらっておる」
「なにもしてないんだろうな!」
「まだ、な…」
ちぃ!
この爺さんめ!
完全に人をバカにしてやがる。
けど、とりあえずの安否は確認できた。
よかった…。
と、爺さんはイフの方を向き、
「…しかし、あの山は気に入っていたんだがのぉ…お主らのおかげで儂の研究が台無しじゃわい」
「!?やっぱりあんたがあの工場を建てた張本人か!」
「いかにもーー」
爺さんの言葉に瞬時に雷の矢を射ち込むイフだが、
「おっと!…せっかちな男じゃのぉ」
しかし、それを急に現れた2人の男な1人に弾かれてしまった。
「あいつらは!?」
「会場で出くわした連中か?」
「はい…次は逃がしません!」
「主、あのじじいの相手、俺にやらせて欲しい…」
「…ダメだ」
「!?」
「因縁を晴らすつもりだろ?ここは主として見届けてやりたいところだが…」
「ーーだったら!」
「けど…あの爺さんからは嫌な予感がする。それに俺も会場で逃げられた借りがある」
「…」
「だから、やるなら2人でだ…!あの最初の晩のように!」
「…ああ…そうだな!」
「他の皆はあの2人を頼む!やつらを倒して満姫を連れて帰るぞ!」
「「「了解!」」」
一斉に駆け出し、戦闘へ入るーー
「ーーちぃ!なんであたんねぇんだあのじじい」
「ほっほっほ!」
「落ち着けイフ、らしくないぞ。相手のペースにのせられるな」
こちらの攻撃を全てかわされ焦りを見せるイフ。
にしても…
「…じいさんの目的はいったいなんだ?」
「んー?目的とは…?」
「この施設、さっき研究って言ってたがただの学者ってわけでもないだろ?研究ってなんだ?その先になにがある!」
「ふむ…どうやらマコラガの言っていた通り、目はいいようじゃのぉ」
「「ーー!?」」
「じじい!あのメガネの仲間か!?」
「おっと、自己紹介がまだだったかの?儂は
「「ーー!?」」
思わず2人して距離をとる。
ケンダツバ、八部衆だと!?
ってことはこの爺さんも2つの能力を!?
「そんなに身構えずともよかろう…?能力の1つは既にお主らも見ておるだろうに」
そう言って笑うケンダツバ。
何を…?
まさか!?
「…あの2人の男も、司会の男も…!?」
「左様。本当に頭の回転が早い奴じゃのぉ」
「…翔、何言って…?」
「あの爺さんの能力、それはーー」
「他者に能力を与える能力、
「なんだと!?」
「特殊能力とは、本来王族しか持てぬ。能力はそれぞれに異なる。能力とは言わば個性の様なものじゃ!では後は王族と庶民の違いはなにか…」
「…血縁か」
「その通りじゃ!だから儂は自分の血を他者へ射ち込む事でその個性を最大限に活かす機会を与えることが出来る!…ま、時間制限があるのが難点じゃがのぉ…だからそのデメリットを無くす研究をしておる」
「ってことはまさかマコラガも!?」
「彼の者には時間制限がない、完全に能力を我が物とした、儂の研究の数少ない成功者じゃよ!頭の良いお主ならもうわかっておろう?」
「八部衆…!?8人の成功者!?」
「いやー本当に話が早くて助かるのぉ!」
「てことはまさか!?本当の目的は八部衆の拡大化…!?そんな事してお前達は何をするつもりだ!軍隊でも作る気か!?」
「我が主の祈願の達成…我々は主を王にする」
「「ーー!?」」
なんだと!?
王位を奪う気か!?
国家転覆でもするつもりか!?
にわかに信じがたいが、これはとうとう、本当に家族や国を守る為の力が必要になってきたな!
まぁ、とりあえずーー
「ーー話は後からゆっくり聞かせてもらおうか?」
「な!?お主!いつのまに後ろに!?」
爺さんに気づかれることなく背後をとる。
「…逆に聞くが、いつからそこに俺がいると思い込んでいた?」
「なにを…そ、それは!?まさか!」
「やっぱりこっちの能力は筒抜けか…そう、そのまさかだよ」
ーー鬼王の砲筒、五感支配!
「お主!最初からこの為に時間稼ぎを!?」
「さあ、なんのことかな?」
「貴様!謀ったな!」
慌てて俺から距離をとろうとするケンダツバ。
しかし、
「おい、良いのか?そっちはーー」
「ーーん?ぐがぁあ!?」
「雷注意報だぞ」
イフの雷の矢がケンダツバを射抜く。
そして、眷属器を解きながら静かに歩みより、
「…これは俺のじじいからだ」
「ぐっ!」
逃げられないように両足に1発ずつ弾丸を射ち込む。
「…とどめさすのかと思ってたわ」
「まあ確かに恨みはあるし、殺してやりてぇがーー」
拳をこちらに突き出す。
「俺達の目的は制圧であって殺しにあらず。殺さず無力化…だろ?これはお前が言ったことだろ?確かに恨みはあるが、それ以上に主の意思に従う。それだけだ!」
「…イフ!?」
そして拳を突き合わせる。
「向こうもあのメンツだもう終わるだろ。メイドは俺に任せろ。…お前はこのじじいとまだ話したいことがあるんだろ?」
「…ああ、頼む」
イフに曽和さんを連れ戻すよう頼み、倒れているケンダツバに話しかける。
「…やってくれたのぉ小僧共」
「…あんたの能力はわかった。けど、あんたの能力はどこで得た?あんたは王族なのか?」
「…まあ良い。儂を追い詰めた褒美じゃ。話してやろう。…儂は今は滅びた王家の末裔よ…。まだ戦乱の時代、この国によっ滅ぼされたのぉ。結局、こうしてまた国に負け儂の代で終わりを迎えるーー」
「何言ってーー!?」
瞬間、ケンダツバを感じた。
「何を!?」
「儂の眷属器の能力は爆発。…お主ならこの意味がわかるじゃろ?」
「まさか!?」
「儂自身を爆弾にした。少なくともこの建物は吹き飛ぶじゃろうなぁ。さて、後何分もつことか」
と、笑うケンダツバ。
俺達を道連れに自爆する気か!?
まずい!
「翔様!」
そこにみんながやって来る。
「急げ!この建物から出ろ!」
「え?」
「イフ!そっちは!?」
『ん?ああ、いま見つけたとこだ』
「なら今すぐ眷属器使って外へ出ろ!なるべく遠くに飛べ!この建物はじきに吹き飛ぶぞ!」
「「「!?」」」
『!?』
俺の言葉に一斉に出口へ向かう?
「爺さん!最後に1つ聞かせろ!」
「ふむ、なんじゃ?」
「…あんたらの言う主って奴も、王族なのか?」
「…少なくともお主と同じ王位継承権を持つ者とだけ言っておこう」
「!?おい、それってーー」
「主よ。限界じゃ!行きますぞ!」
ラムに連れられ最後まで聞けなかった。
そして、なんとか建物から出て、少し離れた瞬間、
「くぅ!?」
物凄い爆音と爆風と共に本当に建物が吹き飛んだ。
2人は!?
遠くの方に雷の軌跡が見える。
良かった、間に合ったようだな。
それにしも、ケンダツバの最後の台詞…
王位継承権を持っている?
いったいーー
ーーーーーーー
「おやおや。八部衆の一角が崩れますか…」
少し離れた別の場所から今回の騒動を見ていたマコラガはそう呟き影へと消えたーー
ーーーーーーー
「曽和さん!」
全てを終えて、イフと曽和さんに合流し、改めて曽和さんに駆け寄る。
が、
「あれ?」
いま完全に避けられたよな、俺。
「…曽和さん?」
「…ないでください…」
「ちょ!なんで逃げるんだよ!」
「だから来ないでください!」
「…曽和、満姫!」
俺の言葉にようやく立ち止まる曽和さん。
「…だって…私は…もう…!」
そう振り返る曽和さんは泣いていた。
「…普通の人にはなれないんですよ…!」
「「「!?」」」
そう言ってずっと隠していた左耳を見せる曽和さん。
「…奴隷の証です…家畜同然なんです…」
左耳には2つのピアスと番号札がついていた。
人拐いに売られる時につけられる物だ。
「だから、私は…もう翔様と、皆さんと旅は続けられないんです…」
「…満姫ちゃん…あ、」
その場に泣き崩れる曽和さんを見て歩み寄ろうとするリヴァを止めて、修羅王の刀剣を出して曽和さんに近づく。
「はぁ…あのなぁ満姫…」
そして、曽和さんの前にしゃがみピアスに触れる。
「…翔、様?…あ…!」
修羅王の能力でそのピアスは水のように流れ落ちる。
「そんなものは関係ない!!」
「!?」
「俺達はお前と一緒に旅を続けたい!そう思ってるからここまでやって来たんだ!だからそんな事言うな!」
「ーー!?…でも…」
あぁ、このままピアスの穴は消えても、心の傷が塞がるわけじゃない…。
だから!
外した曽和さんのピアスを針状に形成し直し、自分の左耳に2つ穴を開ける。
「しょ、翔様!?」
そして、それを見ていた皆も何も言わず俺から針を取り、次々と自身の耳に穴を開けていく。
「ほら!こうすりゃもうわかんないだろ!」
そう言って曽和さんの頭を撫でる。
「…あ…!?」
「むしろこのピアスの穴が俺達が仲間である証だ!だから胸を張れ!俺達と来い!」
「…しょ、翔様ぁぁぁあ!!」
そこで限界を迎え俺に泣きついてくる曽和さんをあやす。
「ほら!イフくん!何か言うことがあるんでしょ!」
しばらくして曽和さんが落ち着いたところで、
「お、押すな!わかってるよ!…き、昨日は言い過ぎた…その…すまん…。これからもよろしく頼む…“満姫”…」
「ーー!?はいイフさん!」
ふぅ、ちゃんと仲直りもできたみたいで、これで一件落着だな!
と、そこに何台ものヘリが降りてくる。
あれは…国の軍隊か!
「満姫!」
「え!?お、お母さん!?お、お母さぁぁぁあん!!」
合流したヘリの一機から、曽和さんのお母さん初姫さんが現れ、曽和さんを抱き締める。
それにつられ、母に泣きつく曽和さん。
「翔!無事か!?」
「と、父さんまで!?」
「今回は人拐い、人身売買と事が事なので陛下にもご同行願いました」
「ししょ…く、楠さんまで!?」
そして国王である父さんと師匠の楠さんも現れる。
瞬間、その場にラム、シヴァ、リヴァ、タンが膝まずき、それを見て父さんが国王だと気づき、慌ててバハとイフも膝まずく。
それから安否と今回の報告をした後に、
「此度の件、全て私の油断がもたらしたもの…。申し訳ありません陛下、初姫様」
そう言って父と初姫さんの前に膝まずく。
「い、いいえ!陛下!私が拐われたからなんです!翔様は何も悪くありません!」
慌てて、俺の横に膝まずいてそう言う曽和さん。
「…今回ーー」
口を開く国王にみなが下を向くが、
「誰にも責はない!お前達はかねてより国が抱えた問題の1つを解決したのだ!満姫よ、身をていしての“潜入捜査”ごくろうだった!みなもよく働いてくれた!国王として感謝する!」
「「「ーー!?」」」
国王の言葉に全員が顔をあげる。
国王と楠さん、初姫さんは笑顔だった。
「娘も無事助けていただいたことですし!私から何も言えることはありませんよ!」
「しかし…!」
「そうだな…それでも責任を感じると言うのなら…!国はお前達を正式に迎い入れる!本日より、翔率いるバハ、シヴァ、イフ、リヴァ、ラム、タン、そして満姫の計8名の部隊を
「「「ーー!?」」」
国王の言葉に言葉を失う俺達にもう一度微笑みかけ、
「皆、頼んだよ!」
そう言う国王に、
「「「ーーはっ!」」」
臣下の礼をとり、そう答えたーー
「ーーしかし、翔様も、またよくこの者達を集めたものですね…」
あれから、国の軍隊に処理を任せ、離れたところで手当てを受ける俺達。
「私が側近に与えた神槍の吉良村を筆頭に、魔女の姉妹の剣姫に暗姫ーー」
「…昔の話です」
「私達の事知ってるんだ!」
「怪物と言われた傭兵、丹原ーー」
「…どうも」
「狂犬・羽原と悪童・一二三ですか…」
「その呼ばれ方はあまり好きではありません」
「だから、それは俺じゃねえっすよ!」
「2人の話は翔様やラムから聞いていますよ。戦闘の際のバハはまるで修羅の様だと…」
「…修羅」
「なにちょっと気に入ってんだよバハーー「イフは山猿、と…」よし、翔とおっさん!こっち来い!風穴開けてやる」
「冗談です。全てを射ぬく心眼と聞いていますよ!」
「な!て、照れるじゃねえか!」
「…キモいぞイフ」
「あ?今日こそけりつけるか?」
「良いだろう」
「銃か!」
「剣か!」
「…そして良く喧嘩するほどに仲が良いとも」
「「よくないです!!」」
「さすが楠さん!もう皆の情報把握してるんだ!」
「一国の王子の側近となる者達ですよ?素性の知れる者には任せられません!」
「そっか!それで…どう?俺の部下、仲間は!」
「まだ荒さは見受けられますが…えぇ、とても良い仲間を得たかと!」
うん!楠さんにそこまで言われたら大丈夫だな!
「よくやったな!翔!父さん心配してたんだぞ!」
「父さん!」
肩を組んでくる父さん。
「でも、本当に良い子達みたいで助かったよ…改めて、国を、翔を頼んだよ!」
「「「はい!」」」
父さんの言葉にもう一度臣下の礼をとる皆ーー
「ーーそれじゃあ父さん仕事そっちのけで来ちゃったしもうそろそろ帰るとする」
「おいおい、大丈夫かよ国王」
「お前も早く帰ってこいよ!皆心配してるから!」
「はいよ!あと1つだし今月中には帰るよ。…あ、そうだ。2人の耳に入れておきたいことがーー」
「ーー八部衆とそれを率いる主か…」
「下手をすれば国家転覆の恐れもあります、早急に対策本部を立ち上げましょう」
「ああ、頼むぞ楠」
「はい。かしこまりました」
「それじゃあやらなくちゃいけない仕事も増えたことだし!行くわ!またなーー」
父さんの見送りも終わり、
「あ!そうだ!曽和さんの帰還と王の剣の結成を祝して、皆で写真撮ろうぜ!」
こうして、
真ん中椅子に座る俺
俺の後ろに立ち互いに顔をそらすバハとイフ
その2人の肩を組み笑顔のラム
俺の左斜め前に座り曽和さんを肩車するタン
笑顔の曽和さん
俺の右隣に立ちシヴァと腕を組み笑顔でピースをするリヴァ
そんな妹を微笑ましそうに見つめるシヴァ
王の剣の写真が撮られたんだーー
ーーーーーーー
ーーとある建物の廊下を1人走る赤毛の少女。
「
勢い良く扉を開いた一室で2人の男が迎える。
「んあ?どうした?」
「こら
「あ!
「あの陰険腐れじじい…とうとうくたばったのか?」
「最後は爆死だってさぁ!」
「あのお方の能力と研究は貴重だったのですが…惜しい人を亡くしましたね…」
「どの道、あの研究も進んじゃいなかったんだ…お前らさえいればどうとでもなる」
「ええ、どこまでもお供いたしますよ」
「まっかせといて!」
「…選ばれし王の器ってのも伊達じゃあねぇのなーー」
ーーーーーーー
あれから数日後、ホテルの一室にてーー
「よし…行くか!」
「「「はっ!」」」
こうして俺の旅が終わりを迎えたーー