城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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第56話【覇王の眷属】

「ーー俺に力を貸して欲しい!」

 

そう言って頭を下げる王子。

 

はじめてあった時から変わった人だった…。

 

 

以前みんなに彼の事をどう思ってるのか聞いたことがある。

 

「翔様ですか?そうですね、普段は子供っぽいのにいざという時はカッコ良くて、けど無茶ばっかりして…ずっと支えていけたらなと思ってます!」

 

「あいつは俺の道標なんだ…だからあいつが道を間違えれば俺はあいつを殴ってでも正すつもりだ…あ、あいつに言うなよ?ネタにされるから」

 

憧れーー

 

「翔様のおかげで今の俺がある。あの方に出会ってなかったら今も、と思うと恥ずかしいばかりさ」

 

「翔くんはこんな私達にも生き方を与えてくれてたんだよ!」

「マスターは私達を信じてくれている。だから、せめてその期待には応えたいと思ってます」

 

感謝ーー

 

「主は自分の弱さを理解している。自分の弱さを知る者はいても認め受け入れる事の出来る人間は少ない。だから主が1人では無理なら私が、私達周りの者が力をかせばいい。今までもそうして乗り越えてきた。…お主も、あの日の主の行動に引かれたのではないか…?」

 

保護ーー

 

 

俺は…

 

 

あの日、

 

「…力を貸す?」

「ああ!俺は少しでも守る力が欲しい。王子直属で国を守る仕事なら、その子達にも胸を張って言えるだろ?それとも、あんたの意思はその程度だったのか?」

「…俺は…」

「胸を張れる仕事で、施設に寄付するお金を稼ぐ!貴方の理念にかなっていると思うんだけど」

 

そう言って笑う王子。

 

しかしそれでは…

 

「利用とか思ってるなら、それは勘違いだよ。…俺達は仲間になるんだ、仲間の為に力を貸すのは当然だろ?」

「平気でこんな事を言えるのが翔様ですので」

「…曽和さん、それ褒めてる…?」

 

王子と看病してくれていた少女の会話を見ていると、本当に裏がないんだと思う。

 

少し警戒していた自分がアホらしくも感じる。

 

「…礼がまだでした。手当てと看病ありがとうございます。微力ながらこれより先、王子にお力添え出来たらと思います」

「本当に!?ありがとう!」

 

そう言って王子は心から喜んでくれているのだろう。

 

本当に変わった人だ…。

 

 

だからこそ、信じてみようと思えたーー

 

ーーーーーーー

 

俺もようやく17歳になり。

 

旅に出てから約6年。

 

歴代王の墓も残すとこ2つとなり、この旅も終盤だ。

 

 

そして、俺達は覇王の墓へと来ていたのだが…

 

『良く来たな。歓迎しよう。入りなさい』

 

覇王に建物内に案内され、奥へと進んでいく。

 

ん?

 

あれ?

 

言われるがままに入っちゃったけど、すんなりすぎじゃない!?

 

てか中、広っ!?

 

外観こんな大きくなかったろ!

 

『広いだろう?私の能力があれば多きさなんて合って無いようなものだ』

 

なるほど!

 

確か覇王の能力はーーん?

 

『…歓迎したいところだが、どうやら君達の他にも客人が来たようだ…』

「…そのようで…」

 

唯一気づいた覇王と俺の言葉に全員が身構え来た道を睨む。

 

 

「…おや?」

「ーーお前は!?」

 

現れたのは夜叉王の墓で会った片眼鏡の男!

 

「これはこれは…またお会いしましたねぇ。以前はどうも」

 

そう言ってお辞儀をする男。

 

「お前は何者だ?お前達の目的はなんなんだ!?」

「質問は1つずつでお願いしたいのですが…まあいいでしょう。私は八部衆が一人、摩睺羅伽(マコラガ)と申します。以後お見知りおきを。…目的ですか?我らが主の祈願の達成。その為に今回、覇王殿の武器の破壊を成しにきました」

 

八部衆やこいつの言う主について詳しく知りたいところだけど、とりあえず武器の回収が最優先だ。

 

今後こいつらは確実に驚異になる。

 

その為にも今は力が必要だ。

 

「…黙って引き返してはくれなさそうだな?」

「黙って武器の破壊をさせては頂けないのでしょ?」

 

マコラガと名乗った男がそう言って笑うと同時に全員がそれぞれ武器を構える。

 

『わかっていると思うがーー』

「ああ!けどせめて満姫の身の安全の確保だけでも頼む!」

『…承ろう。非戦闘員はこちらへ…そこの大柄の君もだ、普通の戦闘ならともかく今回は眷属でない君じゃ足手まといになる…』

「は、はいです!」

「…俺は…ちょ…!?」

 

そう言って覇王は満姫と無理矢理タンの腕をつかんで離れて奥の部屋へ2人を入れ、部屋の前に立ちこちらを見る。

 

『この部屋は私以外には外から開けられない。音も攻撃も全てを遮断する。気にせず戦いなさい』

「ーー!?助かる!相手も眷属器使いだ、油断するな」

「「「はっ!」」」

「ーー!?イフ!?」

 

同時にイフが雷の矢を射ち込む。

 

直撃。

 

「…あいつの眷属器は相手を眠らせるだけの能力だろ?それなら使う前に仕留めればいい」

 

…夜叉王の墓で体験したマコラガの眷属器。

 

確かにそうかもしれないが…なんだこの嫌な予感は!?

 

ーー!?

 

「思い込みとは怖いものですねぇ。だから貴方は死ぬ」

「ーーイフ!」

 

突如イフの背後にマコラガが現れた事に気づき、慌ててイフを突き飛ばす。

 

ーーーーーーー

 

「ーーイフ!」

 

翔がイフを突き飛ばした刹那、マコラガの足元から4本の黒い影が伸び、

 

翔の左脇腹、右肩、右腕、左太ももを貫通する。

 

「ぐ!?がはぁ!」

「んな!?」

「おや?」

 

太ももを貫通した影はイフの足をも貫通していた。

 

「翔くん!」

 

リヴァは慌てて自身の眷属を飛ばし、翔とイフを回収し、マコラガから離れた場所へワープする。

 

「翔様!」

「マスター!」

「主!」

 

次々と他の3人もワープしてくる。

 

翔を確認すると、貫通した傷口から血が溢れ出していた。

 

「…!?まずい!バハくん!」

「わかっている!!」

 

リヴァの言葉にバハは自身の剣を翔にかざし、シヴァとラムはそれぞれ武器を構え、マコラガを睨む。

 

ーー眷属器・賢王の剣!

 

翔の体が光だし、少しずつだが傷が塞がっていく。

 

「ーーお前、完成させて…!?」

「当たり前だ」

 

ーーーーーーー

 

「ーーえ?眷属器?」

「…はい。ラムやあのイフですら扱えるというのに…」

「あのってなんだよ!」

「なるほどね…けど仕方ないと思うよ?その剣俺がバハにあげたわけだしまだ身に付けてる期間が足りてないのかも」

「…しかし…」

 

「それかお前だけまだ心のどこかで翔を認めてないかだよな」

「ーーなっ!?」

「イフさん追い込まないであげてください!」

 

「いや、主がバハを認めていない、という見方もできるぞ」

「ちょ、ラムさんまで!?…バハさん!なにして…!?それ、包丁ですよ?…あ、ちょ!切腹はやめてぇぇ!?」

 

ーーーーーーー

 

「ーー翔様。こんな所のおられたのですか?」

「ん?あぁバハか。ちょっとね…」

 

「まさか5人も仲間が増えるとはなぁ…俺いまの皆が好きだわ」

「ええ、毎日が騒々しくなりましたね。…特にイフが喧しいですね。消しますか…」

「はは、喧嘩もほどほどにね。…そうだ、バハ。王都に帰ったらバハがこのメンツのリーダーね」

「…え?」

「いや、ほら。俺は学校とかもあるし、いずれは全てを指揮する地位まで上るつもりだからさ…。そうなった場合、このメンツを任せるならバハかなって…」

 

「わ、私などが、ですか!?それなら私よりもよっぽど強く、知識もあるラムの方が適任では?」

「まあ、確かに一番はラムさんだね。…けどラムさんにはリーダーではなく、一歩下がって誰かの力になる方が向いている…。これは俺とラムで考えて出した意見なんだ。あ、別に嫌ならいいよ?」

「い、いえ!勿体ないお言葉です!我が剣は貴方様と共に…!」

「ありがとう!頼りにしてるよ!このメンバーはまず間違いなく俺の直属になると思う。だから、俺の右腕として、これからも俺と国を支えてくれ!」

「はっ!」 

    

 

「ーー俺は翔様の右腕だからな…。今はその話は後だ…お前も来い。治してやる」

「…すまねえ、俺のせいで…」

「反省は後だ!お前に傷があっては翔様がお前を救った意味がない!黙って回復しろ!」

 

ーーーーーーー

 

『君、来なさい』

「…え?」

 

覇王様に言われて部屋から出ると。

 

「…王子!?」

 

遠くに血を流した王子がリヴァに支えられ横たわっていた。

 

「…助けないと…!」

『君がか?君になにができる?…見たところ戦う意思を感じないが?意思がないなら黙って見ていなさい。ここで死ぬようなら、彼もまた、それまでだったと言うことだ…』

「!?」

 

覇王様の言葉は悔しいことに当たっていた。

 

…俺には戦う意思がない。

 

これが本当に子供達の為になるのか…?

 

またこんな大量に血を流すような戦場に出て、本当に俺は子供達に胸を張れるのか…?

 

わからない。

 

けど…俺は…!

 

「…守りたいものを守れるなら、自分のプライドなんて捨ててやる…!」

 

そう、自分の武器の大斧を構えると、

 

『…そうか』

 

覇王様はニヤリと笑った。

 

ーーーーーーー

 

 

「おやおや…そこの彼を狙ったはずなのですが、まさか器自ら壊れに来るとは…」

 

そう言って笑うマコラガ。

 

「ーーこいつ!」

「シヴァ、挑発に乗るな!」

 

シヴァとラムが対峙している。

 

「まあ、器が壊れるなら越したことはありません。念には念です。ここで消えてもらいまーー!?」

 

マコラガがそう腕を振り上げた瞬間、

 

巨大な剣がマコラガを強襲した。

 

「これは!?」

 

剣を握る者を見ると…

 

「…させない!」

 

巨大な剣を収縮し元の大剣へ戻し、タンが睨んでいた。

 

「…まったく、何度も何度も、不意打ちは勘弁して頂きたい…」

 

しかし、マコラガは自身の影に潜り、イフの矢に続き、それすらもかわしていた。

 

「触れたものの自在に拡大縮小出来る覇王の能力、巨人殺シ(アタックオンタイタン)ですか…私が行くと眷属が増えるジンクスでもあるのですかねぇまったく…」

 

そう言ってもう一度影に潜り、壁から翔に迫ろうとするマコラガだが、

 

「…逃がさない!」

「んな!?ぐっ!」

 

もう一度大剣を巨大化させたタンに壁ごと切られ吹き飛ばされた。

 

吹き飛ばされ、壁に叩きつけられたマコラガにさらに、追撃で斬撃と残像を飛ばす、シヴァとラム。

 

「…く!これは骨を数本やられましたか…困りますね、うちには回復役がいないのですよ?」

 

しかし、すでにそこにはマコラガはおらず、入り口の前で苦しそうに笑っていた。

 

「ここは一旦引きます。王の器…運の良い方だ…」

 

そう言って逃げようとするマコラガ。

 

「…逃が…すか…!」

 

だが、意識を取り戻した翔が修羅王の鎖で拘束する。

 

「残念、はずれです」

 

しかし、影で出来た偽物で結局マコラガに逃げられてしまった。

 

ーーーーーーー

 

しばらくして傷も塞がり、覇王の大剣も継承された。

 

「…翔、悪い…。俺が油断していたばかりに…」

「気にするなよイフ。俺が好きでやったわけだし!それに皆無事なんだからさ!」

「…」

 

俺の言葉にまだ納得のいかない様子のイフだったがラムの方を向き。

 

「…おっさん…明日から稽古頼む…」

「ん?…よかろう。しかし私は厳しいぞ?」

「…ああ」

「あ、イフさん!まだ包帯巻いてる途中ですよ!リヴァさん!翔様の手当てお願いします!」

 

イフはそう返事だけをして覇王の建物から先に出て行き、曽和さんもその後を追うように出ていった。

 

「咄嗟とは言え、今回はバハくんがいなかったら本当に危なかったよ!」

「わかってる。みんな心配かけてごめん」

 

リヴァに包帯を巻いてもらいがら起こられる。

 

傷が塞がったとは言え、まだ安静は絶対だから固定してもらう。

 

「あの瞬間を満姫ちゃんに見られなかっただけましだったへ」

「ああ。さすがに気絶だけじゃ済まなさそうだ…」

 

合流した曽和さんが俺の服についた大量の血を見て気絶した事を思い出す。

 

いくらこちらが殺さすの精神でいこうが、向こうは本気だ。

 

いずれは俺達も本気で殺り合わなくてはならない時が来るかもしれない。

 

曽和さんにそんな血なまぐさい環境を見せたくはない。

 

「はい!おっけー!…お姉ちゃん!」

「ええ、私達も明日からさらに稽古に励みましょう」

「タン、お前の眷属器との戦闘をしてみたい。明日から頼む」

「…あぁ。俺も早く馴れておきたい…」

 

そう言って先を歩き出す4人を見ながら、

 

「大切なものを失う恐怖を知っている者ほど強い。これから彼らはもっと強くなりますぞ」

「ああ、頼もしい限りだよ」

 

ラムに肩を借りながら追いかける。

 

傷が癒えても、出た血は戻らないから貧血だわ、まったく…。

 

「主よ良い仲間を得ましたな!」

「ああ、そうだな!」

 

しかし、マコラガ…眷属器だけでなく特殊能力まで持っていた…。

 

王族ってことか?

 

八部衆ってことはそういう奴があと7人いるってことか?

 

俺ももっと力をつけなくちゃいけないなーー

 

 




覇王の能力のモデルは

名前は進撃の巨人から

能力はマギの練紅覇の如意練刀です

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